東方魔人黙示録外伝〜東方大罪録〜

怠惰のあるま

修羅の男と無口な男


妖怪の山奥深く...小さな屋敷にアルマ達三人は運ばれていた。
運んできた少年は疲れたようにため息をし、畳の上に寝っ転がる。それを癒すように膝枕をしてあげるピンク髪の少女が話しかける。

「お疲れ様。まったくこの魔王は橋姫の事になるとすぐキレるな」
「華扇もすぐキレる方だよ?」
「う、うるさい!私は口が悪いだけだ!」

少し口が悪いこの少女は茨木華扇。妖怪の山奥に住む仙人である。

「まあ、自分はそんな華扇も好き」
「......」
「ひらい!無言でつねないでよ!」
「正直に言うあんたが悪い!!」
「うるせぇぇなぁ.....!」

ムクッと布団から起き上がるアルマはキョロキョロと周りを見て不思議そうな顔をしている。

「あれ...?ここは」
「おはようございます。アルマさん」
「仙我と華扇じゃねえか!...なんでいるの?」

あははは......と笑う少年の名は修羅仙我。青い右目と金色の左目が特徴的なオッドアイの少年だ。
普段はこの屋敷周辺から出ず人里に降りることもそうそうない。

「変な人を見かけて追いかけたら博麗神社で戦ってるアルマさん達がいて」
「止めたと...?」
「はい」
「本当にお前強くなったな...」

もともと仙我は外来人で幻想郷の管理者である八雲紫に突然連れてこられた人間である。しかし、ある能力を持っている。
そのため紫に興味を持たれたというわけだ。来た頃は弾幕勝負にも勝つ事もできず、あの風見幽香にボコボコにされた過去がある。

「まあ能力のおかげですから」
「チートだ」
「あ、あはは...」

修羅仙我。能力は《あらゆる事に適応する程度の能力》
マグマの温度にも耐えれる体に適応。
異常に回復力を上げてどんな攻撃にも耐えれる体に適応。
神だろうと悪魔だろうと対等以上に戦う事ができる強さに適応。
適応できない事はない。仙我はどんな相手だろうと適応し戦う事ができる。

「お前実は人間じゃないだろ」
「失礼な!自分はれっきとした人間ですよ!!」
「う、う〜ん...ここは?」
「あれ?僕は確か...」

仙我の声で起きた二人はキョロキョロと視線を泳がせていた。まだ寝ぼけているようだ。

「あ、起きましたね」
「アルマもあれだけど...この二人も頑丈すぎでしょ」
「異世界からはチート共しか来ないんだよ」
「おい。ここどこだよ」
「今説明する」

俺たちがなぜここに運ばれたのか、三人が気絶した理由、その元凶をバッチリと説明した。
そして、二人の視線は仙我に向けられた。

「こいつも中々のチートだな」
「僕が言うのもなんですがチートですね」
「お前らが言うとチートが安く聞こえる」
「それよりパルスィの事はいいのか?」

磔の言葉でパルスィの事を思い出したアルマのツノから赤い炎が噴き出し、天井を突き破った。

『天井が!?』
「そうだった...終作を廃人にしねえと...」
「で、でもどこにいるかなんて...」

皆がアルマを宥めていると玄関を開け放つ音が聞こえた。
華扇が様子を見に行くと彼女のガミガミ声が響いた。だが次の瞬間、爆音が鳴り響いた。
どう考えても異変を感じた四人は華扇の元に向かうと、玄関だった場所は消し飛び苦しんでいる華扇と見知らぬ男が立っていた。


「華扇!」
「まさか...また終作か......?」
「お前がアルマか...?悪いがお前を倒させてもらう...」

目の前にいる終作の刺客らしき男は腰に下げていた剣を抜き、戦闘態勢に入った。だが、一歩も前に進めなかった。右肩を何者かに掴まれ動けないのだ。
その何者かはーーーーー。

「おい...?」

修羅仙我だった。

「いつの間に...!?」
「お前...華扇を傷つけたな?」
「いや....あれは...」
「ゴチャゴチャウルセエ!どっちみち《俺》にぶっ飛ばされる事に変わりはないんだよ!!」

先ほどとは口調も魔力の質も一人称も変わっていた。
まるで誰かの性格を真似しているようだった。キレ方も口調も一人称も魔力の質。全てが同じになっていた。

「あいつ俺に適応したな」
「適応って...いうか丸っきりお前じゃないか!?」
「いや...あいつは適応してるだけで真似してるわけじゃない。相手と同等の力に適応しているだけだ」
「それって僕や磔さんに適応したら...」
「お前らと互角以上に戦うだろうな」

二人は仙我の力を恐れた。
もしも、自分らよりも強い存在に適応したら絶対に勝てないのでは?そう思っていた。
だが、魔晴はある事に気づく。それは仙我自身の体だ。

「仮にも人間の彼に君の力は耐えれるのかい?」
「まあうん...あいつも一応人間だ。体力がもたん」
「が、それでもあいつには体力があって無いようなもんさ」

クエッションマークが出ている二人にアルマは面倒くさそうに説明する。

「適応つったろ?体力が即回復する体に適応すればいいだろ」

それは弱点無いのでは?と心の中でツッコミを入れる二人であった。





△▼△





所変わって、次元の狭間。
いつもの余裕の笑みは消えて自分の思い通りにいかないことに終作は苛立っていた。
その原因は修羅仙我である。華扇を傷つければアルマが怒り、自分の送った刺客を蹴散らすと思っていた。しかし、怒ったのは見知らぬただの人間。
人間とは言えあれ程までの力を有していることを想定していなかった。

「なんなんだあのガキ....!俺の計画をぶっ壊しやがって....!」

イライラと貧乏ゆすりをする終作を訛は珍しいものを見る目で見ていた。
終作はどこの世界でも有名なトリックスター。迷惑製作機。すべての嫌がらせの元凶。などなど...いい名前で呼ばれることは無い。
その男がイラついているのだ。訛が珍しがるのも無理は無い。

「クッソ!これじゃあアルマのイラつく顔が見れねえ...!」
「なんか...アルマのストーカーみたいやな....」
「うるせえ!!こうなったら....あの二人呼ぶか...?そうだ...そうしよう!」

だが、やはりトリックスター。立ち直りも早い。
そんな終作を見ていた訛は呆れながらどこかへと歩いて行った。





△▼△





その頃、仙我はと言うと...

「一応...名前を言え」
「想起だ...別の世界で鍛冶職人をしている...」
「修羅仙我だ。さぁ...ぶっ飛ばす...」
「まず話をーーーーー」
「興味無い!!」

聞く耳持たない仙我に仕方なく想起は武器を構えた。その武器は幻夢剣。刃は銀色で、若干薄いその刀は幻を生み出すことができる。

「はぁ...重くなれ...」

その一言で周りの空間に異変が起こる。重力が強くなったのだ。
突然の重力変化に対応できず仙我は膝を付く。

「お...っも!」
「悪いがそのままでいてもらう...弾幕 大魔導弾...!」

想起の右手に巨大な弾幕が現れ、仙我に向け放たれた。その速さは容易に光を超える。
重力のせいで動けずにいた仙我は避けることも叶わず抵抗無く弾幕に直撃した。弾幕は直撃しても残り、そのまま巨大なブラックホールとなって周りの全てを引きずっていた。
磔と魔晴は弾幕を壊そうと構えるがアルマに制しされる。

「待てよ。終わってないぞ」
「いやどう見たって!」
「もう忘れたか?あいつの能力はーーーー」

想起は目の前の光景に驚いていた。
ブラックホールの中からゆっくりと出てくる人影に。
強力な重力空間で平然と歩く姿に。
倒したはずの人間が無傷で歩いている姿に。

「適応したよ」
「適応...だと!?」
「《俺》は何にでも適応できる。あんたの能力がどれだけチートでもな」
「そんなことがあるわけ無いだろう...!真空よ...訪れろ...!」

瞬間、周りの音が消えた。
真空空間となったここは音が全て消えた。故に空気は無い。それは何を意味するか。
呼吸ができないということだ。

「かっ...!あ...!!」

大切な空気がなくなり呼吸もできずに苦しむ仙我は首を抑えパクパクと空気を求めるように口を動かしていた。
目からは血も流れ目に見えて苦しんでいる。それを申し訳なさそうにそうきは見つめる。

「苦しいか...?悪いな...お前には気絶してもらうーーー」
「あ〜...苦しかった」

苦しんでいたのが演技だったように平然と立っている彼は一言そう言った。

「ば、バカな!?」
「適応完了。次は猛毒でも出す?」
「ぐっ...!幻斬 幻界節!」

幻夢剣に白銀のオーラが纏い、余裕の表情の仙我を斬り裂いた。斬撃にも適応していた仙我だったが自身の体の異変に気付く。
体が徐々に消えているのだ。まるで存在が消えていくように。

「なにをした?」
「今の技は斬りつけた相手を幻にする...」
「ふ〜ん...」
「落ち着いてるな...」
「だって適応したし?」
「はぁ...降参だ...勝てるわけがない...」

幻夢剣を地面に置き、両手を上げて降参の意思を示す想起だった。
が!それで終わるほど仙我の怒りは小さくなかった。

「何言ってるんだ?お前はぶちのめすつったろ?」
「...はい?」
「さぁ...答えろ...生と死の間で嬲られるか...苦しんで死ぬか...」
「どっちもやだぞ...!?」

地面から大量に出現する武器を突きつけ仙我はニヤリと笑う。

「そうかそうか...嬲られたいか....」
「聞く耳持たない!?」
「ふひひ...ひひひヒヒ!!!」

完全に眼がイカれた仙我は想起に飛びかかる。その手前でパチンと音が鳴り仙我はバタン!と地面に落ちた。
まるで感情を抜き取られたように倒れていた。

「寝てろ。話ができん」
「た、助かった...」
「想起だっけか。終作に雇われたのか?」
「よかった...話が通じる...その通りだ。終作という男に言われてな...」

あの迷惑装置が...そう呟きツノの炎がより一層燃え上がる。

「それで華扇を爆破した理由は?」
「あれは終作がやった...」
「はぁぁ!?」






△▼△






数分前...
華扇が玄関のお客を見に行くと立っていたのは想起とその横に厭らしく笑う終作だった。

「どうも〜!終作で〜す!」
「あんたが終作か。それで?何用かしら?」
「いや〜ね?ここにアルマがいるらしいじゃん。さらに怒ってもらうために......爆破しにきました!」
「........はい?」
「はい。ドーン!!」

パチンと指が鳴ると華扇の目の前の空間が割れ、爆発した。
終作は笑顔でその場から消え去り想起を残していった。





△▼△ 





「というわけだ...」
「なんというかトリックスターだな本当に...それで終作がどこにいるかわかるか?」
「場所はわからんが魔界がどうたら言ってたな...」
「あの野郎...今度は何する気だ?」

このあと、魔界で大きな出来事に巻き込まれるのだがこの時のアルマはまだ知る由もない。


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