ロシアンルーレットで異世界へ行ったら頭脳派の魔法使いになっていた件【三部作】
13-103.そっちが来ないなら、こっちから行くぞ
「魔法の盾」
ヒロが再び左手でシールドを張る。円形の盾だ。先程の魔法大盾と違って、今度の円盾は小さく、ヒロの顔と胸あたりまでしかカバーしていない。動き易さを優先した為なのだが、その厚みは、さっきの魔法大盾の倍以上はあった。ヒロは大きなバリアではなく、厚いバリアにすることで防御力を増すという選択をしたのだ。
厚い魔法盾を形成した所為なのか、頭から足迄カバーする魔法大盾と比べて少し透明度が落ちている。だが向こうが見えなく成る程ではない。ヒロは、六角模様の若干青みがかった半透明の盾で顔面をガードしながら、黒衣の不可触を睨みつけた。
ヒロの構えに違和感を感じたのか黒衣の不可触は足を止める。仮面の奥から微かに息が漏れるのがヒロにも聞こえた。黒衣の不可触は右手を上げヒロを指さす。その指先はヒロの顔面から少しだけ外に逸れていた。
――バシュッ。
黒衣の不可触の指先が青く光り、風が集まって小さな塊となった。それは刃ではなく、風の矢だった。ミカキーノのミスリルの鎧を苦もなく貫いた魔法だ。黒衣の不可触の指先から風の矢が放たれる。青白い空気の鏃が猛烈なスピードでヒロを襲った。
――ガキン!!
ヒロの魔法盾が高い金属音を立てる。黒衣の不可触が放った風の矢が、ヒロのシールドを掠って、軌道を逸らし、背後の林に吸い込まれていく。バサバサと枝葉が鳴った。
「どうした。当てないのか?」
ヒロは挑発した。先程もそうだったが、黒衣の不可触の攻撃はどことなく狙いが甘い。元々攻撃魔法が苦手なのか、それともわざと外しているのか。あるいは、さっきまで逃げ回っていた自分が、堂々と姿を表した事に警戒してのことか……。いずれにしても時間が稼げる。
(……まだ遠い。焦るな)
ヒロは自分に言い聞かせた。
「そっちが来ないなら、こっちから行くぞ」
そういってヒロは一歩踏み出した。黒衣の不可触の前の藪草が、風もないのにゆらりと動く。
――もう一歩。
ヒロは更に前進した。互いの距離が数歩詰まる。黒衣の不可触は右手を上げて肘を折り、手の平を左胸に当てる。風の大太刀魔法の予備動作だ。黒衣の不可触の指先が白く光った。
それを合図に、ヒロは魔法を発動した。
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