話題のラノベや投稿小説を無料で読むならノベルバ

遅熟のコニカ

紙尾鮪

14「キズグチデコウコツデ」

 「ハァア?!なぜ私がそんな事を?!」
 気が動転しているのだろう、無駄に大声をあげ、ヒルコを揺さぶる。
 それもそうだ。『スィクル』にいた時ですら、コニカは教官になる事を、強く拒んでいたのだ。

 更に、コニカは子供が嫌いだった。
 只でさえ五月蝿いウルサイし、言うことは聞かない、すぐに何処かに行くなどと言った、自分の言うことを聞かないという事から、コニカはとても子供が嫌いだった。

 「大体私がいつここで暮らす事になっ」
 「さっきだ」

 コニカは、問い詰めるようにヒルコを揺さぶるが、ヒルコは一貫して笑顔のまま、何も多くは語らず自分の意見だけを端的に伝えた。

 「わ、私は帰らせてもらう!!」
 コニカは、ヒルコから手を離し、先程通った道を通り、帰ろうとコニカはしたが、それをヒルコは許さなかった。

 「ふふふふ、コニカ、君はやはり面白い。 君はこの子供ですら手を焼く、もし牢屋を全て開けたらどうなるのだろうな」
 上品に1度ヒルコは笑うと、帰ろうとヒルコに背を向けたコニカの傷口を、優しくほじくった。

 「このような痛みにすら君は耐えられぬのだろう? 顔を見なくても分かる、泣いているのだろう? 嗚咽を繰り返し、目尻を潤ませ、救済を乞いたいのだろう?」
 恍惚に、快感を得ながらなぞり、ほじくる。
 切れ込みの入った肉に指を入れ、その中を掻き分けるように指を動かす。

 心身耐えがたい苦痛であろう。
 ヒルコの言うとおりにコニカはそれを行いたかった。
 痛みという感覚が暴力的に、耐えずコニカの心を抉る。
 コニカの許容限度は明らかに越えている、いや、人間であればその余裕など一切ないだろう。

 だがコニカは言葉も発する事も、嗚咽を吐き散らす事も、涙を一滴も流すことはなかった。
 いや、意識がなかった。

 「……主よ、女が気絶してます」
 ぐちゅぐちゅと音をたてながらほじくるだけだった空間に、ナニカの声が響いた。
 その声が響くと、ヒルコの元へと落ちるように倒れた。

 ヒルコは何とかコニカを受け止めると、子供を落ち着かせるように頭を撫でた。




 「……夢ではないか」
 牢屋の小さな小窓から差す太陽の光に、若干顔をしかめる。
 鎧を脱がされ、ある程度治療されたのだろう、コニカの体には包帯を巻かれている。
 傷による痛みもないようだ。

 「たべる!たべる!」
 金髪の子供は、たべると言いながらコニカの足をしゃぶっている。
 その事から、金髪の子供は言葉を理解し、適切に使えているという事になる。
 金髪の子供が順調に成長しているという事だ。

 「この!くすぐったいやめろ!」
 足をジタバタさせて、金髪の子供を離そうとするが、吸い付き中々離れようとはしない。

 「仲が良いようだな」
 牢屋の扉を開けて、食事を持ちながらコニカ達が戯れているのを、ヒルコは若干ふてくされて見ていた。

 「お前、コイツを離せ!くすぐったいんだ!」
 足に吸い付く金髪の子供を、離してもらおうと足を向ける。
 一夜過ごしてコニカも無意識ながらに心を許したのか、確実に無礼な行動を起こしている。

 「まぁ、そういえばコイツの名前は決めたのか?」
 その足先の金髪の子供を指差しながらコニカに聞く。
 金髪の子供を離す事はしない。

 「決めやしないし、私がコイツの世話はしない!」
 高らかにコニカは宣言するが、そろそろコニカの足の皮がふやけているのだろう。

 「良いだろぉ、どうせ国にもどっても居場所はないのだろうし」
 コニカは何かに引っ張られたかのように、飛び起きた。
 コニカが見たのは、アンパイアの時と同じ恍惚の笑顔だった。

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く