遅熟のコニカ
9「ニンチデソンケイデ」
「そうか、見えるか!見えるのか!」
ヒルコはこんなの方へと大きく詰め寄る。
その表情はまるで子供のよう、いや子供か。
しかし、ヒルコは、はしゃぎ過ぎたのか自分を抑制し、冷静を装う、ただ明らかに高揚しているのは誰もが分かる事だろう。
「そうだ!血をもらうぞ」
うろうろと何度かその場を歩き、どうにか考えを統一させようと試行錯誤。
そして思い出したか、思いついたのか急に声を張り上げヒルコはコニカに近づき手を取った。
「へぇ?!」
コニカはすっとんきょうな声をあげる、まるで乙女のような声をあげた理由はしばらく異性に手を取られる事もなかったからという理由もあるだろう。
いや戦闘時に握られた時より優しかった、まるで子供に、いや子供。
ただしかし、コニカは自分自身が、コニカではなくなっている事に気づいていない。
ましてやこの現状を受け入れ、本来の目的さえも忘れ、延命続けようとしていた。
その姿をよく思わない者もいる。
「コニカ隊長……ッ」
あの新米達の中に、唯一沼にはまる事のない、堕落しきっていない者がいた。
その名をブラーヴ・ヘーレ。
ヘーレは昔から影が薄く、周りから忘れられていた。
それはヘーレという家系に由来する。
その昔、西の地で内戦があった。
その時、ヘーレの祖先は洞窟へと逃れ、内戦中ずっと洞窟の奥で震えていた、そう思われ今でもヘーレ家は臆病者として蔑む者もいる。
ただ、ヘーレ家には代々、異様な程の影の薄さがあった。
いやこれは影の薄さというべきか、それとも相手に認知をされにくいと呼ぶのが相応しいか。
ヘーレの祖父はそれを自由自在に操る事が出来たが、彼女は常時それが健在している。
それを買われ、ヘーレは騎士にへとなった。
ヘーレは彼女……コニカ隊長を酷く慕っていた。
それはヘーレがイオらと一緒に入隊した時、リリィらの前に話しかけてくれた。
そんな事一度もなかった。
だからこそ信用になる。
好意を向けたくなった。
そんな人が、敵と親しく……楽しそうに……見たことがなかった。
それがこんなにも狂おしいとは、ヘーレが初めて感じた感情だった。
「!!なんという事だ……この時期に……いやこの時期だからこそか?いやまさか誰かの差し金?それとも神の贈り物か?いや……」
何かの紙を見ながら髪をかきあげたり、何度も紙を見るのを繰り返す。
なにやら酷く驚いている様子だが、これが何を表すかなどコニカには分からない。
「女よ、一つ問いたい」
老人はコニカに向かって問いかけをする、コニカはまたか、と思う。
ただ幾分か前の問いかけより気楽だった。
「人知を越えた先にある物を見たことや、自分に感じた事はあるか?」
無論、そのような問いかけの答えは
「否だ」
ただ少しだけ否定をし辛いような……わだかまりがあった。
「そうか、しかし女よ。これから現世の職に生活、全てを捨て、こちらの側へと来てもらう。そして全てをあの男、もとい八百一 昼子に仕えてもらうが異存はないな?」
ズラズラと言われる言葉に、若干の緊張を感じている彼女は、頭をこんがらがらせる。
しかし、後ろに残るは切り立った崖、下がれば落ちる。ただそちらの方がいいのかもしれない。
「……私に選択権などない」
最大の抵抗、最大で最小の。
否定をすれば相手に与えるのは嫌悪感、肯定すれば自分は屈したという事実。
故に相手に委ねる、それは抗う訳でも、従う訳ではない。
波に揺られる船と同じ。
「肯定と取ろう、だそうだ昼子ちゃん」
ヒルコに向かってそう言った、浮かれ気味なヒルコは、それを聞くとこちらにへと振り向く。
ヒルコは監獄に入る前にしていた仮面を着けているため、表情や反応など分かりやしない。
「付いてこい、ここからは昔話を話そう。問いかけの続きはまた今度だ」
ヒルコはこんなの方へと大きく詰め寄る。
その表情はまるで子供のよう、いや子供か。
しかし、ヒルコは、はしゃぎ過ぎたのか自分を抑制し、冷静を装う、ただ明らかに高揚しているのは誰もが分かる事だろう。
「そうだ!血をもらうぞ」
うろうろと何度かその場を歩き、どうにか考えを統一させようと試行錯誤。
そして思い出したか、思いついたのか急に声を張り上げヒルコはコニカに近づき手を取った。
「へぇ?!」
コニカはすっとんきょうな声をあげる、まるで乙女のような声をあげた理由はしばらく異性に手を取られる事もなかったからという理由もあるだろう。
いや戦闘時に握られた時より優しかった、まるで子供に、いや子供。
ただしかし、コニカは自分自身が、コニカではなくなっている事に気づいていない。
ましてやこの現状を受け入れ、本来の目的さえも忘れ、延命続けようとしていた。
その姿をよく思わない者もいる。
「コニカ隊長……ッ」
あの新米達の中に、唯一沼にはまる事のない、堕落しきっていない者がいた。
その名をブラーヴ・ヘーレ。
ヘーレは昔から影が薄く、周りから忘れられていた。
それはヘーレという家系に由来する。
その昔、西の地で内戦があった。
その時、ヘーレの祖先は洞窟へと逃れ、内戦中ずっと洞窟の奥で震えていた、そう思われ今でもヘーレ家は臆病者として蔑む者もいる。
ただ、ヘーレ家には代々、異様な程の影の薄さがあった。
いやこれは影の薄さというべきか、それとも相手に認知をされにくいと呼ぶのが相応しいか。
ヘーレの祖父はそれを自由自在に操る事が出来たが、彼女は常時それが健在している。
それを買われ、ヘーレは騎士にへとなった。
ヘーレは彼女……コニカ隊長を酷く慕っていた。
それはヘーレがイオらと一緒に入隊した時、リリィらの前に話しかけてくれた。
そんな事一度もなかった。
だからこそ信用になる。
好意を向けたくなった。
そんな人が、敵と親しく……楽しそうに……見たことがなかった。
それがこんなにも狂おしいとは、ヘーレが初めて感じた感情だった。
「!!なんという事だ……この時期に……いやこの時期だからこそか?いやまさか誰かの差し金?それとも神の贈り物か?いや……」
何かの紙を見ながら髪をかきあげたり、何度も紙を見るのを繰り返す。
なにやら酷く驚いている様子だが、これが何を表すかなどコニカには分からない。
「女よ、一つ問いたい」
老人はコニカに向かって問いかけをする、コニカはまたか、と思う。
ただ幾分か前の問いかけより気楽だった。
「人知を越えた先にある物を見たことや、自分に感じた事はあるか?」
無論、そのような問いかけの答えは
「否だ」
ただ少しだけ否定をし辛いような……わだかまりがあった。
「そうか、しかし女よ。これから現世の職に生活、全てを捨て、こちらの側へと来てもらう。そして全てをあの男、もとい八百一 昼子に仕えてもらうが異存はないな?」
ズラズラと言われる言葉に、若干の緊張を感じている彼女は、頭をこんがらがらせる。
しかし、後ろに残るは切り立った崖、下がれば落ちる。ただそちらの方がいいのかもしれない。
「……私に選択権などない」
最大の抵抗、最大で最小の。
否定をすれば相手に与えるのは嫌悪感、肯定すれば自分は屈したという事実。
故に相手に委ねる、それは抗う訳でも、従う訳ではない。
波に揺られる船と同じ。
「肯定と取ろう、だそうだ昼子ちゃん」
ヒルコに向かってそう言った、浮かれ気味なヒルコは、それを聞くとこちらにへと振り向く。
ヒルコは監獄に入る前にしていた仮面を着けているため、表情や反応など分かりやしない。
「付いてこい、ここからは昔話を話そう。問いかけの続きはまた今度だ」
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