東方魔人黙示録〜番外編〜

怠惰のあるま

10年後・・・親二人


アルマは一人、橋の上でボンヤリとしていた。ただ、何も考えず...何もせず...ただただボンヤリとしていた。
そんな彼をジッと見つめるパルスィは自分の視線に気づいてくれるまでただただ黙って見つめていた。
それが数分ほど続いてようやくアルマがパルスィの視線に気づくと彼女はニヤリと笑った。
なぜ笑っているのか疑問に思う彼は首をかしげる。

「どうした?」
「今日はいつもより早く気づいてくれたから、勝った!と思って」
「何それ...まあ可愛かったから良いけどさ」
「.....なんか感情こもってない」
「この前、感情込めまくったら...恥ずかしいからやめて!って言ったの誰だ?」

スーッと視線を逸らすパルスィにアルマはわざと視線を合わせるように動く。それに対して逃げるように視線を逸らすパルスィ。
この二人の不可解な動きははたから見るとあまりにも不振であった。
まあ、この地底に訪れる物好きが通ればの話だ。
かといって誰も通らないわけではなく。旧都から歩いてくる人影があった。その者は二人の不振な動きを見るなり呆気にとられた。だが、すぐに我に帰ると不審者二人に声を掛ける。

「何してるんだ...?」
「ん...?ナズか。いや、こいつが視線を合わせてくれなくて」
「あら、ナズじゃない。こいつが視線を逸らさせてくれなくて」

二人同時に同じようなことを言うと呆れたようにため息をした。
ナズーリンの反応に二人は首をかしげる。
そして、思い出したように二人に忠告をする。

「君たちがイチャイチャしてる内にさとりがあの子達の親みたいになっちゃうよ?」
「あ、それは困る...」
「あの子達にもしものことがあったら大変...!」
「一応、危機感はあるようだね。それじゃあ頑張りたまえ」

いつもと変わらぬ上からの態度でアルマ達にエールを送ったナズーリンは地上へと向かった。

「はぁぁ...さとり様にたまには二人っきりで過ごしてください。って言われたと思えば、そういう魂胆だったわけね...」
「まあ、さとり様が考えそうなことだけど...あの子達に変な知識を身につけられても困るわ」
「帰るか...」
「そうね。二人っきりもいいけどあの子達がいた方が楽しい」

稀に見る自然な笑顔のパルスィにアルマは一人、見惚れていた。
それに気づいた彼女はアルマに視線を向けると今度はアルマが視線を逸らした。それが可笑しかったのか楽しそうに笑って言った。

「あははは!さっきと逆だね?」
「う、うるせえよ!」
「どんな気持ちで視線を逸らしたか、わかった?」
「....まあ、な」

そう言って二人は顔を合わせて笑った。

「さぁ、帰るか。あの子達の元気な姿みたいし?」
「朝見たばかりだけどね?」
「まあね〜」

嬉しさを感じさせる彼の顔は満面の笑みであった。それにつられて彼女も笑顔になっていた。



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