それでも俺は帰りたい~最強勇者は重度の帰りたい病~
第二十四話 本物の王女様です初めて見たです!?
芸術品のような煌びやかな銀髪をふわりと靡かせて、王女様はキリッとした表情でギルドのみんなが注目する前に一歩出てきたです。
「王都グラテンブルグの冒険者ギルドの諸君に用があって参上した」
綺麗な人です。ミルクのように白い肌。桜色の唇。歳はわたしより一つか二つ上ですかね。鎧の上からでもわかるプロポーションはとても羨ましいです。特に胸の辺りが。
宝石のようなエメラルド色の瞳が検分するようにわたしたちを見回しているです。
「ほ、ほほほ本物の王女様です初めて見たです!?」
「王女? へえ、アレが……八十八ぶごっ!?」
「勇者様無礼ですその目と口は一生閉じててくださいですッ!?」
「酷い!? 帰らせてもらいます!?」
「帰んなです!?」
回れ右しようとする勇者様の首にわたしは神樹の杖を引っ掛けたです。ぐえっ、と変な声が聞こえた気がするけど気のせいですね。とりあえず勇者様の目は塞いでないと王女様にまた不埒な〈解析〉をやらかしてしまいかねないです。わたしが気をつけなくては、です。
「にしても『グレンヴィル王国』に『王都グラテンブルグ』だっけ? 全然聞かないから名前設定されてないのかと思ってた」
「ちょっと勇者様がなに言ってるかわかんないです」
この人は本当に時々意味不明なことを言うです。
「でも、ラティーシャ様がどうしてギルドなんかに?」
ヘクターくんが眉を顰めたです。他のギルドの人たちと同じような顔をしているですね。王族の人が自らギルドを訊ねてくるなんて非常に珍しいことです。
「近頃、近隣の村々が魔物の被害を受けている。強力な魔物故に、その討伐には軍だけでなくギルドの力も借りたいのだ」
その疑問には王女様本人がお答えになってくださったです。
「そんな依頼があったのか?」
掲示板を振り返る勇者様にヘクターくんが説明するです。
「魔物の討伐は基本、王国軍で処理し切れないものがギルドに回ってくる仕組みになっています。今回は王国軍だけでも、ギルドだけでも難しいと判断されたのだと思います」
「そんなに危険な魔物が近くに出現したですか!? その魔物って一体……?」
わたしの疑問が聞こえたのか、王女様がこちらをチラッと見てから口を開いたです。
「その魔物とは――ドラゴンだ」
ざわっ。
一瞬静まり返ったギルド内だったですが、すぐに一層騒がしくなったです。ドラゴンって言えば魔物の最強種じゃないですか! たった一匹で小国を滅ぼしたっていう伝説も数多く残るほどの魔物です。確かにそれは軍だけでもギルドだけでも到底敵う相手ではないです。
「静粛に! 私は国民に無理強いをするつもりはない。ランクは考慮しない。我こそは、と思う者だけ討伐に参加してほしい。無論、報酬は弾む」
王国軍からの報酬となれば、大商人さんよりずっとすごいに決まっているです。これは是非とも勇者様には参加してほしいですね。勇者様ならドラゴンだって余裕です。
「それなら俺たちは参加するぜ! ドラゴンにビビッてちゃ冒険者の名折れってもんだ」
「ドラゴンを討ち取りゃ金も名誉もガハハだぜ! ガハハ!」
「そうなったらエヴリルちゃんもうちのパーティーに入ってくれるかな?」
「おう、そりゃ酒飲み放題だな! 三日三晩宴しようぜ!」
真っ先に立候補したのは筋肉パーティーの四人組だったです。するとそれを皮切りに俺も私もと次々と冒険者たちが挙手をし始めたです。あとわたしはお金や名誉を積まれても筋肉パーティーには絶対入らないです。
勇者様も早く! 早く挙手を!
「あー、帰りてぇー」
……するわけないですよねー。知ってたです。
「ただし!」
ギン! とした鋭い一瞥をラティーシャ王女様は浮かれた冒険者たちにくれてやったです。
「弱い者を参加させるわけにはいかん。簡単な試験を行ってもらう」
「試験だって?」
誰かが訊いたです。
王女様は一つ頷くと、近くにあった椅子に座って右手の肘をテーブルに置いたです。
「私と、腕相撲だ!」
「……」
「……」
「……」
あんなに騒いでいたみんながその一言だけで沈黙してしまったです。王女様の後ろの兵士さんたちもなんか頭に手をやったりして苦悩を表現しているです。
腕相撲って、あんな細身の王女様がギルドの冒険者相手になにを言ってるですか?
「おいおい、姫様、正気か?」
筋肉の一人が横柄な口調で確認したです。普通なら不敬罪で咎められそうですが、後ろの兵士さんたちはなにも言わないですね。寧ろこの王女様についてはいろいろ諦めてるような雰囲気までしてくるです。
「私は正気だ。安心しろ。勝てとは言わん。この私を唸らせた猛者のみを今回のドラゴン討伐に同行させる」
そう言った王女様は――ニヤリ。なんか自信満々に笑ったですよ。そして冒険者たちの中からプツンとなにかが切れる音が聞こえた気がしたです。
「王宮暮らしのお姫様に俺たちが勝てないって?」
「そうまで言われちゃ黙ってられんなぁ! ガハハ!」
「ハッ! これは王女様と握手できるチャンスでは!」
「いいねぇ。酔い覚ましにやってやんよぉ!」
まずは筋肉四人組が王女様の前に並んだです。最初の一人が王女様の対面にドカリと座って、ちょっと手汗を服で拭ってから王女様の手を掴んだです。
「ふむ、なかなかよい筋肉だ」
「お? わかるか? 毎日鍛えてんだぜ」
なにか通じ合ってるです。
「だ、大丈夫ですか? あの筋肉たち、王女様の手をポッキリしちゃったりしないですかね?」
わたしは不安になって勇者様を見ると、勇者様はどこか気の毒そうな目で王女様ではなく筋肉たちを見ていたです。
「大丈夫じゃないな。あのお姫様……筋力パラメータが怪物だ」
「え?」
ドゴォオオオン!!
なにかが爆発したような音が聞こえたです。
「なっ!?」
見ると、王女様に腕相撲を挑んだ筋肉が宙を舞っていたです。腕相撲をしたテーブルは真っ二つに割れて……な、なにが起こったですか!?
「……」
「……」
「……」
みんな、目の前でなにが起こったのか理解できずポカンとしていたです。勇者様と後ろの兵士さんたちだけが最初からこうなることを予想していたみたいに落ち着いているです。
冒険者たちの誰もが騒然とする中――
「さあ、次だ。遠慮せず全力でかかってこい!」
王女様は、ずいぶんと楽しそうに笑っていたです。
「王都グラテンブルグの冒険者ギルドの諸君に用があって参上した」
綺麗な人です。ミルクのように白い肌。桜色の唇。歳はわたしより一つか二つ上ですかね。鎧の上からでもわかるプロポーションはとても羨ましいです。特に胸の辺りが。
宝石のようなエメラルド色の瞳が検分するようにわたしたちを見回しているです。
「ほ、ほほほ本物の王女様です初めて見たです!?」
「王女? へえ、アレが……八十八ぶごっ!?」
「勇者様無礼ですその目と口は一生閉じててくださいですッ!?」
「酷い!? 帰らせてもらいます!?」
「帰んなです!?」
回れ右しようとする勇者様の首にわたしは神樹の杖を引っ掛けたです。ぐえっ、と変な声が聞こえた気がするけど気のせいですね。とりあえず勇者様の目は塞いでないと王女様にまた不埒な〈解析〉をやらかしてしまいかねないです。わたしが気をつけなくては、です。
「にしても『グレンヴィル王国』に『王都グラテンブルグ』だっけ? 全然聞かないから名前設定されてないのかと思ってた」
「ちょっと勇者様がなに言ってるかわかんないです」
この人は本当に時々意味不明なことを言うです。
「でも、ラティーシャ様がどうしてギルドなんかに?」
ヘクターくんが眉を顰めたです。他のギルドの人たちと同じような顔をしているですね。王族の人が自らギルドを訊ねてくるなんて非常に珍しいことです。
「近頃、近隣の村々が魔物の被害を受けている。強力な魔物故に、その討伐には軍だけでなくギルドの力も借りたいのだ」
その疑問には王女様本人がお答えになってくださったです。
「そんな依頼があったのか?」
掲示板を振り返る勇者様にヘクターくんが説明するです。
「魔物の討伐は基本、王国軍で処理し切れないものがギルドに回ってくる仕組みになっています。今回は王国軍だけでも、ギルドだけでも難しいと判断されたのだと思います」
「そんなに危険な魔物が近くに出現したですか!? その魔物って一体……?」
わたしの疑問が聞こえたのか、王女様がこちらをチラッと見てから口を開いたです。
「その魔物とは――ドラゴンだ」
ざわっ。
一瞬静まり返ったギルド内だったですが、すぐに一層騒がしくなったです。ドラゴンって言えば魔物の最強種じゃないですか! たった一匹で小国を滅ぼしたっていう伝説も数多く残るほどの魔物です。確かにそれは軍だけでもギルドだけでも到底敵う相手ではないです。
「静粛に! 私は国民に無理強いをするつもりはない。ランクは考慮しない。我こそは、と思う者だけ討伐に参加してほしい。無論、報酬は弾む」
王国軍からの報酬となれば、大商人さんよりずっとすごいに決まっているです。これは是非とも勇者様には参加してほしいですね。勇者様ならドラゴンだって余裕です。
「それなら俺たちは参加するぜ! ドラゴンにビビッてちゃ冒険者の名折れってもんだ」
「ドラゴンを討ち取りゃ金も名誉もガハハだぜ! ガハハ!」
「そうなったらエヴリルちゃんもうちのパーティーに入ってくれるかな?」
「おう、そりゃ酒飲み放題だな! 三日三晩宴しようぜ!」
真っ先に立候補したのは筋肉パーティーの四人組だったです。するとそれを皮切りに俺も私もと次々と冒険者たちが挙手をし始めたです。あとわたしはお金や名誉を積まれても筋肉パーティーには絶対入らないです。
勇者様も早く! 早く挙手を!
「あー、帰りてぇー」
……するわけないですよねー。知ってたです。
「ただし!」
ギン! とした鋭い一瞥をラティーシャ王女様は浮かれた冒険者たちにくれてやったです。
「弱い者を参加させるわけにはいかん。簡単な試験を行ってもらう」
「試験だって?」
誰かが訊いたです。
王女様は一つ頷くと、近くにあった椅子に座って右手の肘をテーブルに置いたです。
「私と、腕相撲だ!」
「……」
「……」
「……」
あんなに騒いでいたみんながその一言だけで沈黙してしまったです。王女様の後ろの兵士さんたちもなんか頭に手をやったりして苦悩を表現しているです。
腕相撲って、あんな細身の王女様がギルドの冒険者相手になにを言ってるですか?
「おいおい、姫様、正気か?」
筋肉の一人が横柄な口調で確認したです。普通なら不敬罪で咎められそうですが、後ろの兵士さんたちはなにも言わないですね。寧ろこの王女様についてはいろいろ諦めてるような雰囲気までしてくるです。
「私は正気だ。安心しろ。勝てとは言わん。この私を唸らせた猛者のみを今回のドラゴン討伐に同行させる」
そう言った王女様は――ニヤリ。なんか自信満々に笑ったですよ。そして冒険者たちの中からプツンとなにかが切れる音が聞こえた気がしたです。
「王宮暮らしのお姫様に俺たちが勝てないって?」
「そうまで言われちゃ黙ってられんなぁ! ガハハ!」
「ハッ! これは王女様と握手できるチャンスでは!」
「いいねぇ。酔い覚ましにやってやんよぉ!」
まずは筋肉四人組が王女様の前に並んだです。最初の一人が王女様の対面にドカリと座って、ちょっと手汗を服で拭ってから王女様の手を掴んだです。
「ふむ、なかなかよい筋肉だ」
「お? わかるか? 毎日鍛えてんだぜ」
なにか通じ合ってるです。
「だ、大丈夫ですか? あの筋肉たち、王女様の手をポッキリしちゃったりしないですかね?」
わたしは不安になって勇者様を見ると、勇者様はどこか気の毒そうな目で王女様ではなく筋肉たちを見ていたです。
「大丈夫じゃないな。あのお姫様……筋力パラメータが怪物だ」
「え?」
ドゴォオオオン!!
なにかが爆発したような音が聞こえたです。
「なっ!?」
見ると、王女様に腕相撲を挑んだ筋肉が宙を舞っていたです。腕相撲をしたテーブルは真っ二つに割れて……な、なにが起こったですか!?
「……」
「……」
「……」
みんな、目の前でなにが起こったのか理解できずポカンとしていたです。勇者様と後ろの兵士さんたちだけが最初からこうなることを予想していたみたいに落ち着いているです。
冒険者たちの誰もが騒然とする中――
「さあ、次だ。遠慮せず全力でかかってこい!」
王女様は、ずいぶんと楽しそうに笑っていたです。
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