のらりくらりと異世界遊覧
第49話:もうすぐ夏休み!
「失礼します」
初等部特有の統一された制服を身に纏い、そう言って部屋に入って来たのは、緑色系統の髪をした二人の男女と銀色の髪を背中まで伸ばした一人の少女らしい容貌の少年。
「うん、お帰りー三人とも」
部屋にいた一人の青年は、そんな三人に向かって口を開く。
「いやー、クロウ君が居てくれると裏方の仕事が楽でいいねぇ」
「ボクは生徒会じゃなくて風紀委員会なんですよね?なんでこっちの仕事まで押し付けられなきゃいけないんですか?クラウス生徒会長」
頬を膨らませながらそう言って紙の束を差し出すクロウに、クラウスはハハハと笑いながらそれを手に取って「半分くらいは僕の意思じゃないんだけどなー」と肩をすくめる。
「ま、俺らは楽できていいんだけどな」
「本当にねー。クロウちゃんがその腕章してくれてるから、変に隠し事する人少なくなったしねー」
「その代わりボクの仕事が増えるんだけどね。あーあ、早く夏休みにならないかなぁ」
クラウスが書類に目を通している間、三人がそうお喋りしていると、生徒会室の扉が開いて数名の男女が入って来た。
「会長!戻りました!」
「同じくー」
「それに同じく」
ベレナス、ロゼッタ、サレーヌの順番で口を開き、それぞれが手に持っていた書類をクラウスに渡す。
「うんうん。ベレナス、後で会議室に予約入れて各委員会、部活動に連絡をしておいてくれ。ロゼッタは、後で話聞かせてもらえるかな?サレーヌには、特にないよ。いつもの綺麗な資料をありがとうね」
クラウスは、それぞれの資料にさっと目を通すと、そう言って三人をソファーに座らせる。
「どうぞ、お茶です」
三人がソファーに腰を下ろすと同時にクロウが紅茶を差し出す。
「あ、クロウちゃん!こっちにも!」
「本来なら君たちの仕事なんだけどね?」
知らぬ間に三人と反対側のソファーに座っている二人に溜息を吐きつつも、紅茶を出すクロウ。ついでにお茶菓子をテーブルの真ん中に置いておく。
「いやー、クロウ君がいてくれて本当に良かった。どう?風紀委員会から鞍替えしない?」
「会長はともかく、副会長までそんなこと言わないでくださいよ」
「ひどいなぁ~。あ、そうだ、クロウ君。父が「黒いダイアをありがとう」って言ってたんだけど、何のことかわかる?」
「黒いダイアですか・・・?黒いダイア、黒いダイア・・・あぁ!わかりました!トリュフのことですね!」
ぽん!と手を合わせてクロウがそう言うと同時に、カルとククルを除いた生徒会メンバーの四人が飲んでいた紅茶を吹き出す。
「な、なんだって?トリュフ?今そう言ったのかい、クロウ君」
ゴホッゴホッと咳き込みながら信じられないことを聞いたかのように目を丸くしているクラウスとその他 三人に、クロウは自分のお茶を入れながら、カルとククルはお茶とお茶菓子を持って退避して、お互いの顔を見合わせていた。
「あ、はい。なにか不味いものでしたか?ただの珍味ですよね?」
「あー・・・ちなみにだけど、トリュフの値段って知ってるのかな?」
「値段ですか?うーん・・・半金貨二枚と少しくらい?ですかね」
至って真面目にそう答えるクロウにクラウスら四人の先輩メンバーは、頭を押さえて大きく溜息を吐いた。
「トリュフは、高級店の料理によく使われる一方で滅多に採取できないんだ。どうやって成長するのとかもわかっていないから人の手で増やせないし、もし手に入っても大体が野生動物に食べられていたりして使える部分が少なかったりするから、よけい値段が高騰するんだよ。最近、アンドリューさんが手を回してくれてるみたいで、綺麗なものの流通量が増えて「あ、それほとんどボクが取ってきたやつです」えぇ・・・」
事の重大さを説明していたサレーヌとその他の先輩メンバーは、鶴の一声ならぬクロウの一声で疑問が晴れたようで、疲れたようにだらしなくソファーに沈み込み、再び頭を押さえて大きく溜息を吐くのだった。
「お兄さ・・・ゴホン、生徒会長、遅れて申し訳ございま・・・って!ど、どうなってるんですの?」
コンコン・・・とノックをして入ってきたニーニャは、どうやら走ってきたようで若干頬が上気していたが、部屋の中を見たとたんにその顔色が反転し面白いように青くなった。
「あ、ニーニャさん。いつものなんで気にしなくてもいいですよ」
そんなニーニャに対し、いつの間にか席へ戻っている二人がコクコクとお茶を飲みながら、そう言ってニーニャを出迎える。
 
「ニーニャさんも座ってください。お菓子は僕が作ってものですので、お口に合うといいんですけど」
「あ、ありがとうございます。って、どうして風紀委員会の人が給仕を?」
「気にしない方がいいですよ・・・」
「あっはい。あ、お茶ありがとうございますね」
クロウの何とも言えない表情に反射的に返事をしてしまったニーニャは、ニッコリとしながらお茶を出すクロウに若干引き攣った笑みを浮かべていた。
そんなこんなで昼間から疲れた雰囲気が漂う生徒会室に、慌ただしく一人の教員が駆け込んできた。
扉をノックもせずに開け放ち、「やあ!生徒会諸君!」と言いながら盛大に足をもつれさせ、したたかに顔面を地面へ打ち付けたその人は、数秒うめき声を上げて耳を真っ赤にしながら蹲ると、ようやく立ち上がって咳払いした。
「ゴホン!校長先生から生徒会メンバーに伝えたいことがあるみたいだから、みんな今から校長室に行ってくれるかな?あ、クロウ君もいたのか。丁度いい、君も向かってくれ」
「え〜・・・嫌な予感しかしないんですけど。どうにか誤魔化せませないですかね・・・」
「やめてね?僕が怒られることになるんだから」
「はいはい、お話はそこまで。クロウ君もシルビア先生を虐めないであげてね。さ、みんな立って立って!久々に校長先生からのお仕事なんだから、張り切っていこうじゃないか」
「「「はーい」」」
「あ、先に向かってください。僕はカップ片づけてから行くので」
「そのまま雲隠れしないでね?ほんっとにやめてよ!?」
「忘れてなかったらちゃんと行きますから。そんなに心配しなくてもいいですよー」
「すっっっごい心配なんだけど!本当に来てね!?」
「大丈夫でーすよー。すぐ行きますから」
クラウスに引っ張られながら校長室に向かって行くシルビアの背中に手を振って、クロウは茶器の片付けに移った。途中、お皿一杯に盛っていたはずのお茶菓子が跡形もなく消え去っているのに若干戦慄を覚えたが、それ以外は特にこれと言ったことはなく、早急に片付けを済まして生徒会室を後にした。
速足で校長室の前にやってきたクロウに、部屋の前で待っていたらしいシルビアが安堵した表情でクロウを部屋に迎え入れる。
ちゃんと行くって言ったのに・・・と不満げにしながらも校長室へ入ったクロウは、珍しくしょんぼりと肩を落としているカルとククルを見てびっくりと目を見張り、珍しくそんな顔をしているクロウにウィリアムがニッコリとしながら話し始める。
「おお、やっと来おったか!待っておったぞ、お前にも関係することじゃからなよく聞いておくれ」
「この雰囲気で言われると嫌な予感しかしないんですけど・・・」
「そんなことは知らん。いいかの?お主らにはこれから先の夏休みを使ってとある場所に行ってもらいたいのじゃよ。生徒会の仕事なんじゃが・・・まぁ、学校でお金を持つバカンスじゃと思って行ってきてくれんかの?」
ウィリアムの言葉に先ほどまで項垂れていた二人はパッと顔を上げて「「旅行!」」と喜びの声を上げているが、他の生徒会メンバーは何とも言えない表情をしていた。
「・・・で、なんで風紀委員のボクまでここに呼ばれてるんです?」
「いや、旅行先で取ってきてほしい物があってな?」
「そんなことだろうと思いましたよ・・・。後で欲しい物全部書き出してくださいね」
クロウの言葉に「おお!ダメもとでも言ってみるものじゃな」とニコニコ顔でそう言うウィリアム。
そんな言葉にクロウはむっとした表情のまま溜息を吐く。
そんなことがあったが、夏休み前の学校生活は特に何事もなく平和(?)な日常だった。
そんな日常も今日で終わりを迎える。
入学式同様に静かな喧騒に包まれた学園で、全校生徒が一つの建物に集められていた。
ウィリアムの挨拶で始まった集会は、生徒たちのソワソワとした雰囲気に彩られつつも、順調に進んでいった。
途中、クラウスによる挨拶があり、体感温度が上昇した気がしたが、クロウは風紀委員会として生徒たちの外側にいたため、事なきを得た。建物の中央部にいる生徒たちの中にはその額に汗をかいている者もいた。
その後、再びウィリアムの話となって集会は締めやかに幕を閉じた。
ゾロゾロと五方向に伸びる大通りを帰って行く生徒を見送って、生徒会と風紀委員会の面々は大きな仕事を終えた後の達成感を感じて、大きく息を吐いていた。
それからしばらくして事後処理を終えた風紀委員も帰路につき、学校に残ったのは教師たちと生徒会の面々、そして家に帰らせてもらえなかったクロウだけとなった。
生徒会の面々とクロウは、生徒会室に集まっていた。いつもどうりにクロウがお茶を出していると、そこにシルビアを引き連れたウィリアムが入ってきた。
「うむ、集まっておるようじゃな。お主たちには明日から馬車で目的地へと向かってもらうことになる。シルビアは引率としてついていくことになったが、護衛は別に用意してあるから安心すると良い。着換えとお小遣い程度のお金は持っておくと良いが、それ以外で必要そうな物はこっちで用意してあるから、お主らはシルビアと護衛の者たちの言うことをよく聞いてくれれば後は好きにしてもらっても構わん。早朝に迎えを送るから今日は速めに床に就くようにの!」
と言うと、ウィリアムはシルビアを置いて颯爽と部屋を後にした。
残されたシルビアの「そんなの聞いてないんですけど・・・」という悲痛な声をBGMに、カルとククルは旅行への期待に胸を膨らませ、その他の面々はこれから先に起こりうる事態に対し頭を悩ませるのだった
初等部特有の統一された制服を身に纏い、そう言って部屋に入って来たのは、緑色系統の髪をした二人の男女と銀色の髪を背中まで伸ばした一人の少女らしい容貌の少年。
「うん、お帰りー三人とも」
部屋にいた一人の青年は、そんな三人に向かって口を開く。
「いやー、クロウ君が居てくれると裏方の仕事が楽でいいねぇ」
「ボクは生徒会じゃなくて風紀委員会なんですよね?なんでこっちの仕事まで押し付けられなきゃいけないんですか?クラウス生徒会長」
頬を膨らませながらそう言って紙の束を差し出すクロウに、クラウスはハハハと笑いながらそれを手に取って「半分くらいは僕の意思じゃないんだけどなー」と肩をすくめる。
「ま、俺らは楽できていいんだけどな」
「本当にねー。クロウちゃんがその腕章してくれてるから、変に隠し事する人少なくなったしねー」
「その代わりボクの仕事が増えるんだけどね。あーあ、早く夏休みにならないかなぁ」
クラウスが書類に目を通している間、三人がそうお喋りしていると、生徒会室の扉が開いて数名の男女が入って来た。
「会長!戻りました!」
「同じくー」
「それに同じく」
ベレナス、ロゼッタ、サレーヌの順番で口を開き、それぞれが手に持っていた書類をクラウスに渡す。
「うんうん。ベレナス、後で会議室に予約入れて各委員会、部活動に連絡をしておいてくれ。ロゼッタは、後で話聞かせてもらえるかな?サレーヌには、特にないよ。いつもの綺麗な資料をありがとうね」
クラウスは、それぞれの資料にさっと目を通すと、そう言って三人をソファーに座らせる。
「どうぞ、お茶です」
三人がソファーに腰を下ろすと同時にクロウが紅茶を差し出す。
「あ、クロウちゃん!こっちにも!」
「本来なら君たちの仕事なんだけどね?」
知らぬ間に三人と反対側のソファーに座っている二人に溜息を吐きつつも、紅茶を出すクロウ。ついでにお茶菓子をテーブルの真ん中に置いておく。
「いやー、クロウ君がいてくれて本当に良かった。どう?風紀委員会から鞍替えしない?」
「会長はともかく、副会長までそんなこと言わないでくださいよ」
「ひどいなぁ~。あ、そうだ、クロウ君。父が「黒いダイアをありがとう」って言ってたんだけど、何のことかわかる?」
「黒いダイアですか・・・?黒いダイア、黒いダイア・・・あぁ!わかりました!トリュフのことですね!」
ぽん!と手を合わせてクロウがそう言うと同時に、カルとククルを除いた生徒会メンバーの四人が飲んでいた紅茶を吹き出す。
「な、なんだって?トリュフ?今そう言ったのかい、クロウ君」
ゴホッゴホッと咳き込みながら信じられないことを聞いたかのように目を丸くしているクラウスとその他 三人に、クロウは自分のお茶を入れながら、カルとククルはお茶とお茶菓子を持って退避して、お互いの顔を見合わせていた。
「あ、はい。なにか不味いものでしたか?ただの珍味ですよね?」
「あー・・・ちなみにだけど、トリュフの値段って知ってるのかな?」
「値段ですか?うーん・・・半金貨二枚と少しくらい?ですかね」
至って真面目にそう答えるクロウにクラウスら四人の先輩メンバーは、頭を押さえて大きく溜息を吐いた。
「トリュフは、高級店の料理によく使われる一方で滅多に採取できないんだ。どうやって成長するのとかもわかっていないから人の手で増やせないし、もし手に入っても大体が野生動物に食べられていたりして使える部分が少なかったりするから、よけい値段が高騰するんだよ。最近、アンドリューさんが手を回してくれてるみたいで、綺麗なものの流通量が増えて「あ、それほとんどボクが取ってきたやつです」えぇ・・・」
事の重大さを説明していたサレーヌとその他の先輩メンバーは、鶴の一声ならぬクロウの一声で疑問が晴れたようで、疲れたようにだらしなくソファーに沈み込み、再び頭を押さえて大きく溜息を吐くのだった。
「お兄さ・・・ゴホン、生徒会長、遅れて申し訳ございま・・・って!ど、どうなってるんですの?」
コンコン・・・とノックをして入ってきたニーニャは、どうやら走ってきたようで若干頬が上気していたが、部屋の中を見たとたんにその顔色が反転し面白いように青くなった。
「あ、ニーニャさん。いつものなんで気にしなくてもいいですよ」
そんなニーニャに対し、いつの間にか席へ戻っている二人がコクコクとお茶を飲みながら、そう言ってニーニャを出迎える。
 
「ニーニャさんも座ってください。お菓子は僕が作ってものですので、お口に合うといいんですけど」
「あ、ありがとうございます。って、どうして風紀委員会の人が給仕を?」
「気にしない方がいいですよ・・・」
「あっはい。あ、お茶ありがとうございますね」
クロウの何とも言えない表情に反射的に返事をしてしまったニーニャは、ニッコリとしながらお茶を出すクロウに若干引き攣った笑みを浮かべていた。
そんなこんなで昼間から疲れた雰囲気が漂う生徒会室に、慌ただしく一人の教員が駆け込んできた。
扉をノックもせずに開け放ち、「やあ!生徒会諸君!」と言いながら盛大に足をもつれさせ、したたかに顔面を地面へ打ち付けたその人は、数秒うめき声を上げて耳を真っ赤にしながら蹲ると、ようやく立ち上がって咳払いした。
「ゴホン!校長先生から生徒会メンバーに伝えたいことがあるみたいだから、みんな今から校長室に行ってくれるかな?あ、クロウ君もいたのか。丁度いい、君も向かってくれ」
「え〜・・・嫌な予感しかしないんですけど。どうにか誤魔化せませないですかね・・・」
「やめてね?僕が怒られることになるんだから」
「はいはい、お話はそこまで。クロウ君もシルビア先生を虐めないであげてね。さ、みんな立って立って!久々に校長先生からのお仕事なんだから、張り切っていこうじゃないか」
「「「はーい」」」
「あ、先に向かってください。僕はカップ片づけてから行くので」
「そのまま雲隠れしないでね?ほんっとにやめてよ!?」
「忘れてなかったらちゃんと行きますから。そんなに心配しなくてもいいですよー」
「すっっっごい心配なんだけど!本当に来てね!?」
「大丈夫でーすよー。すぐ行きますから」
クラウスに引っ張られながら校長室に向かって行くシルビアの背中に手を振って、クロウは茶器の片付けに移った。途中、お皿一杯に盛っていたはずのお茶菓子が跡形もなく消え去っているのに若干戦慄を覚えたが、それ以外は特にこれと言ったことはなく、早急に片付けを済まして生徒会室を後にした。
速足で校長室の前にやってきたクロウに、部屋の前で待っていたらしいシルビアが安堵した表情でクロウを部屋に迎え入れる。
ちゃんと行くって言ったのに・・・と不満げにしながらも校長室へ入ったクロウは、珍しくしょんぼりと肩を落としているカルとククルを見てびっくりと目を見張り、珍しくそんな顔をしているクロウにウィリアムがニッコリとしながら話し始める。
「おお、やっと来おったか!待っておったぞ、お前にも関係することじゃからなよく聞いておくれ」
「この雰囲気で言われると嫌な予感しかしないんですけど・・・」
「そんなことは知らん。いいかの?お主らにはこれから先の夏休みを使ってとある場所に行ってもらいたいのじゃよ。生徒会の仕事なんじゃが・・・まぁ、学校でお金を持つバカンスじゃと思って行ってきてくれんかの?」
ウィリアムの言葉に先ほどまで項垂れていた二人はパッと顔を上げて「「旅行!」」と喜びの声を上げているが、他の生徒会メンバーは何とも言えない表情をしていた。
「・・・で、なんで風紀委員のボクまでここに呼ばれてるんです?」
「いや、旅行先で取ってきてほしい物があってな?」
「そんなことだろうと思いましたよ・・・。後で欲しい物全部書き出してくださいね」
クロウの言葉に「おお!ダメもとでも言ってみるものじゃな」とニコニコ顔でそう言うウィリアム。
そんな言葉にクロウはむっとした表情のまま溜息を吐く。
そんなことがあったが、夏休み前の学校生活は特に何事もなく平和(?)な日常だった。
そんな日常も今日で終わりを迎える。
入学式同様に静かな喧騒に包まれた学園で、全校生徒が一つの建物に集められていた。
ウィリアムの挨拶で始まった集会は、生徒たちのソワソワとした雰囲気に彩られつつも、順調に進んでいった。
途中、クラウスによる挨拶があり、体感温度が上昇した気がしたが、クロウは風紀委員会として生徒たちの外側にいたため、事なきを得た。建物の中央部にいる生徒たちの中にはその額に汗をかいている者もいた。
その後、再びウィリアムの話となって集会は締めやかに幕を閉じた。
ゾロゾロと五方向に伸びる大通りを帰って行く生徒を見送って、生徒会と風紀委員会の面々は大きな仕事を終えた後の達成感を感じて、大きく息を吐いていた。
それからしばらくして事後処理を終えた風紀委員も帰路につき、学校に残ったのは教師たちと生徒会の面々、そして家に帰らせてもらえなかったクロウだけとなった。
生徒会の面々とクロウは、生徒会室に集まっていた。いつもどうりにクロウがお茶を出していると、そこにシルビアを引き連れたウィリアムが入ってきた。
「うむ、集まっておるようじゃな。お主たちには明日から馬車で目的地へと向かってもらうことになる。シルビアは引率としてついていくことになったが、護衛は別に用意してあるから安心すると良い。着換えとお小遣い程度のお金は持っておくと良いが、それ以外で必要そうな物はこっちで用意してあるから、お主らはシルビアと護衛の者たちの言うことをよく聞いてくれれば後は好きにしてもらっても構わん。早朝に迎えを送るから今日は速めに床に就くようにの!」
と言うと、ウィリアムはシルビアを置いて颯爽と部屋を後にした。
残されたシルビアの「そんなの聞いてないんですけど・・・」という悲痛な声をBGMに、カルとククルは旅行への期待に胸を膨らませ、その他の面々はこれから先に起こりうる事態に対し頭を悩ませるのだった
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