東方魔人黙示録外伝〜東方大罪録〜

怠惰のあるま

巨人の王


アルマ達一行は魔界へと続く入り口に到着したが、誰一人として入り口に入ろうとはしなかった。その事にアルマは首を捻り魔晴達に体を向ける。

「なんで入らない?」
「こんな怪しすぎる入り口に入りたくない」
「別に死ぬわけじゃないだろ」
「その基準はおかしい」

どうにか説得してみるが誰一人として首を縦に振らない。レフィーやアリュレルトでさえ拒否する魔界の入り口は不気味に輝いた。
その異変にアルマ以外の者達は驚く。そして、絶対に何かしたであろう元凶を睨みつける。

「何をした...?」
「お前ら強情だから無理矢理入れる」
「い、入り口が光ってる理由は........?」

磔が恐る恐る聞いた。
その質問にニヤリと不気味に笑い、嘲笑うように答えた。

「魔王は待つのが嫌いでーす!よって入り口さんに君らを無理矢理飲み込んでもらいま〜す!!」
「はぁ!?ふ、ふざけーーーーー」

怒った磔の声は途中で途絶え、入り口から溢れ出したスライム状の何かに全員飲み込まれてしまった。スライム状の何かはそのまま入り口に戻り、何事もなかったようにまた淡く不気味に輝く入り口に戻ったのであった。





△▼△






「ーーーーんなよ!?ある...ま......ってあれ?」
「ここどこー?」
「何もな〜い!」

突然の出来事に戸惑う者達。そんな彼らに向けアルマは両手を大きく広げ、ここの景色を背に高らかに歓迎の意を示す。

「ようこそ!!魔界へ!」
「こ、ここが...?」
「魔界....」

皆が一斉に魔界の景色を見ると全員一致で魔界の感想を述べた。

『何もない...』
「前にも言われたが...お前らは魔界に何を求めてるんだ」
「もうちょっとなんかあるだろ」
「俺に言うなよ。初代魔王に言え」
「......と、言うお前は何代目なんだ?」

その質問に数分深く考えるアルマは指を折る仕草をし、さらに頭をひねる動きをしたと思えば思い出したように手をぽんと叩いた。

「13代目」
「そんなに少ないもんなの?」
「うるさいな。俺の親父は千年間魔王を務めてたんだぞ?少なくて当然だ」

千年間という単語にその場にいた者達は皆固まった。
不思議そうに首をひねるアルマに想起は確かめるために聞いた。

「せ、千年間って...王位が変わることなくずっとってことか...?」
「そうだよ?何かおかしいか?」
「おかしいとかじゃなく...よくそんなに続けれたね。僕は下克上とか頻繁に起きてるイメージがあったんだけど」

魔晴の想像にアルマは若干引いた様子で答えた。

「何それ物騒...俺の親父は非殺生主義でよ。戦いは好まない。喧嘩でさえもな」
「魔王なのに〜?」
「変な魔王〜!」
「あのね?君らの思ってる魔王って何?」
『傍若無人』
「あーうん...それでいいよ......」

フォローのしようがないほどに魔王という存在への認知が偏っていることを知ったアルマはもう弁解することをやめた。
どこか疲れた様子で先頭を歩く彼の後姿に磔は疑問を抱いていた。

「あいつも魔王なんだよな」
「そう言ってたな...」
「魔王ってのは変人が多いんじゃないか?」
「それ言ったら殺されますよ」
「大丈夫だって!聞こえてなーーーーー」

バタンッ!と磔は地面に倒れ伏した。
全員が何が起こったのかわからずアルマの方を見ると磔に指を向けていた。
彼の能力をちゃんと知らない魔晴は戸惑っていた。

「こ、殺したのか!?」
「そんな物騒なことしてたまるか。感情を弄っただけだ」
「感情を操れるのか...?」
「操るというより弄ぶっていう方があってる」
「弄ぶ...?」

深く考えるな、と言いアルマは自分の城へと進んで行った。
とりあえず、彼の能力を詳しく知ることができぬまま廃人になった磔を連れて魔晴達は後をついて行った。




△▼△





先ほどからずっとアルマ達を空間の狭間から覗く厭らしく笑っている男、終始終作。
自分の思い通りに動いてくれたアルマに笑いが止まらないようだ。その側でドン引きしているパルスィはある事を聞いた。

「なんでこっちの世界にきたの?」
「アヒャヒャ...ひゃ?ん〜暇つぶしだ!」
「死ね」
「ストレート!?」

ただ終作でも一つだけ思い通りにいかないことがあるようだ。それは自分と同じ世界の住人である訛の存在である。先ほどから彼は自分勝手に行動しており、今は行方を眩ましていた。
少々心配ではあったが計画に狂いはないようで気にせずにアルマ達の行動をまた覗くのであった。




△▼△




終作が覗いているともつゆ知らずアルマ達は魔王の城へ到着していた。
ただ、城主であるアルマはある違和感を感じていた。
それに気づいた想起は首を傾げる。

「どうかしたか...?」
「いや......俺の城...こんなにデカかったかと思ってな」
「例えそうだとしても俺は原型を知らないからなんとも言えないな...」
「...気のせいか?」

一人悩むアルマを置いて全員が城に入ろうと城門に近づくと城のてっぺんから何かが飛び降りた。
それはすごいスピードで落下し、彼らと城門の間に割り込むように地面に激突した。衝撃で粉塵が舞い落下物はよく見えないが動いていた。
落下してきたものは人のような姿をしているが一本のツノが生え、かなりの巨漢であった。
敵と判断し全員が臨戦態勢に入るが、粉塵が晴れ落下してものの姿が見えるとアルマは臨戦態勢を解き笑いながら近づいた。

「アトラスじゃねえか!なんだよ!また飛び降りやがって!敵かと思ったじゃないか!」

落下してきた者はアルマの家臣であるアトラスと呼ばれる巨人にも匹敵する巨体の持ち主だった。
だが、どこか様子がおかしい。

「アルマか...?逃げ...ろ...!」
「は?何言ってーーーーーーっ!?」

ブォン!
アトラスが持っていた棍棒をアルマに向けて振るった。
すんでのところで躱すがその巨漢から放たれる力は凄まじく棍棒を振るった衝撃でソニックブームが発生し、アルマを吹き飛ばした。

「うぉ!?あ、あぶねえな!急に何すんだ!」
「アルマ!そいつはたぶん操られてる!」
「なんだと?」
「僕もそう思う。彼から変な魔力を感じるんだ」

アルマもアトラスの感情の形を見つめると何かに抗うように感情が牙を向いていた。

「終作の野郎か!?」
「可能性もなくはないが...奴の刺客かもな...」
「クッソ...!腹たつことしかしねえなぁ!!」
「ある...ま...!はなれ...ろ...!!」

主君を傷つけないために自分を縛る何かと戦うアトラスをアルマは悔しそうに見つめた。
それでもアトラスの攻撃は止まることはない。力一杯に棍棒はアルマめがけて振り下ろされた。
止めようにも家臣を傷つけたくない彼はどうすることもできなかった。
ただ、彼以外にとっては別の話だ。
空間が一瞬歪み、アトラスの動きが鈍くなっていた。
何かしたであろう人物にアルマは視線を向けた。

「悪い...こうでもしないと止まってくれそうになくてな...」
「想起...」
「ただ...なんだこいつの力は...!!」
「こいつが本気出せば星一つは割れる力持ってるぜ?」
「ほう...面白い...!!」

歪んでいた空間が戻ると想起は自分の腰に携えていた武器を手に取りアトラスの振り下ろされた棍棒をはじき返した。

「すご〜い!」
「あたし達もやる〜!」

アリュレルトとレフィーは面白そうに自分達の武器を取り出そうとするがアルマに止められた。

「お前らがやるとアトラスどころか魔界が滅びかねない。今回はあのお兄ちゃんに譲ってあげな?」
「ぶ〜...」
「わかった〜...」

つまんなそうに武器をしまい、渋々と了承する二人にアルマは優しく頭を撫でると二人は少しくすぐったそうに笑った。

「さてと...想起。やってもいいが...」
「わかってる...手加減はするつもりだ...」

想起はニッと笑い、今も苦しそうに何かに抗うアトラスと向かい合った。

「さぁ...やろうか...」


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