異世界から「こんにちは」

青キング

猫に対するそれぞれの問題

 授業日程がすべて終了し、俺は寄り道せずに自宅へ向かうことにした。
 向かっている道中にも何匹もの猫の姿を確認した。
 確か一、二、三……思い出して数えてみるが多分十匹は超えている。
 どうすればいいか思案しているといつの間にか自宅の前に立っていた。
 その時ふと視線を感じた。
 俺は辺りを見回すが誰も見当たらない。
 また猫かなと楽観的に決めつけなので危機感も覚えず入り口のドアを開けた。
「帰ってきましたね!」
 玄関にドダダダァーと駆けてくる音が家中に響く。
「太刀さ~ん! 満をじしてました~」
 玄関すぐ近くの部屋から顔を覗かせて、こちらを潤んだ瞳で見つめてくる。
 思ったよりか近くの部屋に居た!
「話があるからリビングのテーブルに座っててくれ。俺も着替えたら行くから」
「まっまさか、つつついに太刀さんが私を女として……ががががんばります」
 頭から湯気が出るほどまで顔全体をまんべんなく赤くしている。
 何を頑張るのだろうか?
 リビングを過ぎ、自室へ足を運んだ。
 制服は暑い。それゆえに着替えを優先するのは俺にとって当たり前だ。
 制服は雑に置き捨て涼しげな水色のTシャツとジーンズの短パンに着替えて、リアンが待っているリビングへ向かった。
 自室を出るとすぐ前でリアンが仁王立ちして俺を見上げる。
「着替えの時間、四十秒。早いですね今まででベストタイムです」
「今までってことは前からタイム測定してたのか?」
「愚問です。朝の着替えから入浴後の着替えまで異世界の時からずっと測ってたました」
 ストーカーみたい……いやもうストーカーだよな。
「測ってみてわかったことがあるんです」
 そこまで言い何故かためる。
「教えませんけどねっ」
 いたずらっぽく言うと、リビングにそそくさと行ってしまう。
 俺もあとを追うようにリビングへ。
 先リビングに入るとテーブルにいち早く座っており、早く早くと手招きして俺をせかす。
 リアンと向かいの椅子に腰かけ、リアンに視点を置いた。
「なんですか見つめて?」
 不思議そうに首を傾げる。
 俺は間をとってから切り出した。
「俺の周りで何が起きている?」
 キョトンとこちらを見つめて、リアンの頭上にクエスチョンマークが浮かんだような気がする。
「何を言ってるんですか?」
「えっ、だから周りで何が起きてるんだってことだよ」
 呆れたようなため息をつかれた。
「詳しく話してください」
「そ、そうだよな。今日の朝から帰ってくるまで猫を十回以上見たんだ、昨日までは猫なんて一日に一回見るか見ないだったのに……」
「あ~だいたい言いたいことはわかりましたよ、不思議ですねぇ怪奇ですよ」
 話している途中で遮断して喋り出す。
 手に顎をを置き考える仕草を取っている。
 思い当たる節でもあるのなだろうか?
「その問題は太刀さんが悩む必要ないことですね」
 笑顔を俺に向けてそう言う。
 なんで重く受け止めないんだ。
 異常事態だろ!
「でもただ、考えるだけでは進展しない。何か証拠や情報を掴まないと策さえも考え出すことができません」
 そうか、なんで俺はそんな簡単なことに気がつかなかったのかな。
 俺が苦悶したって解決できるのか?
「ありがとうリアン」
 リアンの頭を撫でると、エヘヘと照れ臭そうに頬を少し紅潮させた。
「私は何もしてませんよ」
「さっきまで混乱してたみたいだな俺。一人で悩む必要もないよな」
 リアンの頭から手を離し、椅子から腰を持ち上げた。
「異常事態、手伝ってくれ」
「はい!」
 微笑みながら頷いてくれる。
「何をすればいいかわかりません!」
「そうですねぇ~」
 リアンの笑顔につい俺も笑顔になる。こんな幸せが近くにあるのなら、あれくらい異常事態でもないように思えてくる。
 平穏がいつまでも続いてほしい。
 改めて幸せを感じた。こうして近くにいてくれる人がいるから。

「ナレク様、報告書が届いています」
「ありがとう、それより相変わらず綺麗な髪だね」
「セクハラはやめてください。ナレク様でも心肺停止させますよ」
 おっかないなぁ美人なのに。
 紫のスーパーロングのストレートヘアがたなびく度に俺の気はそちらに向いてしまう。
「暇なら早く報告書に目を通してください」
「すいませんでした」
 急いで報告書に目を通しておこう。
 渡された報告書に記してある事柄に驚愕する。
 街にいる猫が一斉に行方不明。飼い主を含め誰も姿を見た人はおらず。
 さらに続きを読み進めていく。
 深夜だけで犯行を行うには数が膨大過ぎるため大きな力が絡んでいる可能性もあり、と記されている。
 確か街の猫の数は千匹以上、その数が一夜にして居なくなる。
 何か嫌な予感がするぞ、大災害の兆しなのかもしれない。

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