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遅熟のコニカ

紙尾鮪

15「オウトダンショウ」

 コニカが寝ている頃、ヘーレは帝国にへと戻っていた。
 そしてヘーレは、王に呼ばれ、今王の前にいた。

 「此度の依頼、ご苦労であった負傷者多数ではあるが死者はおらずか」
 王は目の前にいるヘーレからの報告を聞き、労うネギラウ

 「しかしグラブが瀕死の重傷か、そして裏切りと見られるような行為、生きても死んでもグラブの処遇は考えねば」
 「い、いえ!此度のククノチでの依頼中、何やら不思議な敵と接触した所、私達に危害を加えた所を見ると敵には寄生と似」
 グラブの処遇という事を聞き、明らかにグラブの対処という物が、クビや減給などという生ぬるい物ではない物だろうと、ヘーレは思った。
 しかし、王の言葉を承るだけである存在のヘーレが、グラブを擁護した事、それは王の機嫌を損ねるであろう行為だったが。

 「で、殺したのだろうな」
 王の感情は微塵たりとも揺れる事はなかった。
 事実確認、もしヘーレの言葉が本当であろうと、嘘であろうと敵がいると言うことが本当であれば、殺したかどうか、その敵が今存在するかどうかの情報が重要になってくる。

 「い、いえコニカ隊長が」
 「そうか、コニカでも無理だったか」
 ヘーレが多くを語る前に、ヘーレの伝えようとする事をくみ取る。
 ヘーレは、虚偽を話すなどという事をすれば、自分もグラブと同じ事にへとなるだろうと思った。

 グラブは何にもなってはいないのだが、ヘーレはもうグラブが亡き者と考えていた。
 それほどに恐れていた。
 王にそんな気持ちがなかろうと、受け取る側は深読みしてしまう。
 絶対的な存在であるからこそ、王の機嫌を損ねないように。
 発言一つで安否が傾くと知っているからこそ、恐れ、そして考える。
 自分の身を守るために。

 「まぁいい、今回の依頼は情報提供だからな」

 「え?」
 聞いていなかった。
 いや、ヘーレ達は初めての依頼のため、依頼の内容はコニカや、グラブから伝えられた。
 しかし、コニカやグラブ自体依頼内容は、国際手配犯の殺害もしくは捕縛と聞かされていた。

 「そういえばコニカはどうしたのだ、敵に殺されたか」
 ヘーレは、若干の苛立ちを覚えた。
 そして、声を大にして王に言った。

 「死にました」
 王に嘘を言ったのは、王を騙そうとした訳でもない。
 コニカを陥れようとした訳でもない。
 ヘーレの中でのコニカが死んだ、ただそれだけだった。

 「そうか、下がれ」
 コニカの死の報告に悲しむことも、惜しむ事もしなかった。
 王は終止事務的な対応をして終わりだった。

 「そうだ、ヘーレよ」
 扉を開けたヘーレを呼び止めるように言った一言は、ヘーレには届くことはなく、扉が勢い良く閉まった音が響いた。

 「ハァ……欠けた刃はいらないか」
 王は、自分の長く伸びた髪をくるくると指に巻き付けながら、ボソッと昔聞いた言葉を呟く。

 そして、死んだと思っているコニカに対してなのだろうか、手を合わせて天を見る。
 無駄に広い王の部屋は、自らが座る椅子と紙が乱雑に並ぶ机。
 そして柔らかそうな椅子が2つあった、ヘーレはそこに座っていない。

 「寄生か。偶然か、もしくは神の助言か」
 王は2枚の紙に自分の名前を書いた。
 1枚は刃を折る決意書だった。



 「君の仲間がこの監獄に入り、出た。この事からもう君は切り離されたのだろう」
 コニカは驚きを隠せずにいた、それを証拠にコニカは、開いた口が塞がらないでいる。

 「だから思う存分ここにいて良いのだぞ、コニカ」
 ヒルコは、ベッドに横たわるコニカの元へと近寄り、コニカの顔に当たりそうになるほど、顔を近付け、コニカの顎を指でなぞる。

 「……男娼のようだな」
 ヒルコの行動に対して嫌悪感を全面に表す。
 コニカは確実に緩みきっていた、宿を貸してくれた相手に対して感謝の意すら述べず、不満と悪態をつく程に。

 「男娼か、なってみるのも良いかもしれんな、コニカの反応を見られるのであれば」
 小悪魔的な笑顔を向けられたコニカは、自分で弄ばれていると思えた。
 その事はコニカにとって心身耐えがたい屈辱だった。

 己の半分にも満たない子供が、自分を誘惑するなどおちょくっている、そうコニカは思った。
 ただもう1つ、疑問があった。

 「なぜ私にそこまで執着する。貴様に執着心を向けられるというのは、死にたくなるほど気色が悪い」
 自らの心を声として出すことによって、相手に意を理解してもらおうと言うのは、非常に合理的な事だが、それの効果があるのは、受け取り手の心が揺れている時だ。

 「自害するか? すればいい、死んだときの感情も、生き返った君の感情を見るのも、とても楽しそうだ」
 ヒルコは、馬乗りになってコニカの首に手を添える、その姿は首を絞め、窒息死させようとしているように見えたが、ヒルコにそのつもりなど1つもない。

 「たのしい!たのしい!」
 コニカとヒルコの間に割ってはいった金髪の子供は、コニカの足をパタパタと叩いている。
 その姿にヒルコは興が冷めたのか、コニカから降りて、牢屋から出ていこうとするが、何か伝える事があったのか、頭だけ牢屋に入れて伝える。

 「そうだ、後で食事をビトレイに持ってこさせる。ライスとパンどちらがいい」

 「パンでいい」
 ヒルコは、指でわっかをつくり、オッケーと言った。

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