異世界から「こんにちは」

青キング

護衛人と異世界1

 枝葉をかき分けリアンの手を引く紺之崎さんの後を追うと、森の拓けたところに出た。
 そこでは素顔を晒した仮面の男が、目立つものもない地面に片手を当ててしゃがんでいた。
 その後ろで紺之崎さんとリアンが、男が当てている手を見つめていた。

「こんなとこで、何やってるんですか?」
「魔力を探知してくれてる」
「はぁ、魔力ですか。シャマが拐われたことと関係あるんですか?」

 紺之崎さんは頷き、

「異世界への入り口を探してる。多分、シャマちゃんは異世界に拐われた」
「異世界か……」

 俺の脳内に魔女の嫌な高笑いが蘇ってきた。あんな辛い思いは、もうしたくない。

「やはりここで間違いない。リアンだったか、今すぐ魔法使えるか?」
「はい、でも杖がありません」
「それなら問題ない。杖は魔力がムラなく出せるようになるだけの道具だ。指先からでいい、少量で足りるからな」
「わかりました、やってみます」

 気合いを入れた顔をしてリアンは頷いて、仮面の男の傍にしゃがんだ。
 リアンの隣にいた紺之崎さんは、二人の様子を眺めながら俺の横に無表情で立ってゆっくり口を開いた。

「剣志君、心配なのはわかる」
「顔に出てましたか俺?」
「すっごく出てた」

 やっぱりかぁ、俺って隠し事ができないタイプなのかな?
 唐突に横から俺の顔を覗き込んできた。

「異世界に行くのが怖い?」
「夢の中では怖くなかったんですけど、まさか実際に異世界があるなんて。しかもいきなり魔女と来た」

 俺は苦笑いして答えたが、紺之崎さんは疑わしそうに俺を見据えている。

「リアンちゃんに魔女が乗り移ったことが怖かった、そうだよね」
「何でその事知ってるんですか」
「前にリアンちゃんから聞いた」

 微かに笑って紺之崎さんは言った。
 気楽に話せるもんなのか、あの出来事は。

「とりあえず行動、過去を振り返ってる時じゃない」
「そうですね。異世界には知り合いもいますし、協力してもらます」
「よし、これでいいぞ」

 仮面の男が声を出して立ち上がった。
 魔法陣らしき形が地面に光っていた。普通は驚くところなんだけど、異世界とか魔法とかが身近にあると驚かないや、残念だけど。

「ゲートは開いた、全員魔法陣の上にのってくれ」

 俺とリアンと紺之崎さんが、先にのった仮面の男に続いて魔法陣の上にのる。
 魔法陣の光が、天に向かうように真っ直ぐ帯状に伸びていく。
 視界いっぱいが眩しい白色に包まれた。







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