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遅熟のコニカ

紙尾鮪

16「ヤマアラシノホオブクロ」

 「たべる!たべる!」
 食事という言葉を聞き、分りやすい程にはしゃぐ金髪の子供を見ながら、グラブとヘーレの事を思う。
 いや、身勝手な批評を脳内でしているだけだが。

 「コニカ!コニカ!」
 金髪の子供は、コニカをポカポカ叩く。
 それは、コニカという言葉をただの言葉として認識しているのではなく、コニカという言葉が、この人を指し示すというのを理解している。
 それが若干のコニカの好感を得た。

 「名前か……そういえば付けろと言われていたな」
 ふと、ヒルコの言葉を思いだし、食事が来るまで時間があるだろうと思い、少し考えて見ようと思った。

 「ポーキュパイン……ヤマアラシという動物の意味だが……」
 1つ候補にあがったのは、その特徴的な髪質から、ヤマアラシのようだと感じたためにあげてはみたが。

 「長い、才もない、愚直、捻りもない、名付け親、相応しくない」
 牢屋の扉を勢い良く開けたと思えば、即座にコニカを貶すケナス

 「そのうっとおしい喋り方をやめたらどうだ? 普通に喋れる事が分かった今、幼稚としか思えんぞ」
 別に貶された事に対して、コニカは何も思っていない。
 ただただナニカが嫌いなのだ。
 勿論、ナニカもコニカが嫌いだった。

 「貴様と長ったらしく話す気はない、これを食い終わるまでの間、我の問いかけに答えよ」
 ベッドの横にある机の上にへと、銀色のバットを大きな音を立てて乱雑に置く。
 乱雑に置いた事により、銀色のバットの中にある、ステンレス食器に入ってあるスープがこぼれ、黄金色の液体が広がる。

 銀色のバットの中にあるのは、こんがりきつね色のパンが2つと、野菜が多く入ってある金色のスープ、そしてメインであろう、厚切り肉のステーキ、脂肪が馬鹿に多いわけでもないが、とても柔らかそうで、歯で楽しむ事が出来そうだった。

 「問いかけか、食事ぐらいゆっくりと取りたい物だな」
 パンを1つ取ると、未だ名前が決まっていない金髪の子供が、食べたそうにコニカの足をバシバシと叩く。
 金髪の子供が、何を言いたいのか理解したコニカは、食べていない方のパンを金髪の子供に渡す。

 金髪の子供は、必死にパンを食べる。

 「一、何故主が貴様を気に入ったか、覚えはあるか」
 ナニカが淡々と、コニカがパンを食べている姿を見ながら問いかけをする。

 「ない。むしろ知りたいぐらいだ」
 ちぎりって食べるのではなく、そのまま噛みちぎりながら食べる事により、豪快さと、ヒルコに対する嫌悪感を表している。

 「二、貴様は神を信じるか」

 「神はいないという国の方針でな、どちらかと言うと信じてはいない」
 パンを半分ほど食べると、一旦パンを置き、スープに手をつける。
 柔らかくも、歯応えのある野菜と温かいスープが口の中を幸せにさせる。

 「三、いつここを出ていくつもりだ」
 スープを飲み干した。

 「出ていけるならば出ていっている、つまらない事を言うな、斬るぞ」
 自分の腰元に手を伸ばし、剣を手に取ろうとするが、ずっと空気を掴むだけで、コニカは自分の腰元を見るが、そこには何もなかった。

 「剣もなく斬るか、とても凄いな、怖い怖い」
 ナニカはゆっくりと3回手を叩くと、表情を変えず笑う。
 ナニカは、さっきまでやっていた事が若干恥ずかしかったのか、カッと頬が赤くなる。

 「気色の悪い。いや……その人間みが主の気を惹くのか……そうか」

 「興が冷めた、後で取りに来る」

 何かに背を押されたようにナニカは、牢屋から出る。
 その事に若干心が緩んだのか、大きくため息をついた。
 そして、楽しみにとっておいた肉を食べようとしたが、本来ならあるべき場所に何も、欠片すら残ってはいなかった。

 コニカは肉の居場所がすぐに分かった。

 「お前……その口の中にあるものはなんだ」
 牢屋に殺伐とした空気が流れた。
 コニカは金髪の子供を、刺すように上下に動く金髪の子供の口と、風船のように膨らんだ頬を見る。
 金髪の子供は、そんな視線を尻目に、肉を味わい続ける。
 歯で弾力や、肉汁を溢れさせ、舌で味覚を刺激する。

 「うまぃ……コニカとおなじ、うまぃ」
 その幸せそうな表情と声に、ムキになっていた自分の事を恥ずかしく思い、半分だけ残していたパンを口に入れて、これが肉だったらと思い味わう。
 その肉は小麦の匂いがした。

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