東方魔人黙示録外伝〜東方大罪録〜

怠惰のあるま

終幕


「さてさて〜?アルマ君は何をしてくるかな〜?」
「とりあえずお前に対抗でもしようか?」
「七つの大罪でも出すのかい?」
「残念...俺は八つの枢要罪だ」
「は?」

七つの大罪とは元々八つであった。
八つの枢要罪は「暴食」、「色欲」、「強欲」、「憂鬱」、「憤怒」、「怠惰」、「虚飾」、「傲慢」の序列となっていたがどこかの偉いグレなんとかさんが改変させたらしい。
「虚飾」は「傲慢」に含まれ「怠惰」と「憂鬱」は一つの大罪となり「嫉妬」が追加された。
実際のところアルマの感情の怪物は七匹ではなく八匹。そして、嫉妬はない。

「感情 八つの枢要罪」

アルマの背後に8色の炎が出現すると、炎の中からそれぞれの枢要罪を背負う八匹の怪物達がズラリと現れた。
「暴食」は全てを飲み込み無に帰す罪
「色欲」は全ての生き物を魅了する罪
「強欲」は全てを自分のものとしてしまう罪
「憂鬱」は全てが鬱陶しくなる罪
「憤怒」は全てに怒りを感じさせる罪
「怠惰」は全てを堕落させる罪
「虚飾」は全てを嘘に隠してしまう罪
「傲慢」は全ての頂点と思い上がらせる罪

「これが八つの枢要罪だ」
「後ろに恐ろしいメンツが見えるんですが」
「誰が一対一で戦うって言った?」
「ひ、卑怯者!」
「褒め言葉としてもらっておくよ。行けお前ら」

怪物達に指示を出すが誰一匹と動こうとしなかった。想定内だったとはいえ、自分の感情の化身達に苛立ちを覚える。

「動けよ!!」
「我が主。すまないが私は虚飾と一緒に戦うつもりはない」

傲慢の化身である金眼の怪物は嫌そうに虚飾を睨む。透き通った真っ白い髪の少女、虚飾の化身である無眼の怪物インビジ・アイド・モンスターは作り笑いをする。

「え〜僕は傲慢と一緒にいたいな〜?」
「心にもないことを」
「二人、仲悪い、鬱陶しい」
「お前の喋り方も鬱陶しいぞ憂鬱」

無表情で緑髪の中性的な顔立ちの少女、憂鬱の化身である灰眼の怪物グレー・アイド・モンスターは片言で喋る。その喋り方に怠惰の化身である赤眼の怪物は面倒くさそうにため息をする。
それが気に食わなかった憂鬱は文句のありそうな顔をし、また片言で喋り始める。

「怠惰、冷たい、憂鬱、優しさ、欲しい」
「俺は緑眼にしか優しくしねぇ」
「憂鬱、泣く」
「仲良くしなよ」

二人の間に入り、仲裁する暴食の化身である紫眼の怪物。そんな暴食に強欲の化身である青眼の怪物はボソッと言う。

「暴食が言うと説得力ない...」

それが聞こえた暴食は子供のように頬を膨らませプンプンしていた。

「あたしは仲良いもん!どちらかというと強欲でしょ!」
「僕だって仲良いし!そうだよね怠惰!」
「いや全然」
「ガーン!」
「あらあら...落ち着きのない子達ねぇ」

大人っぽい雰囲気を醸し出すこの女性は色欲の化身である桃眼の怪物ピンク・アイド・モンスターーー婚期を逃しているーーはクスクスと笑う。そんな彼女に強欲と暴食はキッと睨む。

『うるさい!おばさんは黙ってて!!』
「誰がおばさんだゴラァぁ!!」

大人っぽい雰囲気は崩れ、完璧にヤクザみたいになった色欲。怒りをあらわにし体から桃色の炎を噴き出す。強欲と暴食も同じく、青色と紫色の炎を噴き出した。
彼らのあまりの身勝手さに主であるアルマは苛立ち、怪物達を怒鳴りつけた。

「お前ら言うこと訊けよ!!」
『黙れクソ主!!』
「口悪りぃな!?」

怪物達は口を揃えて主のアルマに罵倒を浴びせる。
その光景に終作は腹を抱えて笑っていた。それが気に食わないアルマは怪物達に向けてある一言を伝える。

「お前ら...パルスィを傷つけられてもそんなふざけてられるか?」

ピクッ!と全員の耳が動き、視線がアルマに浴びせられる。あんなにもバラバラだった怪物達はある一つの行為によって一致団結した。
それは単純であり、彼らにとって許されることのないことだ。

『パルスィを傷つけた.....?』
「終作がパルスィから嫉妬を奪った。これの意味がわかるな...?」
『言われるまでもない(よ)...』

ゆらり...と全員の視線が元凶終始終作に向けられる。それに気づいた終作は笑うのをやめ、嫌な殺気を感じていた。

「ありゃ...?これってやばいパターン?」
『パルスィを傷つけた...それは死に値する...』
「怪物達もそんな感じなのね!?」
「さぁ?やろうじゃないか終作君」
「こうなったら......逃げるが勝ち〜」

次元の狭間に逃げ込もうとする終作の前に強欲が現れる。

「ど、どうも〜....?」
「逃がすわけないでしょう...?」

終作の顔を殴る強欲だったが殴った感触はなく目の前から終作は消え、気づけば次元の狭間は塞がっている。またもや結果を変えられたようだ。
だが、それも計算のうちなのか強欲は悔しがる様子はない。終作を追いかけるように同じく次元の狭間を開いた。青眼の怪物の能力は相手の能力を真似する。時には奪い自分のものとし相手は使用不可となる。
今みたいに次元の狭間を開けたのは終作の《次元を操る程度の能力》を真似したようだ。
逃げる終作を見つけ、不気味に笑う強欲。

「鬼ごっこ?僕大好きだよ。逃げる相手が恐怖する瞬間とか......」
「何怖いこと言ってるのこの子!?」
「ギヒヒヒ...余所見って禁物だよな?」
「は!?」

いつの間にか次元の狭間から抜け出ていた終作の前に怠惰とアルマが同じように脈動する大鎌を担いで待ち構えていた。
逃げるのは無理と悟った終作は赤や黒を基調とした武器を取り出し、二人に迫る。

『怠惰の極 堕落斬り』

怠惰は右からアルマは左から終作を挟むように鎌を振るった。その攻撃を嘲笑うように右手には刀を左手には大剣を握り、攻撃を防いだ。だが、次の瞬間。黒い光が終作の全身に走る。ガクンと膝が崩れ地面に膝をついた。

「な、なんだ?力が入んねえぞ?」
「堕落斬りは魔力を流れた箇所からダラケさせる。お前は二人分を悠長に防いだから1秒もかからず全身に流れたようだな」
「絶体絶命のピーンチ!だと思うだろ?」

結果を操り、効果が切れたという結果を作りあげた。まあ、効いていなかったようだが。そして、一目散に背後にあった誰も守っている様子がない部屋の出口に走っていく。
それでも落ち着いているアルマはトリックスターに向けて言う。

「おちょくるなよトリックスター。お前には効果があまりないのは知ってる。虚飾!」
「は〜い〜」
「うぉっ!どこから出てきやがった!?」

やる気のない返事をし、誰もいないはずの出口から蜃気楼のように虚飾が現れた。流石の終作も驚き、動きを止める。

「え〜い!」
「くそッ!逃げ場なしか!」
「逃げ場なんか作るわけないだろ?」
「だよね〜?なら勝負するか」

刀を次元から取り出し、終作はアルマに斬りかかった。
それを大鎌で防ぐが予想以上の力にアルマは軽く押されている。

「おいおい....どこにそんな力あったよ」
「魔怪負傀を発動している俺はいつもの俺と思うなよ〜?おらっ!」

終作はアルマの隙だらけの足に蹴りを入れた。刀の方に意識を向けていたアルマは完全に油断をしていたために簡単に転ばされる。
今度は形成逆転と言いたそうに彼の首元に刀を突きつける。

「うひひ!助けてほしいかぁい?」
「いいのか?そんな油断していて...」
「油断なんかしてませ〜ん!」
「じゃああいつらの攻撃をどう防ぐ?」
「あいつら?」

周りを見渡し、自分自身を取り囲み何かを放とうとする感情の怪物達に終作は狂ったように笑う。

「アヒャヒャヒャ!!これじゃあお前も巻き込まれるぜ?」
「だろうな」
「......あれ?想定済み?いいの?あれ絶対痛いよ?止めないの?」
「俺を巻き込む前提で撃とうとしてるんだよ。あの怪物共は」

今にも攻撃をしようとしている怪物達に終作は少し焦りを見せる。
魔怪負傀を発動した彼は結果を操ることができるようになるが必ず当たる結果をどう操ろうと意味をなさない。

「ア、アルマ君?交渉しませんか......?」
「するわけねーだろ。バァカ!」
「ですよねぇ!?」

交渉の余地も与えられぬままに怪物達の攻撃が始まった。

『消えろ!クソ主!!』
「なら俺に当てないでよ!!」

終作の叫びは届くわけもなく怪物達の放ったレーザーが直撃するとどこぞの爆破オチのような爆発が起こり、粉塵が舞った。
粉塵が晴れるとところどころが焦げている終作とアルマが横たわっていた。
怪物達は満足したのかいつの間にか消えていた。
そんな二人に磔達は駆け寄った。

「大丈夫か?」
「普通...」
「大丈夫そうだな。にしても...自分の城なのによくこんな破壊できるな...」

戦闘跡が色濃く残っている城の壁や床を見ると隣の部屋まで見えるところもあれば、外の景色が覗けるぐらい破壊されているところもあった。
これだけでどれだけ大きい戦闘が行われたかが分かるだろう。

「パルスィを傷つける奴は許さん...たとえ自分の城が壊れようとも.......そいつを廃人にしてやる.....!!」
「そのことなんだけど......パルスィ壊れてるよ?」
「は?」
「まあ...見てみれば分かるよ......」

魔晴が苦笑いで指を指している。その指の先にはブツブツと呟いてこちらを隠れて覗いているパルスィがいた。
それに気づいたアルマは大きくため息を吐いた。

「はぁぁ......やっぱりかぁ......」
「嫉妬が消えるとああなるのかい?」
「ああ...嫉妬心の化身でもあるパルスィは嫉妬が消えると死にはしないが......ああなるんだ」
「じゃあ死んでないから俺に罪はないってことで!」

平然と立ち上がっている終作にアルマは呆れて憤怒すら感じれなかった。

「もういいや...それで...早くこいつらの感情を返してやれ」
「了解しました!」

パチン!と指を鳴らすと終作の中から六つの色が違う光球が出てきた。
それぞれ元の主人の心の中へと帰って行った。
カチン...!
魔晴と磔、そしてパルスィの中で足りなかったピースがはまった。

「さぁて...帰ろうかなぁ......」

寂しそうに帰ろうとする終作の肩をアルマはがっしりと掴んだ。
また何かやられるのか?そう思ったがアルマから出た言葉は予想の斜め上であった。

「何言ってんだよ。宴するから来い」
「あれ?いいのか?俺散々暴れたぜ?」
「どんな仲間でも俺は除け者にはしねぇよ」
「そうか......なら行こうかねぇ〜」

いつものように厭らしく笑う終作だったがその笑みはどこか嬉しそうであった。


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