東方魔人黙示録外伝〜東方大罪録〜

怠惰のあるま

壊す者


アトラスと向かい合うように想起は自分の刀を構えた。
自分の中の何かと争うアトラスに想起は同情を感じるが彼を止めぬ限り魔王城には入ることはできないだろう。

「少々手荒になるが許してくれよ...」

想起を中心に空間の雰囲気が変わった。
近くにいたアルマ達は微かに重みを感じ、想起から距離を取った。どうやら重力を急激に強くしたようだ。空間の変化に巻き込まれたアトラスは急激に重くなった体に耐え切れず膝をついた。
想起が近づくほどアトラスの体はググッと押し潰される。彼との距離が近づくほど空間変化の干渉が強くなるようだ。

「悪いな...」
「グググ......!」
「さて、今の内にお前らは行け....」
「お前一人で大丈夫か?」
「ああ...さっさと終作をブン殴ってこい...」

余裕に見える想起に心配不必要だった。
動けないでいるアトラスの横を素通りし、彼らは魔城へと入って行った。
フゥ...と息を吐き想起はニヤリと笑い、これで本気を出せる...そう呟いた。

「おい......!」
「どうした...?」
「なぜ...アルマ達を行かせた...!!」
「それは俺が本気を出すためだ...変景 地獄巡り...!」

彼らの周りの景色が揺らぐと何もない荒野が煮え滾るマグマが溢れかえる地獄へと景色を変えた。時折、ところどころでマグマが噴き出している。
環境が変わって重力の効果は切れたようでアトラスは平然と起き上がった

「一瞬で地獄に...!?」
「俺の能力だ...本当の地獄ってわけじゃない...それより気分はどうだ...?」
「へ...?あれ!?頭ん中のモヤモヤが消えてやがる!」

想起はあの一瞬の中でアトラスを苦しめていた洗脳を無力化していた。自分を苦しめていたモヤモヤが消えてスッキリしたアトラスは腕をブンブン振り回したり、ジャンプしたりして自由に動くか調整していた。
そして、何を思ったのか棍棒を強く握りしめ想起に向けた。

「何の真似だ...?」
「いやさ。こんな呆気なく洗脳が解けてよアルマの手助けをするなんてカッコ悪いだろ?それによ...馬鹿みたいに洗脳されて主に手を出した俺に腹が立って仕方ないんだ!!」

怒りを表すように地面を思いっきり踏み締めた。その衝撃は周りのマグマを波打たせ、地面に亀裂を走らせた。

「だからよ...カッコ悪い俺のために戦ってくれ...!!」
「......わかった。あんたの心意気に敬意を表して本気を出す...」
「ありがとよ...えーっと...?」
「想起だ。よろしく頼む...」
「へへ...!んじゃあ行くぜ!」

四股を踏むように右足を振り上げ地面を思いっきり踏み締め、左足でも同じように地面を踏む。
そして、かなり低姿勢となったアトラスの構えに疑問を抱く。

「なぜそこまで沈む...?」
「人にはそれぞれ動きやすい構えってものがあるだろう?俺はこれがそうだ」
「ふむ...まあいいが...いくぞ...!」
「待ったなしだ!!」

地面を蹴り、まるで弾丸のようなタックルに想起は一瞬驚く。あの巨体ではありえないスピードで動いているのだ。
それでも難なく避ける想起は、スキだらけのアトラスを横から攻撃するが刀は通らず弾かれた。

「ぐぉ...!?」

すぐに体勢を整えるが、周りが陰で覆われる。見上げるとアトラスの棍棒が迫っていた。刀で防ごうと考えた想起だったが横に転がりながら回避をする。
それでも地面に伝わる衝撃が想起に多少のダメージを与えた。

「くっ....そ..!!」
「どうした!!逃げるだけか!!」
「調子に乗るなよ...!弾幕 スターオブドライブ...!」

想起の周りに複数の星形の弾幕が現れた。
それをアトラスに向けて飛ばすと弾幕は光の速度を超え、アトラスに直撃した。
その威力は凄まじく弾幕ごと飛ばされてしまった。マグマの上を飛んでいき壁に激突してようやく止まり弾幕は消えた。
ゲホゲホと吐血するアトラスはニヤリと笑っていた。
壁から抜け出しマグマに向けて棍棒を振るうと想起に向かってマグマを飛ばした。

「ほう...やるな...」
「俺は弾幕を使えないんでね。いろいろ使わせてもらうぜ!!」
「だが...この空間は俺が掌握しているのを忘れたか...?」

パチン!と指を鳴らすとまた景色が一変。今度は辺り一面氷だらけの世界となった。もちろん飛ばされたマグマも消えた。

「ずりぃなその能力!」
「お前も能力を持っているだろう...?使わないのか...?」
「いいのか?後悔するぞ」
「ふん...そんな大それた能力なのか?」
「本来はアルマに使用を禁止された能力だ。一歩間違えれば相手の人生をぶち壊す危険性もあるんだが...使ってやるよ」

棍棒を置き、右手に魔力を集中させる。魔力が溜まっていくと青白い光を放つ。
光が最大まで輝くとアトラスは殴りかかった。避けるまでもないと判断した想起は武器で防御をとる。
青白い光が武器に触れると想起の中で何かが割れた。
それに気づいたのか、想起は後ろに飛び退いた。

「何をした...?」
「試してみれば?」

両手を地面に突き刺し、氷の大地に亀裂を入れた。そして、両腕に力を込めた。
ピキ...ビキ...
地面に入った亀裂が広がっていき、想起が立っていた地面が揺れる。異変に気付いた時には時既に遅くアトラスが半分に割れた氷の大地を持ち上げていた。

「空高く飛んでいけ!!」

ブォン!と空気を切る音が鳴り想起が乗った氷の大地は空高く飛んだ。

「嘘だろ...!?なんて力だ...!!」

空間の重力を上げ、氷の大地を落とそうとする想起だが何故か空間に変化が訪れなかった。

「なんだ...能力が使えない...?」
「やっと気づいたか」
「.....!?」

下にいるはずのアトラスが想起と同じ、空に飛んだ氷の大地にいた。

「どうやってきた...!」
「飛んだ」
「規格外なやつだ...」
「まあな。そんで能力使えないだろ?」
「ああ...お前の能力か...?」

アトラスは賞賛するように拍手をする。

「正解。俺の能力は《能力を破壊する程度の能力》だ」
「能力を破壊だと...?じゃあ二度と使えないということか...!?」
「安心しろ一時的な破壊だ。時間が経てば治るよ」
「それはよかった...しかし、これではお前の攻撃を受けれないな」
「触るのが条件だって誰が言った?」

アトラスが地面を右手でコンコンとノックする。すると、青白い光が水面の波紋のように広がる。とっさに避けようとする想起だが棍棒を振りかぶって飛びかかるアトラスが上から襲いかかる。
咄嗟に持っていた武器で防ぐが地面から離れることができず青白い光に触れてしまった。
彼の中でまたピキッと割れる音が鳴った。
どうやら想起の能力がまた壊れたようだ。その証拠に氷で覆われた景色は元の魔界の景色へと戻った。

「クッソ....!」
「へぇ...?能力を複数持ってるのか。こりゃあ壊し甲斐があるな」
「これ以上壊されてたまるか...!幻現 幻現斬...!!」

ボヤァ...と一瞬アトラスの視界が眩むと目の前から想起の姿が消えた。何度も目をこすってみるが幻覚ではなく、実際に消えた。
そして、今度は何人もの想起が現れた。だが蜃気楼のようにゆらゆらと揺れている。

「おいおい...?幻覚か?現実か?」
『どっちもだ』
「あ〜!!!しゃらくせえ!!怒槌いかづち 星砕き・極小!!」

怒りの篭った一撃は大地を砕いた。その衝撃は地下まで響き、大地全体を揺らす大地震を引き起こした。

「おっとっと....地震を起こすとかびっくりだ...」
「そりゃあどうも!」

想起に向けて振るった棍棒はブォンと空を切る。同じく他の想起たちにも攻撃を与えるが全てが空を切った。

「全部幻覚かよ!」
「そういうことだ...」

声が聞こえたのは背後。振り向くとそこには綺麗な銀色の剣を握っている想起がいた。
剣は刃の部分がゆらゆらと微かに揺れ、蜃気楼のように薄くあの刃自体が幻覚のように思わせられた。

「なんだその剣は?」
「これは俺が作った剣で《幻夢剣》という...中々の出来だと自負してるよ...」
「へぇ、そんな現実感のない刃で斬れるのか?」
「いや...もう斬ってるが?」
「は?何言っーーーーぐふぁ...!?」

突然、腹部に痛みが走ると口から血を吹きアトラスは膝をついた。
だが、どこにも斬り傷は無く斬られた感触も無かった。

「どうやった...?」
「俺は幻と現を操れる...お前に俺が消えた現実を見せ、斬られたという過程を幻にし、そして今結果だけを現実にした」
「???。よ、よくわからねえが...はは...俺の負けだな」

ゴロンと床に寝っころがりフゥ...と息を吐いた。

「ほら行けよ。俺寝る」
「いかないのか...?」
「多分俺必要ないし?それに今ここで寝てれば敗北した感あっていいだろう?」

そう言って笑うアトラスに想起は鼻で笑った。

「そうだな...じゃあ俺は行くぞ」
「あいよ。ああ、あと....もしもアルマ達と合流した時にリリスに会ってなかったら伝えてくれ。あいつとは戦うなって」
「......どうゆう意味だ?」
「いや...まあ...アルマならあったら気づくがあってからじゃあ遅いんだ...あいつの能力はーーーーー






△▼△






オイオイ...!!なんでこうなるんだよ!!

「ある兄どうするの!逃げ場ないよ!」

どうにかアリュレルトだけでも逃さないとこの子じゃあ分が悪すぎる!
どうにか磔と魔晴のどっちかに合流しないと...!

「逃がしませんよ?」
「ぐぉ...!?あ...頭が...!!」
「あるにぃ!あ、あたしだけでも...!」

武器を構えようとするアリュレルトの肩を掴み止めさせる。

「ダメだ...お前らが攻撃するのはあいつの計算の内だ...!」
「で、でも...!」
「あいつの能力を見たろ?現に今、それが原因で逃げてるんだ...」
「攻撃しないのですか?」

スタスタと近づいてくる悪魔ーー俺の側近リリスは不気味に笑いながら近づいている。
こいつに絶対攻撃させちゃダメだ。理由は二つあるが一つ目の理由はリリスの能力が関係している。二つ目は...

「残念です...もっと...もっと!私は感じたかったのに!」

こいつが...生粋のドMだってことだ........

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