異世界から「こんにちは」

青キング

捜索と抱擁

 猫が行方不明になり、二日が経とうとしている。
 ここまで黒服隊も加わって街の隅々まで捜索活動を行った。
 しかし一部の黒服隊員も猫と一緒に行方をくらませている。
 ここまで見つからないとなると、残りは山だけだ。
「ナレク様、捜索続けますか?」
 隊員の一人が聞いてくる。
「次は山しかないな」
「山ですか。いろんな生物が生息していますし……生物達の生活を邪魔するのは気がひけます」
「それは仕方ない。できるだけ荒らさずに捜索するしかないよな」
「では今から山での捜索に移りましょう」
 隊員は慌ただしく出ていく。
 どうしようかな?
 捜索の必要性が高いのか低いのか、自分でも判断がつかない。
 猫の行方が気がかりだから捜索しているのであって街に猫がいなくても犬がいる。
 あと極一部の黒服隊員の行方、これも早急に見つけださねば。
「ナレク様、お客様がいらっしゃっております」
 誰だろう?
「どうぞ入って」
「ごめんナレク忙しいときに」
 すまなさそうに頭を下げてから入ってきたのは、金髪イケメン剣士のブルファだ。
 こいつとはある事件で知り合って以来友好関係を築き、黒服隊の手伝いもやってもらっている。
 ワコーやシャマ、太刀にリアンとも何度か会って話したことがある。
 そんな友達とも言えるブルファが何の用事だろうか?
「猫の捜索についてだけどいいかな」
「構わないけど捜索が行き詰まってるのかな?」
 首を横に振って否定する。
「太刀とリアンのことと、今回の猫行方不明が繋がってるというか、何らか関係性がありそうな気がして」
 言われてみればどちらも前触れなくいないなっている。
 俺はブルファの話を傾聴することにした。
「ワコーの体験談だと思いますけど彼は昨夜未明、自宅で財布の出し入れをしようとしたんです、そうするとなぜかお金が減っていたという話をしてくれたんです。そして彼は太刀やリアンが消えた次は俺の金かよ! と言っていました。そして次に、きっとこれは異世界転移などだろう、と呟いていました」
 異世界転移!
 こっちの世界からもできるのか?
「それを伝えに来ただけですので、もう行きますね」
 ブルファはじゃあ、と言って部屋を出てしまった。
 でも異世界転移だとしたらどうやって?
 一日その単語で頭は一杯だった。
 そんなことがあり得るのだろうか?
 異世界から来た俺だが、どうやって来たのかはわからない。
 三日間の捜索もむなしく、山にも手がかりは見つからず捜索は八方塞がりとなってしまった。

 深夜一時。
 街の灯りはほぼ無くなり暗黒の世界になっている。
 窓越しに街を眺めるとそんなイメージを持つのはどうだろうか?
 誰かに聞いている訳でもないが、疑問文にしてみた。
 ……何やってんだろ。
 私は夜に活動がピークになるのだが、夜道を歩くことを太刀先輩は危険だ、と注意してきた記憶がある。
 優しさはしっかり伝わった。
 そんな太刀先輩はどこに行ったのやら?
 手元にある可愛らしい彩飾を施したマグカップをぼんやりと見つめる。
「そのマグカップに思い入れでもあるのか?」
 聞き覚えのない声が背後からする。
 振り返っても誰もいない。
 不気味に思い、ベットに傍に置いておいた魔法の杖を手に取る。
 後頭部に強い衝撃が……なんだ?
「フフフ、三人目だなこれで」
 意識が朦朧として体が動かない。なんかわかんないけど力が抜けてく……
 __太刀先輩、リアン先輩、見つけてあげられなくてごめんなさい。

 夜も深まり、街も閑とした頃ではないだろうか?
 私、リアンは中々寝付けなかった。
 一人部屋で寝るなんてつまらない!
 なんで太刀さんは別室で寝るの?
 ああーもう!
 体をバッと起こして布団を手で無造作に退かす。
 太刀さんの部屋に行こう! そう決意したのだ。
 部屋を抜け、真っ暗な廊下を足音をたてぬよう慎重に進んでいく。
 部屋が近いのが幸いだ。
 太刀さんの部屋の前に立つとなぜか心臓の鼓動が速まる。
 よし! と自分に気合いを入れ、ドアノブに手を掛ける。
 そのまま捻ねりながら引いてみる……あれ?
 開かないぞ?
 試しに押してみる。
 やった、物音ひとつなくドアを開けることに成功した。
 部屋は広さなどいらぬと言わんばかり狭く、タンス机が隅あにり、残った真ん中辺のスペースにせんべい布団を敷いて熟睡している。
 かがんで寝顔を覗き込む。うん、寝てる寝てる隙だらけだ。
 どこで寝ようかな?
 そうだ背中に抱きついて寝よう!
 グッドアイデアでしょう?
 太刀さんの胴体をまたいで、背中側に移動するとそのまま横たわる。
 せんべい布団だからか床の硬さを感じるが、それくらい構わない。
 腕を広げて背中からひしと抱きつく。
 起床したとき、とがめられるかも知れないけどそのときはそのときだ。
 すぐに眠気が襲ってきた。
 太刀さん温かいです。
 私は目を閉じてそのまま眠りに落ちることにした。

「異世界から「こんにちは」」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「恋愛」の人気作品

コメント

コメントを書く