それでも俺は帰りたい~最強勇者は重度の帰りたい病~

夙多史

第十二話 すごすぎるです勇者様

 わたしの村を襲っていたのはエッジベアの群れだったです。
 森に出現したエッジベアは群れから逸れたものだったようですが……おかしいです。エッジベアは群れを作るような魔物じゃなかったはずです。

「これは……酷いな」

 勇者様が村の入口から惨状を見回して顔を引き攣らせたです。村の家々は壁が穴だらけになっていたり、崩れていたり、酷いところは火事にまでなっていたです。
 村の中にはエッジベアが徘徊しているですが、村人は一人もいないです。もう鐘も鳴っていないですから、きっとみんな緊急避難所の天空神教会に逃げ込んだと思うです。

 食べられたわけではない……はずです。
 そう思いたくても、村の中をうろうろしている恐ろしい魔物たちを見ると、最悪の想像が頭の中に浮かんできて足が竦んでしまいそうになるです。

「行くぞ」

 なのに、勇者様はまったく臆することなく村の中に入っていったです。さっきの森で一匹のエッジベアに怯えていたように見えたのは、もしかするとわたしの勘違いだったかもしれないです。
 わたしたちに気づいたエッジベアたちが唸りを上げて集まってきたです。一、二……十匹はいるですよ。これ全部と戦うなんてできるですか?

「この村はしばらく俺が帰る場所になるかもしれないんだ! 熊畜生ごときに荒らされてたまるかよ!」

 青い眼になった勇者様が叫ぶと、バッ! と両腕を開くように広げたです。

「〈創造〉――九○式戦車。とりあえず十台!」

 瞬間、わたしたちの周りに見たこともない大きななにかが出現したです。二つのイモムシのような足にずんぐりとした体、前に突き出した一本の長い角。鉄の魔物……ゴーレムの類ですか? よく見るとあの角は砲台みたいになってるです。

「うっは、すげえホントに出てきたし! しかもイメージ通り自動で動く! ……よし」

 勇者様が召喚した鉄の魔物はお腹に響く駆動音を上げて前に出ると、ガコンと大砲の照準をエッジベアたちに向けたです。
 そして――

「焼き払えぇーッ!!」

 勇者様の号令と同時にとんでもない爆撃音が響いたです。エッジベアたちはなすすべもなく、鉄の魔物の砲撃によって木っ端微塵になったり、吹き飛んだり……な、なんなんですかこれは!? あのエッジベアの群れがまるで抵抗もできずに駆逐されてしまったです!?
 音に集まってきた他のエッジベアも次々と消し飛んでいくです。

「あわわ……あわわわわ……」

 砲撃の音が止むまでの数分間を、わたしは腰が抜けそうになりながらも呆然と見ているだけだったです。

「フハハハハハ! 見ろ、魔物がゴミのようだ!」

 すごい……すごすぎるです勇者様。光の魔法だけじゃなく、こんな強いゴーレムまで大量に召喚できてしまうなんて。勇者様はもしかして、一人で王国の軍隊以上の力を持ってたりするですか……?

「うぷっ……言ってみたかった台詞言いまくったけど、実際はこれ流石にちょっとグロいな。動物愛護団体に怒られないよね? 大丈夫よね? ――あっ、やべ。家までふっ飛ばしちまった。俺が帰ることになる家だったかもしれないのに、ミスったなこりゃ」

 エッジベアの山積みになった死体を見て勇者様は口元を押さえたですが、すぐに頭を振って表情を改めたです。
 すると、鉄の魔物がすーっと空気に溶けるように消えていったです。

「三分で消えるっていうのも仕様通りだな。無から有を生むチートだと思ったけど、タイムリミットがあるってどうだろ? まあ、何回でも〈創造〉できるからチートか」

 勇者様はなにかぶつぶつ独り言を言っていたですが、今蹴散らされたエッジベアが全てではないと思うです。急いで村のみんな探すです。

「勇者様、村のみんなは教会に避難しているはずです。案内するです」
「ん? ああ、そうだな。面倒臭い仕事は早いとこ片づけてしまおう」

 頷き合うと、わたしと勇者様は駆け足で村の奥にある天空神教会へと向かったです。

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