異世界から「こんにちは」
エピローグ(一人の自宅)
自宅に帰った時はもう夜のとばりは降りていた。
玄関の鍵を締めたまま二階の窓から異世界に真っすぐ向かったため、やむを得ず二階の施錠していない窓から紺之崎さんの手を借りて中に入った。自宅に帰っただけなのに盗人の気持ちを味わってしまった。
俺を自宅の中に送り届けてくれた紺之崎さんが、窓辺のサッシに手をかけて身体を支えた姿勢で微かに口元を緩ませる。
「また来る、よろしく」
「え、また来る? 何でで……」
俺の質問もほどほどに紺之崎さんは塀の下に降りて、そこで待っていた藤田さんと夜の住宅街を走り去ってしまった。二人とも並みの短距離選手と争えるくらいの韋駄天だった。
しばらく留守にしていたが幸いどの部屋も空き巣の入られた形跡がなく、誘拐犯を追って異世界に駆り出した時のままだった。
暗闇を手探りで進み、壁のスイッチで廊下天井の照明を点けた。真夏だと言うのに薄ら寒かった。
「久しぶりだな、一人の家って」
自分以外の生活の音がないのが、妙に空々しい。
服を替えるついでに、風呂を済ませることにした。自宅ほど寛げる場所は異世界になかった。そのせいか、普段に比べ長風呂になった。
風呂を出てリビングのソファーでだらりと伸び、顔を上げタンス上の時計を見る。
時間は午後九時半過ぎ、もうすっかり夜だ。日付は八月十四日、夏休みも残り二週間ぐらいしかない。
マズいな、宿題に一回も手をつけていない。明日から宿題を終わらせていこう。
そう思ってすぐ、目がショボショボしてきた。
「思ってる以上に疲れてんだな、早いけど今日は寝よう」
のそのそと階段を上がり、自室の踏み入れると脚の力をなくしたようにベットに倒れ込んで俺は眠りについた。
カーテン越しでも強い日射しを浴び次第に目が覚め、俺はゆっくり身体を起こした。
昨晩は真っ暗で気が付かなかったが、部屋に想像しなかった量の埃が舞っていた。
俺は起き出しから咳き込み、適当な着替えを持って夜着のまま下に降りた。
とにかくお腹が空いたのでリビングの冷蔵庫を開く。
「げっ」
俺は一目で呻いた。
冷蔵庫の中はほとんどが生ものでキツイ臭いが漂ってきた。思わず顔を背け鼻をつまむ。
食べ物が傷んでいることを予想できなかった俺も悪いが、これでは空腹を今すぐに満たせない。
だが缶詰という保存のきく一縷の望みを抱いて、酸っぱい臭いの奥を漁った。あいにく、それらしい物は見つからず。
俺は嘆息して、冷蔵庫を閉めた。後で中の物を残らず捨てなくては。
仕方ない、コンビニで何か買おう。
そう思って埃の舞う自室から、財布と傍に置いてあった携帯を持ち着替えを済ませると家を出た。
歩いて数分のコンビニでおにぎりを二つと小ぶりの惣菜パン一つ、それと清涼飲料水のサイダーを買い近くの公園のベンチで戴いた。
空腹を満たした俺は来た道を帰った。
リアンとシャマがいる生活に慣れ過ぎて、一人暮らしの仕方を忘れてしまった。
玄関の鍵を締めたまま二階の窓から異世界に真っすぐ向かったため、やむを得ず二階の施錠していない窓から紺之崎さんの手を借りて中に入った。自宅に帰っただけなのに盗人の気持ちを味わってしまった。
俺を自宅の中に送り届けてくれた紺之崎さんが、窓辺のサッシに手をかけて身体を支えた姿勢で微かに口元を緩ませる。
「また来る、よろしく」
「え、また来る? 何でで……」
俺の質問もほどほどに紺之崎さんは塀の下に降りて、そこで待っていた藤田さんと夜の住宅街を走り去ってしまった。二人とも並みの短距離選手と争えるくらいの韋駄天だった。
しばらく留守にしていたが幸いどの部屋も空き巣の入られた形跡がなく、誘拐犯を追って異世界に駆り出した時のままだった。
暗闇を手探りで進み、壁のスイッチで廊下天井の照明を点けた。真夏だと言うのに薄ら寒かった。
「久しぶりだな、一人の家って」
自分以外の生活の音がないのが、妙に空々しい。
服を替えるついでに、風呂を済ませることにした。自宅ほど寛げる場所は異世界になかった。そのせいか、普段に比べ長風呂になった。
風呂を出てリビングのソファーでだらりと伸び、顔を上げタンス上の時計を見る。
時間は午後九時半過ぎ、もうすっかり夜だ。日付は八月十四日、夏休みも残り二週間ぐらいしかない。
マズいな、宿題に一回も手をつけていない。明日から宿題を終わらせていこう。
そう思ってすぐ、目がショボショボしてきた。
「思ってる以上に疲れてんだな、早いけど今日は寝よう」
のそのそと階段を上がり、自室の踏み入れると脚の力をなくしたようにベットに倒れ込んで俺は眠りについた。
カーテン越しでも強い日射しを浴び次第に目が覚め、俺はゆっくり身体を起こした。
昨晩は真っ暗で気が付かなかったが、部屋に想像しなかった量の埃が舞っていた。
俺は起き出しから咳き込み、適当な着替えを持って夜着のまま下に降りた。
とにかくお腹が空いたのでリビングの冷蔵庫を開く。
「げっ」
俺は一目で呻いた。
冷蔵庫の中はほとんどが生ものでキツイ臭いが漂ってきた。思わず顔を背け鼻をつまむ。
食べ物が傷んでいることを予想できなかった俺も悪いが、これでは空腹を今すぐに満たせない。
だが缶詰という保存のきく一縷の望みを抱いて、酸っぱい臭いの奥を漁った。あいにく、それらしい物は見つからず。
俺は嘆息して、冷蔵庫を閉めた。後で中の物を残らず捨てなくては。
仕方ない、コンビニで何か買おう。
そう思って埃の舞う自室から、財布と傍に置いてあった携帯を持ち着替えを済ませると家を出た。
歩いて数分のコンビニでおにぎりを二つと小ぶりの惣菜パン一つ、それと清涼飲料水のサイダーを買い近くの公園のベンチで戴いた。
空腹を満たした俺は来た道を帰った。
リアンとシャマがいる生活に慣れ過ぎて、一人暮らしの仕方を忘れてしまった。
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