とある御人の日常譚

唐@皇

 一頻り精霊間の挨拶が終わり、生まれたばかりの彼らが互いに縋り付き合い生みの親であるクラウドにめり込まんとする勢いでしがみついていた最初の頃と比べて周りの状況に慣れてくると、赤と黄は親元から離れ他の精霊たちと目の届く距離で遊び始め、青は未だ不安げにしがみついてくる紫を気にしながらも精霊たちの話を楽し気に聞きながら、緑と桃はそれぞれ別々に精霊たちと戯れており、4体ともクラウドから付かず離れずの位置を保っている。

 紫においてはどこかに行きそうになる青を引っ張り常に親たるクラウドの服にすぐに手が届く距離を懸命に維持し続けている。
 元から警戒心が強いのだろう。《精霊知識》を既に得ている以上、精霊というものがどういう存在であるかはそれこそ生まれた瞬間から知っているのだから、この様子はそう思い至ることに時間はかからなかった。

 そうして我が子たちが交流を楽しんでいるうちに、クラウドは精霊たちにまだ幼い我が子たちの面倒を少しだけ任せ、自身の状況整理に移った。
 現在のクラウドのステータスはこのようになっている。


クラウド 神人Lv.35
職業≪精霊術士Lv.25(13↑)≫ サブ職業≪――――≫
HP 5700/8550
MP  1310/16012(.5)
攻撃 2850
防御 3000
精神 6600
知力 6795
器用 4905
敏捷 4530
運気 ∞〈カンスト〉
ステータスポイント のこり265
スキルポイント のこり6105
所持金 10,462,000エン
スキル
種族スキル
《神眼Lv.6(2↑)》《変幻自在Lv.4》
通常スキル
《精霊術Lv.10(5↑)》
《杖術Lv.1》《棒術Lv.1》《体術Lv.1》《蹴りLv.1》
《火魔法Lv.1》《水魔法Lv.1》《風魔法Lv.1》《土魔法Lv.1》
《光魔法Lv.1》《闇魔法Lv.1》《召喚魔法Lv.1》《付加魔法Lv.5》
《呪魔法Lv.5》《生活魔法Lv.1》《念動魔法Lv.1》
《鍛冶Lv.1》《裁縫Lv.1》《彫金Lv.1》《調薬Lv.1》《皮革加工Lv.1》
《宝飾Lv.1》《木工Lv.1》《料理Lv.1》《錬金術Lv.16(15↑)》
《採取Lv.1》《採掘Lv.1》《解体Lv.1》《平衡Lv.6(3↑)》《跳躍Lv.1》
《走行Lv.3(2↑)》《持久Lv.3》《HP自動回復Lv.1》
《MP自動回復Lv.8(4↑)》《HP上昇Lv.1》《MP上昇Lv.6(3↑)》
《知力上昇Lv.5(4↑)》《MP消費削減Lv.6(2↑)》《魔法才能Lv.5(2↑)》
《魔力操作Lv.5(4↑)》《魔力感知Lv.8(3↑)》《気配感知Lv.4》
《気配遮断Lv.3》《隠蔽Lv.6(2↑)》
《健康Lv.1》《声Lv.1》《テイムLv.1》《魔法陣Lv.1》《占いLv.1》
《散歩Lv.4》《釣りLv.1》《読書Lv.1》《筆記Lv.1》
《マッピングLv.4》
《精霊言語Lv.10★》
称号スキル
《神気Lv.5(1↑)》《超直感Lv.8(3↑)》《超運》《次元の門》《神格召喚》
《多才》《危機回避Lv.3(2↑)》《不殺の心得》《サポートの心得》
《精霊知識》《精霊召喚》《士気向上》《神聖魔法Lv.1》《慈愛》《祝福》
《父の威厳》
称号 神に見守られし者 最高神の加護 賢者の卵 スキルコレクター
才能に恵まれし者 死を恐れる者 殺さずの心 AIカウンセラー
精霊言語のスペシャリスト 精霊に認められた者 注目の的 創造主の友人
魔力を極めし者 精神を極めし者 知力を極めし者 神々の祝福 精霊の父 
精霊たちの祝福 

使役精霊
ロッソ(火の最上位精霊:幼体)
アッズーロ(水の最上位精霊:幼体)
ヴェルデ(風の最上位精霊:幼体)
ヴァイオレット(闇の最上位精霊:幼体)
ジャッロ(光の最上位精霊:幼体)
ローザ(土の最上位精霊〈特殊個体〉:幼体)
※幼体の精霊種はサポート以外の戦闘行動ができません。


 ついにMPが一万を超え、達成記念らしき称号が増えた。
 ついにというか時間的にはあっという間にが正しいのだが、初日の出来事にしては内容が濃すぎて感覚的にはついにの気分である。
 他にも称号が増え、スキルも獲得している。
 中でもMPの次に目がいくのは一番下に新しく追加された使役精霊の項目だろう。

 どうやら、召喚系スキルや使役系の《テイム》などで仲間や傘下に入れたMOBなどが表示されるらしい。
 並び順はおそらく使役精霊になった順で間違いないだろう。生まれた瞬間から使役状態になるのなら理にかなっている。
 《精霊知識》や例の育成本曰く、まだ幼体という生まれたばかりの状態なため、まともに戦闘に参加できるようになるにはレベルを上げて成長を促し、幼体から脱する必要があるらしい。
 レベル上げについてはまだまだ先の予定なので追々考えるとして、まずは状況整理である。

 精霊術士のレベルが上がっているのは、まず間違いなく精霊を生み出した先程の出来事が原因だろう。

 運営側の予想していた大まかな精霊術士のルートは、細部に違いはあれどまずはベータ時代に行けなかった中央図書館、あるいは冒険者ギルドでギルド関係者に聞くなどして精霊術士についての情報を集め、ギルドから精霊が見えるアイテムを貸りるかして精霊を認知。
 そこから自身の使役する精霊を選び、精霊契約を経て初めて駆け出しの精霊術士となれるように調節されているのである。

 MMOにあった最初のキャラクター選択での、中級者向けあるいは上級者向けに位置するこの職業は初期職ながらに初めから成立したものではなく、精霊という別個体がいてこその成立となっている。

 それがどういう因果の巡り合わせかぶっ飛んだ称号持ちが偶然この職業に興味を持ってしまったが故のこの状況。
 予想して、そういうルートにある程度調整していたというのにそれら全てをすっ飛ばして精霊契約どころか精霊の生成に挑戦するというある意味暴挙に運営一同が卒倒しかけ現実逃避したのはまた別の話である。

 そもそも精霊言語でさえもカンストさせるのに時間がかかるうえ、例え偶然初期に生成方法を得たとしても成功率とMP、それから精霊用の素材の問題で一度詰む。
 とくに精霊石は数が少なく自然から採れるものほど貴重で高価な物であり、作れるとしてもどこかの集落の特殊な伝統技術で生み出される的な立ち位置のため入手が困難なのである。
 それが、相当レベルを上げ成功率を上げる運気と、精霊素材の収集資金力、魔力をある程度操れるほどの精神、それから一番重要なものに入るMPをかなり上げた熟練者しか試せないであろう精霊生成がまさか初日に、しかも最上位に位置する精霊種の生成に複数(それも一度に六体という頭がおかしいレベル)成功するなど誰が思っただろうか。
 そりゃあレベルも13も上がるもんである。

 それに続くようにいくつかのスキルのレベルも上がっており、予想に反したスキルも上がっている。

 あの事象も、思い返せば確かに『魔力とその他の材料を相応の精霊と等価交換した』と見ることもできるので、錬金したと言ってもなんらおかしくはない。《錬金術》に経験値が入ったことは、上手くシステムを使ったといえるだろう。・・・本人にそんな自覚があるかは置いておいて。

 そして少し走っただけで《平衡》と《走行》のレベルが上がったことには称号凄いというべきか、それとも最初だから上がりやすいのかなと思うべきなのか少々悩んだクラウドだった。違う、そうじゃない。


魔力を極めし者
 自身の保有魔力(MP)を一万にした記念の称号。
称号効果:魔力(MP)に関することに大幅なプラス補正が付く。


 この効果は、つまり魔力の多さ・・・MP量で展開が変わるイベントだとか、さっきの精霊生成のときなどに効果が発揮されるということだろうか。
 MPに目がいきがちだったが、これと同じようなものがあと二つあった。


精神を極めし者
 自身の精神を五千にした記念の称号。
称号効果:精神に関することに大幅なプラス補正が付く。

知力を極めし者
 自身の知力を五千にした記念の称号。
称号効果:知力に関することに大幅なプラス補正が付く。


 どうやら、この類いは具体的な上昇値は表示されないらしい。
 その時々によって変化するのだろう。
 MPが一万で精神と知力が五千ということは、HPはMPと同じ値でその他のステータスは五千が一応の目標地点なのだろうとクラウドは思った。

 ちなみに、この数値の達成地点はHP・MPは最初の目標は千で、そこから五千、一万という過程が存在する。
 これが他の攻撃や防御のステータスだと最初は百、次に五百、千、五千となっている。
 称号もその度に上書きされ、最初は【○○の探求者】から【○○の追求者】、【○○のスペシャリスト】ときて【○○を極めし者】になる。
 MPとHPはこの場合、追求者が存在しない。

 このゲームのシステムは同時に同じような称号を手に入れると、効果が高い方に低い方が上書きされたうえで表示されるため、悲しいかな彼の想像は半分当たっているが半分は外れている。
 そしてここには彼の考えを正す存在がいないため、その称号が本当に極めた者しか到達できないものであると彼は知らない。

 さて、そうなると残りのステータスにも当然達成した証の称号があるはずなのだが、どういうわけか称号の欄にそれらしきものは見当たらない。
 オンラインゲームによくある運営の宿敵、不具合バグである。
 サービス開始から運がいいのか悪いのか、クラウドはそれに気づかず、結局この不具合が運営側に伝わるのはプレイヤーたちのレベルが育ち始める頃という、もう少し先の話になるのであった。


神々の祝福
 神々が見守るなかで何かを成し遂げ、神々に祝福の心をもたらした者の称号。
称号効果:全ステータス1.5倍(端数表示)・称号アイテム『神々からの祝い品』を獲得・称号スキル《神聖魔法》《慈愛》《祝福》を獲得。
※最高神の加護があるため、総合倍率は3.5倍になります。


 ここにもステータスの倍率が。
 どうりでレベルの上昇率に違和感を覚えるはずだとクラウドは納得した。
 違和感どころの話ではないのだが、残念ながら彼は既にこの数値に慣れてしまっていた。


精霊の父
 精霊を複数体、一人で生み出した者の称号。
称号効果:使役精霊または周囲の精霊のステータス二倍・使役精霊または精霊が半径10メートル以内にいる場合に限り、範囲内の精霊へのダメージが大幅減少・称号スキル《父の威厳》を獲得。

精霊の祝福
 精霊の目の前で何かを成し遂げ、精霊に祝福された者の称号。
称号効果:使役精霊以外の精霊からサポートを受けやすくなる(サポートの度合いは対象からの信頼度依存)。


 称号も新たにいくつか得られており、そのどれもが精霊の複数生成の成功の副次効果なため効果が破格である。
 精霊の父については、現在の性別が男の姿なため父となっているようで、これが女性の場合は母になるらしい。
 付属していたスキルの《父の威厳》もそれは同じなようだ。


《神聖魔法》アクティブ
 神より伝わりし神聖なる魔法。あらゆる回復・結界の魔法が使える。
 類稀なせい属性の魔力を使うため、同じ適性属性の者に発現しやすい。
初期魔法
「ヒール」使用MP5
基本回復量が高く、レベルが上がると回復量も増える。
「バリア」使用MP15~
相手の攻撃がこの魔法に接触したとき、被ダメージを一切カットできる。一方向にだけ張れるのがデフォルトだが、MPを追加することで全面バリアや効果時間延長などいろいろと応用が利く。


 わかりやすく言うなら、回復・サポート特化の魔法といったところであろうか。
 ヒーラー職にとってはこれ以上ない魔法だが、称号スキルの枠に入っているとなると入手は難しそうである。
 初期に覚える二つの魔法もなかなかに強力で、回復が追いつかない中盤以降はこれを持ったプレイヤーは引っ張りだこになること必至であろう。


《慈愛》アクティブ
 このスキルを発動した状態で対象を定めると対象が慈愛対象になり、発動していない間も自身が解除しない限りこの状態は消えない。
「肩代わり」
 慈愛対象が致死のダメージを受けた時、自動的にダメージを肩代わりし慈愛対象の受けたダメージを無効化する。
 このとき、肩代わりしたダメージを自身の防御が下回っていた場合、ダメージから防御を引いた合計分のダメージを受ける。
 逆に上回っていた場合、そのダメージを一切無効化できる。
「燐憫たる慈悲」
 慈愛対象のHPがレッドゾーン(大体残り1割あたり)に入ったとき、任意で自身のHPの何割かを指定し慈愛対象に分け与えて回復させることができる。
 追加効果として、慈愛対象のHP・MP両方の自然回復速度が大幅に上昇し、ステータスを1.5倍にする。

《祝福》アクティブ
 このスキルを発動した状態で対象を定めると対象が祝福対象になり、発動していない間も自身が解除しない限りこの状態は消えない。
 祝福対象は祝福されている間、様々なプラス効果を得ることができるが、祝福の種類にはそれぞれ条件を満たさなければ発現されず、発現していない祝福を祝福対象に与えることはできない。
「神人の祝福」
 神人種族限定の祝福。このスキルを持つ種族が神人であったときのみに発現する祝福。
 この祝福を与えられた場合、あらゆるスキルの成長が早くなり、新しいスキルが発現しやすくなる。
「六属性の祝福」
 基本属性の六つの魔法スキルを得ていた場合にのみ発現する祝福。
 この祝福をいずれか、または複数与えられた場合、各属性の力を強め適性属性に変える。
 一つの場合は「火の祝福」、複数の場合は「二属性の祝福(火・水)」などに変わる。
「神の祝福」
 自身の称号に神に関した称号を得ていた場合にのみ発現する祝福。
 この祝福を与えられた場合、一日のうち一度だけステータスを15分間2倍または30分1.5倍にする。
 日付をまたぐと使用可能になる。
「精霊の祝福」
 自身の称号に精霊に関した称号を得ていた場合にのみ発現する祝福。
 この祝福を与えられた場合、精霊の存在を僅かながらに視認することができ、精霊にあらゆる行動のサポートを行ってもらえることができる。
 サポートの度合いは信頼度依存なため、接し方を間違えると例え祝福があっても一切手を貸してもらえないので注意が必要。

《父の威厳》アクティブ
 新たなる命を育て、守るのが親の宿命である。子を守る親は何者にも勝るという。
 自身の子であると認識したものを保護対象にする。
 スキル発動時、任意で対象に《威圧》をかける。
「攻めの型」
 子が一人でも自身の認知圏内にいる場合、自身のMP・攻撃・知力に認知圏内の子の数だけ倍にし、且つ認知圏内の子にそれぞれ自身の全体合計値の半分のステータス分を付与する。
「守りの型」
 子が一人でも自身の認知圏内にいる場合、自身のHP・防御・精神に認知圏内の子の数だけ倍にし、且つ認知圏内の子にそれぞれ自身の全体合計値の半分のステータス分を付与する。
 追加効果として守りの型発動時、任意で自身の敏捷を半分にして自身と認知圏内の子のHP・MPの自動回復速度を大幅に上昇させる。※追加効果は個別に解除可能。
 解除すると解除前(元)のステータスに戻る。


 《慈愛》と《祝福》の違いは効果と発動の種類だろう。

 《慈愛》は主に回復で、自動回復、または任意でHPやMPを譲渡する。
 慈愛対象が危機に瀕したときは状況がメッセージで送られてくるため、窮地に駆けつけやすい。
 そのことから、このスキルは特に仲の良い者を対象にするのが主な使用方法だろう。

 《祝福》は中身の祝福の種類が多く、授与者は自由に付け替えることが可能。
 そのどれもがサポート系のもので、日常的にあると便利なものが多い。
 そして祝福対象と授与者が離れていてもサポートが目的のスキルのため、祝福対象が危機に瀕しても《慈愛》のように状況のメッセージは送られてこない。
 仲が良かろうがそうでなかろうが与えた祝福以上の恩恵は授与者からは受けられないのがこのスキルの特徴であろうか。
 そのため、このスキルの対象者は不特定多数になる。
 どの人間あるいは使役MOBなどに、どんな効果を祝福するのか授与者側の技量が問われるスキルである。

 《慈愛》と《祝福》は同時に同じ対象に発動可能で、対象の称号の数×5で慈愛または祝福を享けられる枠が一つ増える。
 枠は共通で、二つ空きがあるなら慈愛と祝福一つ。あるいは祝福のみで枠を埋める。
 全部埋めなければいけないということはないので、そこは二つのスキル所持者の采配しだいである。
 そしてこの二つとも、授与者の意思一つで対象に授与したどちらもの効果を取り消すことができるのでその辺りの考慮もしなければならない。

 なかなかに考えさせられる二つだが、状況に合わせて付与すれば効果は絶大なものとなるだろう。

 最後のスキルも含め、どれも子供を守るためにあるようなスキルで、まるで『ちゃんとしっかり育てろよ』と言われているかのようなスキルたちである。
 正直これらのスキルはクラウドはありがたく思った。
 ゲームだとはいえ、せっかく自身の力で生まれた六つの命である。
 溺愛はする気はないが、むやみやたらに怒鳴り散らす性格でもない優しい父親としての経験者として、神に言われずとも彼らを立派に育てるつもりだ。

 そうして、この世界で共に同じ景色を観れることを夢に見て、クラウドはそっと瞼を閉じて思いをはせた。
 この世界はゲームなようでいてゲームらしくない。

 例えばNPCの一人一人に備えられているAIだとか、五感で感じる感覚だとか、実在しないあやふやな存在をこうしてデータ的な違和感もなく認知できたりだとか。

 かといえば、メニューがあってステータスも存在していて、オンラインゲームそのままの機能もあって、ログアウトも当然できる。

 現実のようで、現実ではないこの世界。
 正直、気持ちの落としどころがあやふやになりそうで、逆にそれが気持ちを高ぶらせる。
 楽しみたいという感情が溢れてくるのである。

 彼はVR初心者で、だからこそVRの可能性をどこまでも試したくなる。
 『ここまでリアルなのだから、いけない場所はないかもしれない』『できないことはないかもしれない』『きっと、現実では見られないものがたくさんある』
 どこまでも、実践してみたくなるのである。

 だって楽しいのだ。
 今、この状況が、楽しくて仕方がないのだ。
 ワクワクとした感情が胸の内で広がって、抑えるのが大変なくらいに。
 おそらく自分の顔は相当に緩んでいるのだろうとクラウド自身が自覚しているほどに。

 クラウドはどうにかこうにか気持ちを静めて、我が子たちの様子を眺めた。
 神眼のレベルが上がり、薄っすらと周囲の精霊たちの姿が綿毛から変わってきていることに気づきながら、しばしの間この緩やかな時間を堪能しつつまた新しく貰った神々からの祝い品という名のプレゼントボックスを開いた。

 中には数々の生産用の道具・・・神具ともいえるようなものが入っていた。
 マイホームのことについて想定していたのだろうか、様々な苗木と植物の種、肥料などもある。
 どうやら神々は自給自足をしろとのお達しらしい。ご丁寧に農具セットまで揃っている。


(これは、後でそのマイホームとやらに一度行っておかないとなぁ)


 クラウドはまだ見ぬこの世界の『自宅』の姿を思い描くが、イメージがあまり湧かない。
 ファンタジー然とした物理法則を無視した曲がったような家なのか、はたまた日本式の木造建築なのか、一見普通の家だが建っている場所が想像を絶する場所なのか・・・。

 なんにしても、神と名の付く庭のオプションが付いているのだからどんなに平凡な見た目でもいろいろと台無しなのだが。

 クラウドは祝い品をしまい、この後の予定を考える。


(今後のログイン・ログアウトのこともあるからマイホームに行くのは確定。農具があるから、農業じみたこともできるし時間はなるべく取りたいなあ。この農具、専用のスキルがなくても使えるらしいけど、取った方が後々効率良いだろうしそれ関係のスキル探さないと。あとは町の中と周辺の地理の把握かな?散歩もしたいし、その間に付加魔法と呪魔法のセットを自分にかけ続けてれば移動時間の無駄にはならないよね。ついでに簡単な地図とか描いたりして。読書は落ち着いた場所でしたいから図書館かこの場所かマイホームで、かな。あとは、)


 つらつらと案を出していきながら、交流を一通り終わらせた我が子たちの強襲に身を任せる。
 最終的にみんなで遊んだようで、あの紫も含めた全員が団子状になってきゃあきゃあとじゃれ合って遊んでいた。

 どういうわけか魔力体のはずなのに少し衝撃がきたものの、ステータスの差でそれ以上の被害は出ずに終わる。
 これが普通の一般人なら事故死必至である。
 未だ興奮冷めやらぬ我が子たちの拙い精霊語にクラウドは相槌を打ちながら聞いていく。


「ん・・・もういいの?」
いいー!  いーの!
あんねーみんなぎゅーしたの  ぎゅーしたんだよ!
「お団子になってたね。おしくらまんじゅうかな?」
おだんご!  おだんごなったよ!
びゅんってしてねどーんって!  いっぱいしたー!
「そっかそっか」


 しがみつく我が子たち一人一人の発言を聞き漏らさず、均等に返せば嬉しそうに身体に纏う属性のオーラをちかちかと光らせ、懸命に言葉で気持ちを伝えてくる。
 その姿にほっこりと頬を緩ませながら、クラウドは彼らの言葉を脳みそフル回転で解読しながら聞いていく。


だからねあんね  おとーさもいれるからね!
たのしかったの!  たのしいからおとーさもおだんご!
「おや、父さんも入れてくれるのかい?」
ぎゅーってねやるの  おとーさもやろー!
やるのー!  おだんごー!
「ふふ」


 ぎゅうぎゅうとめり込まんとする勢いで抱きついてくる彼らを親たるクラウドは両腕で包むように抱きしめれば、彼らはきゃあきゃあと腕の中で楽しそうにはしゃいだ。
 それにつられてクラウドもクスクスと笑い、周囲の精霊たちも彼らの雰囲気を感じ取って楽しそうに笑う。


(もう少しだけ、こうしていようかな)


 もう少しだけしたら、町を見て回ろう。
 そう決めたクラウドは、可愛い我が子とじゃれ合いながら掲示板を開いた。

 簡易日記を作るのも面白いと思ったからである。
 掲示板初心者へのわかりやすい説明と親切設計に従って[新しくスレを作る]ボタンを押し、スレのタイトルをなるべく他の既存のタイトルの形に沿うように考えて打ち込む。


(えっと、まずはこのスレッドの説明だよね。それから・・・あ、これ音声入力もあるんだ。すごいなぁ)


 音声入力中やその他の音声を利用する機能を使っている間は自分以外は声が聞こえず、口パク状態になるらしい。
 発言フォームには発した言葉が表示され、改行や送信は手違いが無いよう手動ボタンが添えられているようだ。
 文章の間違いを手直しもできるらしい。
 クラウドは早速音声入力に切り替えてスレッドに『言葉』を打ち込み始めた。

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