東方魔人黙示録〜番外編〜

怠惰のあるま

キスメの初恋


天邪鬼兄妹と橋姫さんが仲良く地上に向かう後ろをこそこそと付ける影があった。
その者は釣瓶落としと呼ばれる妖怪少女キスメ。とても内気な性格をしているが近寄る者には容赦なく襲いかかる凶暴な性格をしている。
そんな彼女は天邪鬼兄を好意の目で見ていた。と、いうかハートマークが目の中に見える気がする。

「アルマ...どこ行くんだろ...」

なぜここまで彼女はアルマに好意を抱いているのか。これは数ヶ月前に遡るーーーーー



△▼△




キスメは一人、桶の中でぼーっとしていた。いつもはヤマメと一緒に遊ぶのだが今日は地上に遊びに行ってしまったらしい。彼女も誘われたのだが行ったこともない地上は怖いらしく断った。
断ったのだが少し後悔している。ヤマメ以外とあまり接点のない彼女は地底の隅でぼーっとしているのだ。

「寂しい...」
「あれ?ヤマメかと思ったらお前か」

そこに現れたのがアルマだった。

「なんでここにいるの...?」
「ヤマメに会いにきたんだが留守のようだな。それで.......お前は何やってんの?」
「あたしは...ぼーっとしてる」
「なんで?」
「......ヤマメがいないから」

それを聞いてアルマは何か言いたそうな顔をしているがはぁぁ...と息を吐いてキスメの隣に座った。

「な、なんで座るの...?」
「寂しいんだろ?今日は俺がヤマメの代わりになるよ」
「で、でも......あたし地底に来た時、攻撃したよ?」
「そうだっけ?覚えてない」

とぼけた顔をするアルマにキスメは笑った。

「変なの...」
「俺からしたらずっと桶に入ってるお前も変だぜ?」
「狭い所が好きなの」
「ふぅん...一回桶から出てみ?」
「え?い、いいけど......」

ゆっくりと桶から出るとアルマはポンポンとキスメの頭を触った。その行為の意味を彼女は理解できなかった。

「意外に大きいな〜と思っただけ」
「そう...?」
「ああ、それに普通に立って歩いた方が体にいいぞ?」
「......わかった。極力桶なしで生活する」
「その調子その調子!」

それから何度か訪れてくれるアルマを少しずつ意識し始めた彼女は初めて好きという感情が芽生えた。



△▼△



それからキスメはアルマに好意を抱くようになったのだ。
後ろからアルマを見つめていると彼は気づいたのかキスメの方に目を向けた。

「あれ?キスメだ」
「あ...」
「今日はヤマメいないのか?」
「う、ううん.....」
「じゃあどうした?」
「ア、アルマについてきた....」

そう言うと首を捻り、パルスィの方に顔を向けた。すると、パルスィがボソボソと耳元で囁くと理解したようにポンッ!と手を叩いた。

「キスメも行くか?」
「い、いいの.......?」
「アルマと一緒にいたいんでしょ?行きましょう」
「う、うん!」

こうしてキスメも共に地上へと行くこととなった。

「なんか正邪に妹ができた感じだな」
「そうね。仲良くするのよ?」
「は〜い。よろしくキスメ!」
「う、うん....よろしくね....」

天邪鬼兄妹に新たに妹ができたようだ。

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