異世界から「こんにちは」
異世界への関心
ワコーが意識を取り戻したのは、襲われて一週間後のことだった。
その時、ワコーは言った。
「あれ、生きてるのか俺」
と、さっきまで死んでたみたいな言い草。
「目を覚まして良かった、心配したよ。それで生きてるのかってどういうこと?」
「え……俺そんなこと口にしたっけ?」
記憶が消えたのか消されたのか、それは定かではないが、何も有力な情報が掴めないのは痛すぎる。
でも、ワコーが目の前で喋っていることが何よりも嬉しい。
「これでも食べなよ」
ワコーの寝ていたベッドの脇に置いていた、シャマが市場で買い込んだフルーツや水などの入った袋から、茶色で小粒の栄養価が高い果実マレロを手渡すとありがとう、と受け取った。
マレロを見つめるだけで口に運ぼうとはしない。
「食べないのか?」
やはり苦しんでいたので食欲も削がれたのだろう。
その時唐突にワコーの口か言葉が溢れる。
「商売がしたいんだ俺は。異世界でもいい商売がしたい!」
普段から感情を露にしないワコーが「商売がしたい」と叫んだのだ。
本音をさらけ出している。
やっぱり以前とは言動が違う。
ワコーは頭を両手で抱えて「商売がしたい」と叫び続ける。
「異世界ってどんなところ?」
「それは……」
口ごもり視線を落とした。
少しの沈黙、その間ワコーの心のうちはどんな思いを持っていたのだろう。
異世界のことを思い出したのか真剣な顔をこちらに向けて口を開いた。
「俺は一人の商人だ、だから俺にも商売をする権利はあるはずなのに……なんで、権利を失わなければならない?」
「僕は知らないよ。でも確かにおかしい」
「だろ、それなのにズルした悪者みたいにはぶられて、虫けらを見るような視線を感じて、もう嫌だ!」
ここまで直情的になったワコーを見て、自分の中で何かが変わった気がする。
「異世界かー、僕も一度でいいから行ってみたいな」
「どうやって行くかわからないけど」
その時、部屋のドアが開いて聞き覚えのある足音が聴こえる。
驚き足音の方を振り向くと、目を丸くしてこちらを見つめるブルファが立っていた。
「ワコー、ワコー……ワコーが起きてる!」
涙が溜まりだしてきたのか目を袖で拭うと笑顔で一歩一歩近づいてくる。
「良かったよ」
「ごめんなブルファ、俺が不甲斐ないばっかり心配させちゃって」
誰も謝る必要はない。
ブルファにも異世界のことを相談してみた。
「異世界ねー。何ができるのかな異世界って?」
「こことは違って望みも叶うかもしれない、そんな希望を秘めた場所」
しかしどんな危険があるかもわからない未知な場所とも言える。
「行きたくないと言ったら嘘になるし、行きたいと言っても嘘になる。決断できないな」
やっぱりそれが当たり前だ。賭けにもほどがある。
そしてまたドアがゆっくり開いて足音が聴こえる。
ピンクの髪も少し色が薄くなっているシャマがワコーが、と震える声を出して立ち尽くしている。
シャマの髪色は精神状態を表しているらしく薄いということは、荒んでいたり落ちこんでいたりすると薄くなるそうだ。
「やった、ワコーが目を覚まして……やったー!」
髪色かがいつものピンクに戻っていく。
そしてベッドに向かって駆け出して、ワコーを目一杯抱き締めた。
「なんで突然襲われたんですか! いつもいつも気になって夜も眠れなかったんですよ! ほんとに何やってるんですか!」
涙で潤んだ目でワコーを見つめている。
泣くほどまで心配することを僕も生きてきたなかで初めて知ったんだよ。
「泣いてなんか無かったですよ」
シャマは視線を外して頬をほのかに赤く染めて否定する。
「俺達がちゃーんと見てたから、なマークス」
僕に共有を求めないで!
「意地悪ですよ」
唇を軽く尖らせて仏頂面だ。
「シャマは異世界ってどんなところだと思う?」
「えっ、えええ! まぁその異世界はー」
突然問いかけるブルファに困惑しながらも何かを言おうとしている。
「そうですねぇーう~ん……ごめんなさいわかりませんし。想像もつきません」
考えたあげく首を横に振った。
でもなぜ突然、異世界なんてワコーは言い出したのか異世界の夢でも見てたのか?
「これで情報集めに専念できるな」
太刀さんは異世界に行ったのか? もしそうだとしたらリアンもきっと……
「何を真顔で深いこと考えてるんですか」
「顔が少し暗いぞー」
二人に顔を覗かれて僕は素直に考えていたことを話した。
「リアンと太刀は異世界行った? あり得るけど、その前にどうやって行ったのかが気になるな」
「そうそう」
シャマはブルファの疑問に共感したようで頷く。
「それを知るために色々謎やら不思議やらを確かめるのだろう」とブルファの一言。
「そう……だよね」
心の中で共感する。僕は相変わらず馬鹿者だ。
順序を間違えて勝手に想像して、ほんとに馬鹿だ。
「俺は情報集めを再開する、シャマはどうする」
「私は……どうしようかな」
ブルファに聞かれて答えをはっきり言わずに迷っているようだ。
「やめとくよ。一回家に帰ってからどうするか考えます」
それを聞くと、なにも言わずブルファは部屋を出た。
僕はどうしようかな、と迷っているとシャマが僕に顔を向けて聞いてくる。
「マークスはどうするの?」
「何も決めてない」
「マークスはワコーと居てあげて、ワコーが一人で行動しないように」
その顔は憂いを含んでいた。
僕はその顔を見て何も言い返せずうんと頷くだけしかできなかった。
その時、ワコーは言った。
「あれ、生きてるのか俺」
と、さっきまで死んでたみたいな言い草。
「目を覚まして良かった、心配したよ。それで生きてるのかってどういうこと?」
「え……俺そんなこと口にしたっけ?」
記憶が消えたのか消されたのか、それは定かではないが、何も有力な情報が掴めないのは痛すぎる。
でも、ワコーが目の前で喋っていることが何よりも嬉しい。
「これでも食べなよ」
ワコーの寝ていたベッドの脇に置いていた、シャマが市場で買い込んだフルーツや水などの入った袋から、茶色で小粒の栄養価が高い果実マレロを手渡すとありがとう、と受け取った。
マレロを見つめるだけで口に運ぼうとはしない。
「食べないのか?」
やはり苦しんでいたので食欲も削がれたのだろう。
その時唐突にワコーの口か言葉が溢れる。
「商売がしたいんだ俺は。異世界でもいい商売がしたい!」
普段から感情を露にしないワコーが「商売がしたい」と叫んだのだ。
本音をさらけ出している。
やっぱり以前とは言動が違う。
ワコーは頭を両手で抱えて「商売がしたい」と叫び続ける。
「異世界ってどんなところ?」
「それは……」
口ごもり視線を落とした。
少しの沈黙、その間ワコーの心のうちはどんな思いを持っていたのだろう。
異世界のことを思い出したのか真剣な顔をこちらに向けて口を開いた。
「俺は一人の商人だ、だから俺にも商売をする権利はあるはずなのに……なんで、権利を失わなければならない?」
「僕は知らないよ。でも確かにおかしい」
「だろ、それなのにズルした悪者みたいにはぶられて、虫けらを見るような視線を感じて、もう嫌だ!」
ここまで直情的になったワコーを見て、自分の中で何かが変わった気がする。
「異世界かー、僕も一度でいいから行ってみたいな」
「どうやって行くかわからないけど」
その時、部屋のドアが開いて聞き覚えのある足音が聴こえる。
驚き足音の方を振り向くと、目を丸くしてこちらを見つめるブルファが立っていた。
「ワコー、ワコー……ワコーが起きてる!」
涙が溜まりだしてきたのか目を袖で拭うと笑顔で一歩一歩近づいてくる。
「良かったよ」
「ごめんなブルファ、俺が不甲斐ないばっかり心配させちゃって」
誰も謝る必要はない。
ブルファにも異世界のことを相談してみた。
「異世界ねー。何ができるのかな異世界って?」
「こことは違って望みも叶うかもしれない、そんな希望を秘めた場所」
しかしどんな危険があるかもわからない未知な場所とも言える。
「行きたくないと言ったら嘘になるし、行きたいと言っても嘘になる。決断できないな」
やっぱりそれが当たり前だ。賭けにもほどがある。
そしてまたドアがゆっくり開いて足音が聴こえる。
ピンクの髪も少し色が薄くなっているシャマがワコーが、と震える声を出して立ち尽くしている。
シャマの髪色は精神状態を表しているらしく薄いということは、荒んでいたり落ちこんでいたりすると薄くなるそうだ。
「やった、ワコーが目を覚まして……やったー!」
髪色かがいつものピンクに戻っていく。
そしてベッドに向かって駆け出して、ワコーを目一杯抱き締めた。
「なんで突然襲われたんですか! いつもいつも気になって夜も眠れなかったんですよ! ほんとに何やってるんですか!」
涙で潤んだ目でワコーを見つめている。
泣くほどまで心配することを僕も生きてきたなかで初めて知ったんだよ。
「泣いてなんか無かったですよ」
シャマは視線を外して頬をほのかに赤く染めて否定する。
「俺達がちゃーんと見てたから、なマークス」
僕に共有を求めないで!
「意地悪ですよ」
唇を軽く尖らせて仏頂面だ。
「シャマは異世界ってどんなところだと思う?」
「えっ、えええ! まぁその異世界はー」
突然問いかけるブルファに困惑しながらも何かを言おうとしている。
「そうですねぇーう~ん……ごめんなさいわかりませんし。想像もつきません」
考えたあげく首を横に振った。
でもなぜ突然、異世界なんてワコーは言い出したのか異世界の夢でも見てたのか?
「これで情報集めに専念できるな」
太刀さんは異世界に行ったのか? もしそうだとしたらリアンもきっと……
「何を真顔で深いこと考えてるんですか」
「顔が少し暗いぞー」
二人に顔を覗かれて僕は素直に考えていたことを話した。
「リアンと太刀は異世界行った? あり得るけど、その前にどうやって行ったのかが気になるな」
「そうそう」
シャマはブルファの疑問に共感したようで頷く。
「それを知るために色々謎やら不思議やらを確かめるのだろう」とブルファの一言。
「そう……だよね」
心の中で共感する。僕は相変わらず馬鹿者だ。
順序を間違えて勝手に想像して、ほんとに馬鹿だ。
「俺は情報集めを再開する、シャマはどうする」
「私は……どうしようかな」
ブルファに聞かれて答えをはっきり言わずに迷っているようだ。
「やめとくよ。一回家に帰ってからどうするか考えます」
それを聞くと、なにも言わずブルファは部屋を出た。
僕はどうしようかな、と迷っているとシャマが僕に顔を向けて聞いてくる。
「マークスはどうするの?」
「何も決めてない」
「マークスはワコーと居てあげて、ワコーが一人で行動しないように」
その顔は憂いを含んでいた。
僕はその顔を見て何も言い返せずうんと頷くだけしかできなかった。
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