東方魔人黙示録〜番外編〜

怠惰のあるま

《メリークリスマス》



ここは幻想郷。
妖怪やら悪魔やら人間やらが混合して暮らす外とは隔離された場所。
そんな幻想郷も雪が降って、見渡す家々、山々が真っ白に染まり冬真っ只中と言ったところであろう。
そんな地上の風景と打って変わり、ここは地底。幻想郷の地下に広がる世界。
大昔に地上で暴れた凶悪な妖怪や地上の妖怪ですら恐る大妖怪が蔓延る場所でもある。
その地底の管理者でもある地霊殿の主 古明地さとりは何か用意をしていた。どことなく機嫌も良い。

「さとり様。こっちは用意ができましたよ」

準備をしていたさとりの元に感情の魔王 桐月アルマが訪れた。なにやら彼女に頼まれていた様子。

「ご苦労様です。パルスィは?」
「子供達の相手してますよ。驚かせたいんでしょう?」
「よくわかっておりますね」
「長年、暮らしていれば嫌でも分かりますよ」
「うふふ。さぁて、早く終わらせましょうか」

そうして二人はまた何かに準備を再開した。







△▼△






その頃、パルスィはと言うと。
自室で義妹である鬼人正邪と自分の子供達である桐月イラと水橋リティアの子守をしていた。
ふと、リティアが自身の父親がいないことが気になりパルスィに聞いた。

「ねぇねぇお母さん。お父さんは?」
「お父さんはね。今、お仕事中」
『え!?』

パルスィのお仕事という言葉にリティアだけでなく、イラと正邪も驚きの声を上げた。そんな三人の反応に彼女は首を傾げた。
不思議がるパルスィであったが正邪の言葉で意味を理解した。

「お兄が仕事するわけないじゃん!!」
「そうだよ! お父さんが仕事したら明日槍降るよ!!」
「寧ろ仕事してないのが父さんだよ!!」

三人の言葉にパルスィは自分の夫に同情した。身内にしかも子供にすらバカにされる始末。もう手のつけようがない。彼女はより一層、自分が支えて上げないと、そう強く思ったそうだ。






△▼△







再度戻ってアルマは大きなくしゃみをしていた。

「大丈夫ですか?」
「ええ、大丈夫です。誰か噂でもしてるのか?」

事実、噂されてる。いやバカにされているとは本人も気づいていないし、考えてもいないだろう。さとりはずっと聞こえていたため気づいているがあえて口には出さない。

「きっとパルスィがあなたの事を思ってるんですよ」
「その原理だと俺くしゃみずっと止まらなくないですか?」
「あ、年中思われてる前提なんですね」
「違うんですか?」
「いや、あってますけど」
「あってるんだ」

謎の会話を続けていると部屋に入って来るものがいた。

「ただいま。っといい感じじゃないか」
「おかえりナズ。そうだろそうだろ」
「君はやってないだろ?」
「はぁぁ!? めっちゃやったし! めちゃくちゃ働いたし!」
「ふぅん。そうなのかい?」
「ええ、頑張ってましたよ」

やあお前ら。俺だ。
作者ばっか喋ってても面白くないだろ? 俺が喋る。そして、ナズにバカにされて泣きそうだ。
俺だって頑張ってるんだよ? なのにだよ。酷くないですか?

「どうせ俺は怠け者ですよぉ〜...」
「あらら...こうなるとパルスィじゃないとダメですね」
「そうだね。準備も整ってるみたいだし私が呼んで来るよ」
「お願いします」

そう言ってナズーリンは部屋から出ていった。
数分後、部屋にパルスィ達を連れて戻ってきた。イラとリティアは目を瞑ってパルスィの手を握りながら歩いて来ていた。

「イラ、リティア。目を開けていいわよ」

二人はゆっくりと目を開くと感激の声を上げた。

『うわあ!』

その部屋はとても綺麗に装飾され、大きなツリーも立てられていた。

「どうしてこんなに綺麗に飾ってるの?」
「今日はクリスマスだからだよ」
「正邪お姉ちゃんクリスマスってなぁに?」
「え、えーっとクリスマスって言うのは...」
「クリスマスって言うのはプレゼントをもらえる日さ」

そう言っていつのまにか立ち直ったアルマがイラとリティアにプレゼントを渡した。
二人は目を輝かせて喜んでいた。

「わぁい! ありがとう父さん!」
「ありがとうお父さん!」
「母さんにもお礼を言うんだよ」
『うん!』

とても喜んだ様子の二人は部屋を走り回っていた。
そんな中、パルスィがアルマの袖を引っ張った。

「どうしたパルスィ?」
「はい」
「...俺に?」
「うん」

アルマは照れながらプレゼントを受け取るとパルスィが開けるように催促してきたので渋々開けると中に入ってたのはルビーとサファイアが装飾された二つの指輪だった。

「指輪...か」
「嫌だった...?」
「いや違うくてさ。つくづく同じだと思ってさ」

首を傾げるパルスィの手を取りそっと指に何かを嵌めた。
それはエメラルドが装飾された指輪だった。

「...!」
「気に入ってくれたか?」
「うん...!」
「そういえば君達って結婚指輪持ってなかったね。ちょうどいいじゃないか」
「確かに持ってませんでしたね」

そんな言葉にアルマとパルスィは顔を合わせクスクスと笑い合った。
実は二人が内緒で指輪を交換していたのはまた別の話である。
今宵はクリスマス。皆が幸せな夜を過ご......え? もう次の日? ...うるせえ!! 俺がクリスマスって言ったらクリスマスなんだよ!!
はい! メリークリスマス!!

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