それでも俺は帰りたい~最強勇者は重度の帰りたい病~

夙多史

第四話 俺たちの未来はバラ色だ

「ギルドってさ、派遣会社だよな」
「また外に出ていきなりなにを言ってるですか?」

 隣に並ぶエヴリルが真っ白い視線で俺を見上げてくる。失敬な。いきなりじゃない。三歩は歩いたぞ。

「俺の世界にはな。労働者を他の職場に放り込んで『仕事終わるまで帰んじゃねえぞコロスゾ』っていう真っ黒い企業があって、なんかそれに似てるなぁって」
「よくわからんですが、とりあえずそのハケンガイシャには謝った方がいい気がするです」
「それはさておき」
「勇者様から振ってきた話ですが!?」

 嫌だよ元の世界のお仕事をネタに会話するなんて。それ以上は気分が暗くなって帰りたくなる。もう帰りたいけども!

「この依頼だけど、本当にやんの……?」

 俺は勢いで内容を確かめずに持ち出してしまった依頼書を読んでげんなりした。ちなみに異世界の言語とか文字とか、そういう壁はなんやかんやでとっくに克服している。なんやかんやは便利な言葉。

「今さらなにを言うですか。引き受けたからにはちゃんと仕事するですよ」

 依頼書の内容はざっくりこう書かれていた。

【息子が昨日から帰ってきません。昨日少し喧嘩してしまったので、きっと家出したのだと思います。どうか息子を探して連れて帰って来てください。お願いします】

「捜索願は警察に提出しろよーっ!」
「なんですかケーサツって?」

 そうか、この世界には警察はないんだった。たかだか家出少年の捜索に軍が動くわけないし、その軍がいるから自警団なんてものは王都には存在しない。そうなるとギルドになるわけだ。

「帰ってこない息子を捜せって……手がかりくらいはあるんだろうな? なかったら泣くよ? 帰るよ?」
「帰っちゃダメです! まあ、わたしたちが受けられるランクではそこそこ厄介そうではあるですね」

 ギルドに所属する冒険者はお約束のようにランク付けされる。ランクは☆の数で表され、多ければ多いほど高ランクの冒険者という扱いになるんだ。最高で七つ星だったかな? もちろん依頼にもランクがあり、指定されたランク以上でないと受けられないものが多い。
 俺たちのランク? 聞いて驚け。なんと☆☆だ!

「こういう仕事をいっぱいこなして、もっとランクを上げていくですよ。勇者様の実力なら星五つ以上のハイランカーになるなんて簡単だと思うです」
「そうだな。高ランクになれば報酬も上がるし名誉も得る。各地から引っ張りだこで俺たちの未来はバラ色だ」
「ですです」
「だが断る」
「なんで!?」

 愕然とするエヴリル。わかってないな? 高ランクになるということがどういう意味なのか、この俺がしかと教えてやろう。

「そんな各地から引っ張りだこの大人気になっちまったら、俺はいつ帰ればいいんだ!! バラ色だと思ったら血の色だったって現実が待っている気がしてならない!! 現に王都のギルドに所属しているハイランカーは常にどっか行ってて見たことがない!!」
「勇者様はランクが上がっても勇者様な気がしてきたです……」
「おや? なぜそんな残念な奴を見るような目をしているのかなエヴリル君?」
「知らんです! もう早く依頼主に会いに行くですよ!」

 エヴリルはぷくっと頬を膨らませてさっさと歩いていった。このままそっと引き返せば帰れそうだったが、また神樹の杖で殴られるのは嫌なんで俺はしぶしぶついていくことにした。

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