異世界から「こんにちは」
憤慨と決心
ふと意識が戻ってくる。
重い瞼をなんとか開けた。
視界がぼやぼやする、寝起きだからだろう。
目を擦りながら手をついて起き上がる。
擦った手が異様にふさふさしてたのだが?
まぁ気のせいだろう、とカーテンを開けようと手を伸ばす……へ?
カーテンに伸ばした俺の手は、黒毛に覆われていて、関節がない感覚で物も掴めそうにない。
小さくて愛らしい気もするが……何かの手に似てるような?
自分の手を裏返してみる、真ん中には一部だけ色が違いよく目立つぷりぷりしてそうな何かがあった。
どう見ても肉球としか見受けられないのが、これは夢か?
全身にも目を遣る。
全身黒毛に覆われていて……どうやら俺は猫化したようだ。
へぇーこんな夢もあるんだなぁ、と布団に再び潜ろうとする……が掴めない。
布団の繊維に鋭い爪が引っ掛かる。
リアルな夢だな。
薄暗い部屋で暴れたくなる。
どうやら夢の中でも俺は無性に誰かと一手組みたいらしい。
というか現実の俺起床する気ないのか?
こっちの体の方が妙に現実感があるというか物に触ったときの感覚がリアルというか。とにかく夢と現実が逆転してしまったような、あり得ない。
せっかくの夢だ楽しもう!
脚が短くてベッドから降りるのも、転落するような感覚で、いちいち怖い。
なんとか降りて部屋中を見渡す、何もかもがデカイ!
タンスや机なんかはもうある本で読んだ物語に登場する巨大機械兵器を連想してしまう。
まぁ実際襲ってくることはないから安心だが。
机の上で丸まってみたいが、どうすればあそこまで行けるのか?
俺はそびえる机を見上げて、思案する。
この小さな体で高い所まで登るには……そうか猫と言えばジャンプ力!
机に体を向かせ、三歩下がる。そして助走をつけ床を蹴飛ばして机目掛けて跳躍した。
猫ってすごい!
自分の体の二倍は跳んでいる。
机の縁まで届きそうだ。
すたっ
難なく机上に着地、猫の運動能力の高さを改めて体験で思い知った。
おぉー、なんか自分でも感慨深いものが。
ふと机上にあるものに気づく、俺が置いた覚えのないもののようだ。
机上に置かれていたのは、何か記された一枚のちぎられた跡のある紙とその上に置かれた円盤形の金属。不思議に思い近づいてみる。
真正面で見据えると、紙に記された文字がはっきりとわかる。
依頼を受けてくれてありがとう……えっ?
背筋に寒気が走る。
その寒気が嫌な予感していることは、考えたくなかった。
これは夢だ、そう思い目覚めようと奮闘するが起床する兆しさえも表れない。
えっこれが現実?
夢じゃないのか? それだったらなんなんだ?
誰に問う訳でもなく胸中で思考を巡らせる。
「何がどうなってるんだぁーーーー!」
思うほど大音声は出なかった。
部屋の外から足音が聴こえる、数は三人。
ゆっくりと廊下を歩いてこちらに近づいてきている。
一歩進む度にしなる音、話し声がどんどん部屋に接近している、どうすればいいんだ?
思考がまとまらない。
薄暗い廊下から短い顎髭を生やした男が顔を覗かせた。
顔には血が飛び散っていて拭ったのか赤い線になっていた。
館には俺と少女しか居なかったはず、ならばあの血は……少女の。
「黒猫がいるぞ、一応殺傷しとくか」
男が俺に剣を片手に近寄ってくる。剣の刃身には真っ赤な血が、こいつか……クズが!
「へへへ魔女なんぞ造作もなかったなぁこの黒猫は相棒かなんかか」
嘲るといった口調でカハハと笑いながら机上の俺に寄ってくる。
男は目の前に来ると剣を頭上に両手で振りかぶる。
その剣は下劣で無遠慮でただの鉄にしか見えなかった。
俺は意識的に睨みつけた。
死ねクズ野郎!
全身の血が沸き立つような、魂がエキサイトしているような、とにかく思考が止まった。
目の前のクズをゴミを、排除する。
睨んでいると突然男は全身から発汗しだして動きが停止する。
瞳孔が上部に寄り白目がほとんどになる。
そして口から泡を噴き出して力なく横に倒れた。
部屋の外で様子を窺っていた二人は、何が起きたのかわからず目を大きく見開いて唖然としている。
俺はもう一人を睨んだ。
視線が合う、その瞬間前の男と同じように倒れた。
しかしあと一人は廊下を駆けて逃げているようで足音が響いていてすぐわかる。
滑稽だ。
逃げれると思っていたのか?
俺の愛するものを殺した罪は何であっても償えない。
体の中で何かが爆発したような感覚が、それと同時に体がどんどん大きくなっていく。
天井を破り力が際限なく溢れてくる。
死ね死ね死ね死ね死ね!
男が息を切らしながら館から庭に出てきた。
男は後ろを振り向かず必死に走っていたが、片足を上げた所で停止した。
口から泡を吐き出し目を白くして倒れた。
ハハハハハハハ!
ハハハハハハハ!
無様だ無様だ無様だ!
笑いが止まらない。
熱っ!
背中に突然熱さを感じた。
振り向くと、火を纏った矢が四方八方からこちらに向かって飛んでくる。
次はなんだ?
辺りを見渡すが緑生い茂った山ばかりで矢を放っている奴は見当たらない。
その時俺の周りを水色のリングが何本も囲った。
リングは光を放ちながら一斉に向かってきて俺を締め付けた。
苦しい、魔法か?
「悪魔よ眠れ!」
どこからか若い男性の声が、それは山びこにより響き渡る。
なんか気持ちいい、憤りがすぅーと心から引いていく。
少女を殺した奴を排除できれば良かったのに、自我を失っていた。
「封印されろ悪魔!」
威勢の良い声がまたも響き渡る。潔く封印されようではないか、少女がいない世界などどうせ価値ないから。
少女は俺のことをどう思ってたのだろうか、俺は少女ことを世界一愛していた違う愛しているだ。
__これが俺の過去の物語。
俺は今、あの時のように自我を失っている、というか洗脳されている感じもする。
誰かまた封印してくれ、頼む。
それが俺の本望、そして夢。
体に重みを感じる。
俺は寝てたのか?
目も開けぬまま、思い返してみる。確かシャマと、黒猫を捜していて茂みに入ったところまでは記憶がある。
「太刀さぁん……寝覚めてくださいよぉ」
弱々しく悲しみを含んだ声が俺の腹の上からしている。
首だけ上げて見てみると、リアンが俺の腹に頭を乗せていた。
これは一体どうなってるんだ?
「おーいリアン、何やってんだ?」
寝ているのかわからず声をかけてみる。
「太刀さん声がします……何で?」
こちらの顔を見ることなく疑問符。俺が死んじゃったみたいだな。
思わず呆れ笑い。
「今、太刀さんが微動した気がします」
顔を上げ俺を窺う。その目は涙で潤っていて目元が赤く腫れていた。
俺の顔を見るなり喜色満面で、両手を広げた。そして……うぶっ。
ひしと抱き締められ、リアンは顔を伏せたまま喋りだした。
「寂しかったです!」
突然、顔を上げ上目遣いで叫んだ。
「ごめんなさい……」
ばつ悪く俺は顔を逸らす。
沈黙になってしまい、時計のカチッカチッという音だけが部屋に響く。
俺は沈黙にたえられず恐る恐る横目にリアンを覗いた。目尻に涙を溜め、そこから輪郭に沿って大粒の雫が流れていく。
「バカっ!」
リアンは拳をつくり俺の胸に打ち付けた。その拳は非力ながらに重量があり、それでもって混沌した感情を明らかに表していた。
「バカですか、シャマさんが魔力尽きてまで……足を挫いてまでここまで運んできてくれたんです……」
そこまで言い顔を埋めた。
何が起こってるんだ?
俺はまた大切な人を傷つけた、いや違う泣かせてしまった。
なんでだよ俺の無能!
大切な人を守る力かとないのに背負い込むとは奢りだ!
もう食傷だ、泣き顔なんか見たくない!
「えっ太刀さん?」
無意識に俺はリアンを抱き締めていた。
強く離さないように抱き締めた。
俺にも抱擁が返ってきた。
これは決心の証しでもあり鎖でもある。
縛る鎖ではなく結束した鎖だ。
自分が涙を溢していたことはリアンとシャマには内緒だ。
泣き顔は見せないようにしたいから。
重い瞼をなんとか開けた。
視界がぼやぼやする、寝起きだからだろう。
目を擦りながら手をついて起き上がる。
擦った手が異様にふさふさしてたのだが?
まぁ気のせいだろう、とカーテンを開けようと手を伸ばす……へ?
カーテンに伸ばした俺の手は、黒毛に覆われていて、関節がない感覚で物も掴めそうにない。
小さくて愛らしい気もするが……何かの手に似てるような?
自分の手を裏返してみる、真ん中には一部だけ色が違いよく目立つぷりぷりしてそうな何かがあった。
どう見ても肉球としか見受けられないのが、これは夢か?
全身にも目を遣る。
全身黒毛に覆われていて……どうやら俺は猫化したようだ。
へぇーこんな夢もあるんだなぁ、と布団に再び潜ろうとする……が掴めない。
布団の繊維に鋭い爪が引っ掛かる。
リアルな夢だな。
薄暗い部屋で暴れたくなる。
どうやら夢の中でも俺は無性に誰かと一手組みたいらしい。
というか現実の俺起床する気ないのか?
こっちの体の方が妙に現実感があるというか物に触ったときの感覚がリアルというか。とにかく夢と現実が逆転してしまったような、あり得ない。
せっかくの夢だ楽しもう!
脚が短くてベッドから降りるのも、転落するような感覚で、いちいち怖い。
なんとか降りて部屋中を見渡す、何もかもがデカイ!
タンスや机なんかはもうある本で読んだ物語に登場する巨大機械兵器を連想してしまう。
まぁ実際襲ってくることはないから安心だが。
机の上で丸まってみたいが、どうすればあそこまで行けるのか?
俺はそびえる机を見上げて、思案する。
この小さな体で高い所まで登るには……そうか猫と言えばジャンプ力!
机に体を向かせ、三歩下がる。そして助走をつけ床を蹴飛ばして机目掛けて跳躍した。
猫ってすごい!
自分の体の二倍は跳んでいる。
机の縁まで届きそうだ。
すたっ
難なく机上に着地、猫の運動能力の高さを改めて体験で思い知った。
おぉー、なんか自分でも感慨深いものが。
ふと机上にあるものに気づく、俺が置いた覚えのないもののようだ。
机上に置かれていたのは、何か記された一枚のちぎられた跡のある紙とその上に置かれた円盤形の金属。不思議に思い近づいてみる。
真正面で見据えると、紙に記された文字がはっきりとわかる。
依頼を受けてくれてありがとう……えっ?
背筋に寒気が走る。
その寒気が嫌な予感していることは、考えたくなかった。
これは夢だ、そう思い目覚めようと奮闘するが起床する兆しさえも表れない。
えっこれが現実?
夢じゃないのか? それだったらなんなんだ?
誰に問う訳でもなく胸中で思考を巡らせる。
「何がどうなってるんだぁーーーー!」
思うほど大音声は出なかった。
部屋の外から足音が聴こえる、数は三人。
ゆっくりと廊下を歩いてこちらに近づいてきている。
一歩進む度にしなる音、話し声がどんどん部屋に接近している、どうすればいいんだ?
思考がまとまらない。
薄暗い廊下から短い顎髭を生やした男が顔を覗かせた。
顔には血が飛び散っていて拭ったのか赤い線になっていた。
館には俺と少女しか居なかったはず、ならばあの血は……少女の。
「黒猫がいるぞ、一応殺傷しとくか」
男が俺に剣を片手に近寄ってくる。剣の刃身には真っ赤な血が、こいつか……クズが!
「へへへ魔女なんぞ造作もなかったなぁこの黒猫は相棒かなんかか」
嘲るといった口調でカハハと笑いながら机上の俺に寄ってくる。
男は目の前に来ると剣を頭上に両手で振りかぶる。
その剣は下劣で無遠慮でただの鉄にしか見えなかった。
俺は意識的に睨みつけた。
死ねクズ野郎!
全身の血が沸き立つような、魂がエキサイトしているような、とにかく思考が止まった。
目の前のクズをゴミを、排除する。
睨んでいると突然男は全身から発汗しだして動きが停止する。
瞳孔が上部に寄り白目がほとんどになる。
そして口から泡を噴き出して力なく横に倒れた。
部屋の外で様子を窺っていた二人は、何が起きたのかわからず目を大きく見開いて唖然としている。
俺はもう一人を睨んだ。
視線が合う、その瞬間前の男と同じように倒れた。
しかしあと一人は廊下を駆けて逃げているようで足音が響いていてすぐわかる。
滑稽だ。
逃げれると思っていたのか?
俺の愛するものを殺した罪は何であっても償えない。
体の中で何かが爆発したような感覚が、それと同時に体がどんどん大きくなっていく。
天井を破り力が際限なく溢れてくる。
死ね死ね死ね死ね死ね!
男が息を切らしながら館から庭に出てきた。
男は後ろを振り向かず必死に走っていたが、片足を上げた所で停止した。
口から泡を吐き出し目を白くして倒れた。
ハハハハハハハ!
ハハハハハハハ!
無様だ無様だ無様だ!
笑いが止まらない。
熱っ!
背中に突然熱さを感じた。
振り向くと、火を纏った矢が四方八方からこちらに向かって飛んでくる。
次はなんだ?
辺りを見渡すが緑生い茂った山ばかりで矢を放っている奴は見当たらない。
その時俺の周りを水色のリングが何本も囲った。
リングは光を放ちながら一斉に向かってきて俺を締め付けた。
苦しい、魔法か?
「悪魔よ眠れ!」
どこからか若い男性の声が、それは山びこにより響き渡る。
なんか気持ちいい、憤りがすぅーと心から引いていく。
少女を殺した奴を排除できれば良かったのに、自我を失っていた。
「封印されろ悪魔!」
威勢の良い声がまたも響き渡る。潔く封印されようではないか、少女がいない世界などどうせ価値ないから。
少女は俺のことをどう思ってたのだろうか、俺は少女ことを世界一愛していた違う愛しているだ。
__これが俺の過去の物語。
俺は今、あの時のように自我を失っている、というか洗脳されている感じもする。
誰かまた封印してくれ、頼む。
それが俺の本望、そして夢。
体に重みを感じる。
俺は寝てたのか?
目も開けぬまま、思い返してみる。確かシャマと、黒猫を捜していて茂みに入ったところまでは記憶がある。
「太刀さぁん……寝覚めてくださいよぉ」
弱々しく悲しみを含んだ声が俺の腹の上からしている。
首だけ上げて見てみると、リアンが俺の腹に頭を乗せていた。
これは一体どうなってるんだ?
「おーいリアン、何やってんだ?」
寝ているのかわからず声をかけてみる。
「太刀さん声がします……何で?」
こちらの顔を見ることなく疑問符。俺が死んじゃったみたいだな。
思わず呆れ笑い。
「今、太刀さんが微動した気がします」
顔を上げ俺を窺う。その目は涙で潤っていて目元が赤く腫れていた。
俺の顔を見るなり喜色満面で、両手を広げた。そして……うぶっ。
ひしと抱き締められ、リアンは顔を伏せたまま喋りだした。
「寂しかったです!」
突然、顔を上げ上目遣いで叫んだ。
「ごめんなさい……」
ばつ悪く俺は顔を逸らす。
沈黙になってしまい、時計のカチッカチッという音だけが部屋に響く。
俺は沈黙にたえられず恐る恐る横目にリアンを覗いた。目尻に涙を溜め、そこから輪郭に沿って大粒の雫が流れていく。
「バカっ!」
リアンは拳をつくり俺の胸に打ち付けた。その拳は非力ながらに重量があり、それでもって混沌した感情を明らかに表していた。
「バカですか、シャマさんが魔力尽きてまで……足を挫いてまでここまで運んできてくれたんです……」
そこまで言い顔を埋めた。
何が起こってるんだ?
俺はまた大切な人を傷つけた、いや違う泣かせてしまった。
なんでだよ俺の無能!
大切な人を守る力かとないのに背負い込むとは奢りだ!
もう食傷だ、泣き顔なんか見たくない!
「えっ太刀さん?」
無意識に俺はリアンを抱き締めていた。
強く離さないように抱き締めた。
俺にも抱擁が返ってきた。
これは決心の証しでもあり鎖でもある。
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