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遅熟のコニカ

紙尾鮪

13「ツラマントオワタゾ」

 「あばっばばばあ!!」
 金髪の子供は、1度低く構えると、壁を蹴り、そこから出来た破片を投げる。
 目の前にいる初めて見たモノに対しての若干の恐怖と、好奇心の混じり合った感情が、金髪の子供を動かしていた。

 フォームなどはてんで駄目だが、力による投げ、ただただ早い。
 何にも脅威ではない、ただ速いだけである。
 コニカは避けたかったが、後方にはヒルコ。
 避ける事など選択しにはない。

 コニカは片手で剣を持ち、型はちゃんとはしていないが、正拳突きで壁の破片を壊す。
 壁は石で造られており、堅硬ではあるが壊せない訳でもない。

 「若干やはり痛いか」
 などと痛みを感じていると、追撃。
 金髪の子供は一瞬で間合いを詰めての殴打。先程見たコニカの動きをマネしたのか、殴打の選択という結果に至ったのかもしれない。

 間合いを詰めるために、1度床を蹴ったが、若干その床が抉れている、まるで掘り返したような跡だった。
 やはり子供、型などはない。
 コニカはとりあえずは受けてみる、実力をはかるために。
 響く、肉が分離しそうになるほどの衝撃が、鎧越しに伝わる。

 生身であればどれだけの物なのだろうか、若干の興味だった。
 そして思う。
 あぁ、こんなもんか、と。

 「ばっばばばば」
 気のせいか、金髪の子供の髪が若干伸びているような気がした。
これも成長という物なのだろうか。
 そして金髪の子供は、コニカの右後頭部にへと壁の破片で殴りかかった。

 「ほぉ、物を使うか。 成長速度はまずまず以上、だが成長速度と力だけではどうにも出来ん物があるがそれをどうするか」
 ヒルコは、壊れた壁の破片を積み上げてみたりなどをして、遊びながらコニカの戦闘を見学している。
 ナニカはただ観ているだけだった。

 「めんどくさい」
 コニカは、柄頭でコツンとブロックを叩くと、爆弾が入っていたように四散する。
 そして1度腹部に蹴りを入れる、金髪の子供は1度ウッと唸ると、その場にべたりとへたりこむ。

 「終わったぞ、つまらん。まさに赤子の手をひね……るよ……うだった……な?」
 剣を納め、ヒルコの方へと向かって歩いていく途中。
 言葉が詰まった。
 それは、金髪の子供が鎧を突き破り、コニカの身を傷付けたから。

 「おわたぞ!おわたぞ!」
 金髪の子供の髪は、自分の足にまで届くほど伸びていて、そして、鋭利だった。
 監獄の通路の証明は、薄暗い物ではあったが、金髪の子供の髪は、その光を吸い込み、そして、自らが光を放っていた。

 子供は、コニカが言っていた言葉を覚えたのか、何度も叫んでいた。

 「つらまん!つらまん!」
 子供のように無邪気で嬉しそうに、自分の初めての獲物を踏みつけて覚えたての言葉を叫ぶ。

 なぜやられた? 何でやられた? いや、違う。関係ない。
 なぜ私の方が地に伏しているのだ。

 「……どうします?私が行きましょうか?」
 「黙れ」
 返事の主は、ヒルコではなく、コニカ。
 低く、そして短かった。

 「あかご?」
 金髪の子供は踏みつけている獲物が、徐々に力が入ってくるのを感じて疑問に思った。
 なんで? 仕留めたのに、なんで?
 と、疑問。

 「あぁ、赤子だ。垢の抜けぬ無垢な赤子よ貴様は」
 コニカは、立ち上がった。
 そして、打った。
コニカは、1度剣を腰から外すと、助走もなしに金髪の子供が意識出来ない程の速度に達した。
走るとまでいかない、言うなればコニカは跳んだ。
鋭く鋭利でもない武器の威力を初めて味わった金髪の子供は、味わう事など出来なかった。

 鞘から抜かなかった。いや、抜くという選択肢を出さなかった。

 ヒルコは言った。遊ぶか? と。
 つまりこれは真剣勝負ではなく、遊戯、殺すという選択肢を出すなど遊びの範囲外、だが殺す気で打った。

 金髪の子供は、全くと言っても良いほど何をされているか理解が出来なかった。
 気づいたら自身に多大なる負傷を負っていた。
 確実に自分が優位であったのに。
しかし、これも面白い。
 ただ、器は耐えきらなかった。


 「終わりだ、両方止まれ。コニカ、御苦労様」
 コニカは聞こえなかったような素振りをして、剣を腰に差す。
 礼などはしない。
 遊びであろうと自分が一瞬でも地に伏したため。
 吐き気を催すほどの大人気なさだった。

 「お前もよくやった」
 耐えきれず、地に伏している金髪の子供は、スースーと静かに寝息をたてながら寝ている。
 ヒルコは屈み、金髪の子供の頭を撫でようとはしたが、一瞬躊躇した。
 何故ならコニカの鎧を切り裂いたのはこの髪なのだから。

 針のように、いや針など甘いものではない。
 言うなれば刃、触ろうとするものを無意識に傷付る。それは酷く、心があるものであれば、傷をつければ己も傷つく。

 今の無垢な姿でいるのならば、傷つくのだろう。
 いや、何時か、この髪が自分の武器にへとなる事に気づくだろう。
 その時この子は、化け物へとなるだろう。

 「そうだ!良いことを思い付いた」
 ヒルコは、金髪の子供の顎を掻くように撫でると、急に思い付いたのだろう、コニカの元へと走りより、扉を叩くように鎧を強く叩く。

 「なんだ、なんだなんだ」
 やはり勝利したことによって、若干の浮わついた感情があるのか、ヒルコに対する言葉遣いが荒くなっている。
 ヒルコはそれに嫌悪感は抱いていないのだろうか、むしろ嬉しそうに鎧を叩き続ける。

 「いやな、コニカがここで暮らすにあたって、何かして欲しかったのだが、決まったぞ! こいつの世話をしてもらおう!」
 金髪の子供は無邪気に猫撫で声をあげた。

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