二つの異世界で努力無双 ~いつの間にかハーレム闇魔法使いに成り上がってました~

魔法少女どま子

いじめの連鎖

 高城絵美。

 さっきまでたしかに元気だったはずの彼女は、全身に凄惨な傷を負っていた。

 太股に穴が抉られている。
 そこから大量の血液があふれ出してきている。

 おそらく先に足を動けなくされ、その後たっぷり痛めつけられたのだろう。身体のあちこちに、光線の跡と思われる穴が穿たれている。

「た、大変!」

 一番先に動いたのは彩坂だった。慌てたように高城のもとへ歩み寄り、片膝をつく。

「待っててね、いま時間を戻すから!」

 そう言って片手を掲げようとした彩坂を。

「……まって」

 震える動作で、高城は力なく掴んだ。その唇も紫がかっているが、それでも彼女は懸命に言葉を発する。

「いいの。これも、罰だから」

「罰……? な、なにを、言ってるの」

「私、あなたに謝ろうと思ってた。ずっとあなたに嫌な思いさせてたもんね。それは『ごめん』って謝ったくらいじゃ、絶対に、済まされない……」

「な、そんなこと、いいよ、もう……」

「大丈夫。私はもう、いなくなったほうがいいんだよ。佐久間くんだけが死ぬのも……おかしいし……」

 高城はそこで一度、激しく血液を吐き出した。だが最期の抵抗とでも言うように一旦ぎゅっと目を閉じると、次は俺を見やった。

「吉岡くん。短い間だったけれど、本当にありがとね。私、あなたに会わなければ最低なだけの女だった」

 あなたに会えてよかった。
 最期にそれだけを呟き。
 高城はゆっくりと目を閉じていき。





 いつか彼女は言っていた気がする。
 私に償える日がくるのかと。
 これまで散々クラスメイトを傷つけてきた。
 自分が学校で最高位の存在だと勘違いしていた。
 痛々しい女だった。
 それを償える日は来るのかと。
 かつて佐久間祐司は、高城にたった一言謝られたくらいで許そうとはしなかった。
 だから彼女は言っていた。
 いつか私も行動しなければならないな、と。
 口先だけの謝罪ではなく、みんなに受け入れてもらえるだけの行動をする。
 それくらいしないといけないんだと心に決めていた。




 それなのに。

 高城は薄く微笑むと。

 そのまま、ぴたりと動かなくなった。

「な……おい……!」

 俺も続けて高城に歩み寄るが、いくら呼びかけても、いくら揺すっても彼女はびくともしない。いつものように俺の名を呼ぶこともない。

 HP0。

 それはすなわち、死亡ーー実際の命をも失う。

 馬鹿な。そんなーー

 俺はぶるぶると拳を振るわせ、こみあげてくる激情をなんとか抑えつけながら、構成員たちに目を向けた。

「これが……おまえたちのやりたかったことなのかよ!」

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