ロシアンルーレットで異世界へ行ったら頭脳派の魔法使いになっていた件【三部作】
13-104.本番はこれからだ
「釣炎球!!」
ドゴッという派手な音と共に、黒衣の不可触の足元が爆発した。垂直に土塊が舞い上がり、小石が黒衣の不可触のバリアの中で踊る。ヒロは伸ばした右手の先からマナを地中に伸ばし、黒衣の不可触がその真上にきたタイミングで一気に点火・爆発させたのだ。それは、ついこの間習ったばかりの魔法であり、老魔法使いが実演してみせた、炎粒の応用技だった。
しかし、練習ではどうしても上手くいかなかった釣炎球の成功にも、ヒロは喜んではいなかった。単に足元の地面を吹き飛ばした程度でダメージを与えられる筈もない。
ヒロが足元に視線を落とす。黒衣の不可触が自身の風魔法でズタズタに切り裂いた、木の幹や枝がそこら中に散乱していた。
ヒロは、その中から木刀の代わりになりそうな堅い木の枝を手に取った。
本番はこれからだ。ヒロは自分の狙い通りに行くことを願った。
◇◇◇
――ザザッ。
足元から不意の攻撃を受けた黒衣の不可触は後ずさりした。爆発した土塊に混じって吹き飛んだ藪草に火がついて、ぶすぶすと黒煙を上げる。
(逃がすか!)
ヒロは黒衣の不可触の足元に狙いを定めて、釣炎球を次々と放つ。ヒロが左手の指をクイと動かす度に、黒衣の不可触の足元が爆発する。
やがて、黒衣の不可触の姿が灰色に掻き消された。黒衣の不可触の周りが煙で一杯となったからだ。火事になるほど激しくはないものの、黒衣の不可触の足元で次々と着火した藪草がもうもうと煙を上げる。
――酸欠。
ヒロは釣炎球で黒衣の不可触を仕止められるとは元より考えてはいなかった。黒衣の不可触が張ったバリアの内側の草を燃焼させる。それがヒロの狙いだった。
ヒロの脳裏に、ここで襲撃されスティール・メイデンが惨殺した小悪鬼を火葬したときの記憶がよみがえっていた。バリアの中で物を燃やせば酸素を消費する。酸欠になれば、バリアを解除しなければならなくなる。簡単な理屈だ。
黒衣の不可触がバリアを解除すれば、その鉄壁の防御も消える。その一瞬に全てを掛ける。それがヒロの狙いだった。
(そろそろか……)
ヒロは手にした木の棒を左脇に構え、低い体勢を取った。
 
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