東方魔人黙示録外伝〜東方大罪録〜

怠惰のあるま

10年後に......



「そんなわけで宴をしよう」
「大雑把だな!?」

磔さんよ。大雑把で何が悪い。半人生、楽しまなきゃ損だろ。と、まあ宴すると言ったものの場所はどこでやろうか。

【地霊殿にどうぞ。準備しておきますので】

さすがさとり様だね。心を勝手に覗いたこと以外は評価しますよ。

「相変わらずこっちのさとりは凄いな〜」

当然、こいつもさとり様同様に俺の心を覗いていたようだ。

「お前も勝手に心を見るな終作」
「いいだろ〜?俺とおまえの仲じゃ〜ん」

本当にこいつの相手って疲れる...主に精神面。訛に助けを求めるが......

「訛...こいつどうにかなんないマジで」
「出来てたら苦労せぇへんわ」
「ですよね〜」

これ以上、俺の心を覗かれたらストレスマッハで死にますよ自分。覗かれて困るようなことでも考えてるのかって?毎日パルスィの事を思っているのがばれたく無いんだよ。

「へぇ〜そうなんだ〜お熱いね〜!」
「てめぇやっぱりぶっ飛ばす!!」
「おっとっと〜怖い怖い!それじゃあ先行ってるわ〜」

厭らしい笑いをし、終作は次元の狭間へと消えた。

「あっちに着いたら速攻で蹴散らす......」
「まあまあ落ち着けって」
「そうやで。気にするだけ無駄やって」

そうなんだけども...気にするなっていう方が難しいと思うよ?終作の行為一つ一つが人の気を集めるものばかりだろ。それを無視?無理無理。無感情にならん限り無理だって。
そんなくだらないことは置いといて城を出る。すると入り口では想起がアトラスの棍棒を持って観察をしていた。

「何してんの?」
「暇だったものでアトラスの武器を見させてもらっていた...」
「ただの棍棒だろ?」
「ちげーよ!世界樹を叩き折って作ったんだよ!」

世界樹ってあの世界樹ですか?昔のアトラスって本当にやんちゃだなぁ。

「ふむ...多少雑な作りだが良い武器だ...」
「鍛冶屋に言われると嬉しいねぇ〜」
「俺が少し鍛えてやろうか...?」

なんだろう。想起の顔がものすごくキラキラしてる。鍛冶職人としての何かがあるのだろうか。にしても、あまり感情を表に出さないイメージがあったからここまで嬉しそうな顔をするなんて意外だな。

「おっ!それはありがたい!」
「というわけで...俺は少し遅れて行くことになりそうだ...」
「そうか。なら道案内はアトラスにお願いするぞ」
「あいよ〜!そんじゃあ城の宝物庫から幾つか拝借させてもらうわ」

宝物庫。その言葉に耳をピクッとさせた磔。しかし、無視。

「いいぞ。ただ...無駄遣いはすんなよ」
「あいあい〜」

軽い返事をし、アトラスは想起と共に宝物庫へと向かった。二人の足取りはどこか嬉しそうである。そして、宝物庫に反応した磔は我慢できずに俺の肩を掴みなんか必死な顔で言った。

「宝物庫って事は...宝石とかあるんだよな!?」
「あるけど...欲しいのか?意外だな。おまえが宝石とか欲しがるなんてよ」
「えーっと...実はだな〜...」
「どうせ.....豊姫と依姫にプレゼントしたい!とかだろ?」
「うっ...」

図星か。全く...まあ別にいいんだが......初代魔王の暴力の限りを尽くした証のような宝石や金銀財宝なんぞ見たくもないし。
けど、全部あげると城の奴らの財産がなくなるしなぁ......あ、でもアトラスいるから大丈夫か。

「宝物庫から勝手に取ってっていいぞ。ただし、二つまでだ。いいな?」
「ほんとか!?おまえってほんっとにいい奴だな!ありがたく貰うぜ!」
「あたしも宝物庫に行ってみたい!」

興味津々な顔で手を上げて主張するレフィー。宝物庫とかそうそう見れるものでもないしな。どんな風になってるか気になるんだろう。
それに対し、アリュレルトはあまり乗り気ではなさそうだ。

「アリュレルト行かない?」
「うん。あたしはあるにぃと一緒に行く〜」
「いいのか?」
「早く宴したい!」
「ならいいが。魔晴と訛はどうする?」
「わいは興味ないわ。はよ宴しようや」
「僕も早く宴したいな」

なんとなくわかってた。訛はいちいち見に行くのが面倒くさいだろうし、魔晴はなんか疲れてるようだし。
そうゆうわけで俺ら五人は早々に帰らせてもらうよ。

「俺らは先に行って準備してるよ」
「おう!」
「また後でね〜!」

二人は宝物庫へと走っていった。かなりのスピードであったが......宝物庫の中身戻ったら無くなってないよね...?
......無くなってたら世界の壁を超えて追いかけるからいいや。さっさと地底に帰ろう。パルスィも休ませたい。さっきから一言も喋ってないもん。絶対精神的にきてるな。うん。急ごう。






△▼△






地底に戻った俺たちは地霊殿に向かう。終作をぶん殴るために俺の足取りは早かった。
地霊殿に到着するとそっくりな厭らしい笑みでさとり様と終作が入り口で出迎えていた。殴りたい.........あの笑顔.........

『まあまあ落ち着いて』
「二人で同じこというんじゃねえ!!」
「さてと、まだ宴の準備はできてないので中で休んでください」
「ありがたく休ませて貰うで〜」
「僕も少し休ませてもらいますね」

地霊殿に入っていく二人と一緒に終作も中に入ろうとしていたので止めた。

「なんだ〜い?」
「二人で話したい...ちょっとこっちに来い」
「え...!まさかこくーーー」
「ふざけたこと抜かしたら消すぞ...?」
「はい」

心配そうにしているパルスィの頭を撫で地霊殿に戻ってるように言った。少し不服そうな顔をしたが素直に聞いてくれた。
途中、アリュレルトが何度かついてきそうになったのでパルスィに連れて行ってもらう。ごめんよ。
今は、終作を地霊殿から離れた地底の奥へと連れてきました。

「さぁて話とはなんでしょ〜か!」
「......真面目な話だ。おまえ以外に頼める相手はいない」
「お?アルマくんが俺の頼みをするなんて......相当真面目とみた!」
「ならちゃんと聞け!!」

いつもと違う気迫に終作は珍しく真面目な表情をした。

「それだけやばいことなのか?」
「......まだとうぶん先の話だ。だいたい10年後ぐらいか?そのぐらいに魔王の集会がある。主催者は...白痴の魔王だ」
「白痴の魔王だと...!!」
「やっぱり知ってるか」
「知ってるも何も...そいつは外なる神で一番やばいやつだろう?」

終作が戸惑いを見せるほどなのか。やっぱり行きたくないな。けど、行かないとなぁ......別に白痴の魔王本人に会いに行くわけじゃないんだけど。

「と言っても名目上だ。本当に白痴の魔王の意思ってわけじゃない」
「じゃあ誰がそんな集会を...」
「確か...ニャルラトホテプって他の魔王が言ってた」
「その集会...なかなかえげつないな」

俺もそう思うよ。
なんでさ〜魔王の俺がさ〜どっかの白痴の魔王だがなんだか知らない奴の名を使ってる奴の呼び出しを受けないといけないんですか〜全くもってめんどくさいんですけど〜

「おまえって時々すごいと思うよ...」
「どこがだ?」

そうゆうところだ...と言われたが、どうゆうところですか?私、何か変なこと言いました?

「まあいいや。そんでそのカオスな集会の事を知った俺はどうすればいいんだ?」
「10年後...魔王の集会が始まる瞬間に次元の壁が消える。その時、おまえには戦える奴を集めて欲しい...」
「大量に戦力が必要ってことか?」
「ああ...たぶん物凄く...」

一方的に話したためか、終作が話を理解しきれていないようだ。無理もないか。突拍子もない話だからな。

「えーっと...次元の壁が消えるとどうなるんだ?」
「別次元と別次元の壁が消えて一つの次元になるってことさ」

次元級の事が起きることを知り、終作はいつもの厭らしい笑みでは無く引きつった笑みとなっていた。

「な、なんか大規模すぎて笑えない.........つ、次に戦力が沢山必要な理由は?」
「次元が一つになるってことは別次元の悪党だっているだろ?そいつらが欲深くこっちの次元を狙って襲ってくるってことさ」

まあ...それだけじゃないが。これはおいおい知ることになるから言わなくてもいいだろ。説明しろって言われても俺だってできないしな。

「ふむふむほうほう」
「ちゃんと聞いてたか...?」
「俺をなめるなよ?バッチし覚えたぞ!!アルマくんの頼みなんてそうそう聞けないしな!ウヒヒヒヒ!!」

......心配だ。この上無く心配だ。あとで磔や想起にも話しておこう......

「さぁ!宴をしようじゃないか!」
「はぁぁ......そうするか...」

ケラケラと陽気に笑うこいつを見てると一人で考えるのがバカらしくなるよ。






△▼△






地霊殿に戻るとすでに宴が始まっていた。いや、勝手に始めんなよ。俺と終作を待てよ。

「あるにぃやっときた!」
「あるにぃさん遅いよ!」
「おっ!やっと来たか!先やってるぜ〜」
「見りゃあわかるわ!!!」

軽く出来上がってる磔と宴を完全に楽しんでいるアリュレルトとレフィー。
その横では想起と訛、そして魔晴が麻雀を行っていた。というか、その麻雀台はどこから出したんだ。
そういえば.........前に訛がさりげなくポケットから麻雀台を出していた気がする。

「アルマもやらんか?」
「今回はいいや、それで想起さんよ。アトラスの武器はどんな感じになった?」
「いい感じに仕上げたぞ...それと宝物庫の素材を使わせてもらった礼におまえの武器を造っておいた」
「別にいいのに」

壁際にあった大きな物体からかかっていた布を取るとそこにあったのは禍々しい輝きを放つ赤黒い見た目。チェーンソーのように刃が回転する刀身。そして、極めつけに目玉のレリーフが象られた巨大な大剣であった。
どこと無くアルマの死をも奪う心の鎌ソウル・ザ・グリードと似ている。
それを見るなり魔晴は気味の悪いものを見るような目をする。

「な、なんだいその武器は...」
「アルマの趣味通りに造った結果だが...?俺は中々かっこいいと思うぞ」
「だ、だいぶ趣味が悪いと思うよ...?本人も喜ぶわけがーーーー」
「超かっけえ!」

魔晴は知らない。アルマの趣味の悪さを...
子供がオモチャをプレゼントされた時のように目をキラキラとさせアルマは喜んでいた。

「喜んでもらえて造った甲斐があると言うものだ...」
「貰っていいの!?」
「ああ、名前も決めてくれて構わない...」
「そうだな〜......なら魔剣・大百足だ」
「大百足か。なかなかいい名前やないか」

俺は大百足を握り、軽く空を切るとすぐに手に馴染んだ。まるで元々俺の武器だったかのように。
使い心地を確かめるように色々と試してみたが、本当に使いやすい。そしてなんとなく、大百足に魔力を込めてみた。すると刀身に付いていた大量の小さな刃が刀身を囲うように回転を始めた。それはまさにチェーンソー。

「え、えげつないのぅ...」
「すっげぇ使いやすい!ありがと想起!」
「あるにぃすごく嬉しそう」
「あるにぃさん子供みたいだね〜」
「ギヒャヒャヒャヒャ!!」

俺が高らかに笑いながら、ブンブンと試し斬りをしていると隣の部屋からパルスィがタイミング悪く現れ、振り回していた大剣が彼女に攻撃の一手が向けられた。その場にいた終作とさとり様以外の全員が止めようと動き出したが、それは無意味になった。なぜなら......パルスィは片手で俺の大剣を受け止めたのだ。

「......なんのつもりかしら?」
「えーっとですね〜......事故です」
「地霊殿の中で武器は...?」
「ふ、振り回しちゃダメです......」
「ペナルティ」

そう言ってパルスィは大百足を握っていた手を強く握りしめた。ピキピキとひび割れる音が鳴る。

「え?待ってーーーーー」
「ペナルティ」
「いや、マジでーーーー」
「ペナルティ」
「弁解させてくれよ!!」

俺の叫びは虚しく響き、今日生まれたばかりの魔剣・大百足の刀身は砕け散った。パラパラと破片が床に落ちた。
その光景に訛はこの世界のパルスィの強さを再確認した。

「ここのパルスィは規格外やな...」
「絶対に敵に回したくないね...」

魔晴はこの世界ではもはや常識が通用しないことを確信した。そして、大百足が壊れたことに想起は驚いていた。

「か、片手で俺が造った武器を壊した...!?」
「想起の造った武器が壊れるなんてな〜」
「こうなったら...もっと頑丈に...」
「職人魂に火が付いてるし...それよりアルマはだいじょ....あれ?」

磔がアルマの方を見ると忽然と姿を消していた。

「あれ?アルマがいない!?」
「さっき泣きながら部屋から出て行ったよ?」
「パルスィねぇさんはそれを追いかけてった」
「......騒がしい奴らだ」

呆れた様子だがどこか羨ましそうな磔。そして、どこかへ行こうとする終作の肩を掴んだ。

「今回は邪魔させないぞ?」
「離せぇぇぇ!!俺は二人のいちゃいちゃを生暖かく見たいんだ!!そしてあわよくば邪魔するんだヨォぉぉ!!」
「ただの害悪だな...」
『さいて〜!』
「恋人同士の邪魔をするのはどうかと思うよ?」
「ここぞと言わんばかりの貶し!?」

その後、全員総出で二人の邪魔をしようとする終作を止めたそうだ。





△▼△





地霊殿の縁側の隅で膝を抱えていじけているアルマ。そんな彼にため息をしつつ隣に座るパルスィ。
二人は一言も話さないまま数分が経った。先に痺れを切らしたのは、やはりアルマである。

「なんだよ...」
「別に...隣にいたいから」
「ふぅん......」

アルマが小さく反応すると、また沈黙が訪れる。数分が経ち沈黙を破ったのはパルスィであった。

「ごめんなさい...大剣壊しちゃって...」
「......結構ショックだけど俺も悪かった。ごめん」
「でも...」
「じゃあ、これでおあいこ」

俯いているパルスィの顎をクイッとあげ、アルマは彼女の唇にキスをした。
数秒の間、時が止まったように二人は動かなかったが思考停止状態だったパルスィは思考を取り戻し、顔を赤く染める。だが、離れようとはしなかった。
また数秒が経過するとアルマはスッと顔を離しニヤリと笑った。それが気に食わないパルスィはムスッとした表情。

「不意打ちはずるい...」
「不意打ちじゃなければいいのか?」
「......ダメ」
「じゃあ、不意打ちやめな〜い」
「その意地悪なところが妬ましい...!」

自分を妬むパルスィの頭を撫でながらアルマは天上を見上げた。
10年後に来る災厄を思いながら彼は今ある幸せを噛み締めた。


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