話題のラノベや投稿小説を無料で読むならノベルバ

僕だけが蘇生魔法を使える!

AW

4.最初の幸い

 僕たちは、クエスト掲示板に貼り紙をしたあと、一度ルーミィの家に帰ってご飯を食べることにした。手作りハンバーグだ。クラスの男子に見られたら命が危ないな。

「蘇生魔法って、どうやって掛けるの?やっぱり触らなきゃいけないの?」

「ん?そうだね。直接肌に、心臓のところに触れないといけない。そういうルールみたい」

「そう……なんだ。女の人だと、大変だね」

「まぁ、こればっかりは仕方ないよ」

 真っ赤な嘘です。こういうとき、他に使える人がいない魔法っていいね。本当は、触るのは服の上からでも、手足だけでも大丈夫なんだよね。だけどせっかくだから『俺ルール』を作ろう。なるべく女の子を蘇生するようにしないと自爆だな!



 ★☆★



「美味しい!!」

「えへっ!実は得意料理おはこなんだ!」

「この肉汁、食感、後味……完璧だよ!毎日食べたい感じ?これは美味しい!」

「えっ?毎日って……プロポーズしてるわけ?」

「“ハンバーグに”プロポーズしてるわけ!」

「ふ~ん、あたしがいないとハンバーグ食べられないのにね~」

「ルーミィがハンバーグ屋さんを始めたら毎日買いに行くし!お得意様になるし!」

「あっそ!そろそろ1度掲示板を見に行こうよ!
 こまめにチェックしないと、依頼者が増え過ぎて大変になるよ?」

「でも、ある程度は集まらないと早い者勝ちになっちゃうじゃん?明日からは、朝に貼り出して、夕方チェックしない?」

「でも、審査に時間が掛かったら蘇生が夜中になっちゃうわよ?場合によっては日付が変わるし!」

 確かに、夜中に死んだ人を触るのは怖いな!
 よく考えてみたら、既に腐敗してたり骨だったら、わざわざ胸を触る価値ないじゃん?あ、でも、生き返るときに微妙に触れる?めちゃ際どいな!!

「そだね!“朝貼ってお昼過ぎにチェックする”作戦でいこうか。または、“今日集まった依頼を明日こなす”でもいいけどね?」

「う~ん、やってみないと分からないわね。もし、今日既に依頼が来てたら、貼り紙を一旦剥がしておきましょう」

「うん、やりながら調整だね!てか、ルーミィはいつ浮遊魔法を練習するんだよ。ギルドについてこなくてもいいんだけど?」

「ボディーガードなんだから、ぴったりついていくわ!さぁ、早く行きましょ!!」

 ルーミィ、楽しそうだね……遊びじゃないんだけど!まだ命を扱うって意味が分かってないんだろうな。それは僕もだけど。



 ★☆★



『ルーミィちゃん!依頼が1件入ったわよ?』

 ギルドの受付のお姉さんだ!狼耳が麗しい!
 昔は僕の母さんも受付してたんだけど、父さんと付き合い始めてから引退したんだよね。やっぱり、受付嬢と冒険者って最高の出会いだよね!

「ちょっと、ロト!!余所見しないの!」

「あ、ごめん。ちょっと妄想入ってた」

「考えてることが大体分かるのが嫌だわ!
 っで、この依頼を見てみて……どうするの?」


【蘇生依頼書】

 蘇生対象:ギルハートレッド
 蘇生理由:相続問題の解決
 種族:人
 性別:男
 年齢:66
 死因:病死
 時期:2日前
 職業:商人
 業績:貿易ルートの確立
 報酬:○お金、物品、その他
 メモ:
 依頼者の関係:孫


 いきなり大ハズレきた~!!
 しかも、相続問題とか……いきなり重いし!
 どうしよ?
 もう少し(女の子の依頼が入るまで)待つ?


「依頼人と少し話をしてみようか?」

「そうね!最初の仕事だからね!」

 僕達は、受付の狼耳お姉様にお願いして、依頼者を呼んでもらった。


 ★☆★


『初めまして、ガルハートレッドと申します。貴女が蘇生魔法を?』

「いいえ、あたしじゃなくて、こっちの男の子です。あたしは秘書のルーミィです」

『そうですか。本当に死者を生き返らすことができるのですか?聖神教の最高司祭様にも、拝光教の教皇様にもできないことができるのですか?詐欺ではありませんよね?』

「やってみないと分かりませんが、多分できます」

 ん?自称秘書のルーミィが依頼書のメモ欄に数字を書いてる。
 -25?ソウルジャッジか。依頼者もチェックするんだ?そりゃそうだよね。

『因みに、報酬はいかほど必要になります?』

「先にお伝えしますが、純粋な病死の場合は、1分間しか余命が与えられないかもしれませんが、構いませんか?」

『その間に話をすることができるのなら、構いません』

「ご安心ください。蘇生後の1分間は健康な状態にあります。亡くなる直前までの記憶もあります。もし、命が尽きて亡くなる場合も、痛みや苦しみは生じません」

『それは便利な魔法ですね。で、報酬は?』

「あたしたちは報酬を決められません。貴方がギルハートレッドさんの命の価値を判断してお支払ください!金額を聞いてあたしたちが蘇生を断ることはありませんから」

 ルーミィが言い切った!かっこよ!!

『爺の1分間の命の価値……ですか。今ここで決めねばなりませんか?』

「はい、今ここでお願いします。ただし、成功報酬で構いません」

『そうですね……これでいかがですか?』

 そう言いながら、依頼人のガルハートレッドさんは指を3本立てる。3リル?30000リル?僕はルーミィをチラ見する。ルーミィにも分からないらしい。

 多分、この人はこっちを試してる。3リル(300円)でも30000リル(300万円)でも構わないんだろうね。子どもをバカにしてるんだよ!逆に試してやる!

「30万リル(3000万円)ですね、分かりました。ご依頼を受けましょう。ご遺体まで案内してください」

 流れるように言い切った!どやどや?
 ルーミィが真っ青な顔で見てくる。
 ガルハートレッドさんは僕の瞳を射抜くような鋭い眼差しだ。僕もそれを直視して応える!

『感謝いたします、後ほど馬車を迎えに来させますので、ギルドの前でお待ちください』

「はい、分かりました」



 ★☆★



「ロト~!!なにやってるのよ!?殺されちゃうわよ?-25って、犯罪者級なんだから!」

「だって……向こうが先に僕たちを試したんだよ?ちょっとカチンときちゃった……それに、誰かさんが金持ちからはぼったくりなさいって言ってたし」

「ぼったくれなんて言ってないし!
 あの人はフィーネ屈指の大商人だからお金はあるわ。それに、金額を訂正しなかった。プライドもあるだろうけど、それだけ払う価値があるってことだわ!でも、早めに腕利きの護衛を雇わないと、命がいくつあっても足りないわね……」

 どうしよ。
 ここで死んだらリンネ様が怒りそうだね!
 でも、ここで逃げたらもっと怒りそうだ!!
 運命に立ち向かうぞ!

「ルーミィ、危ないと思ったら逃げていいからね?僕は逃げない。立ち向かう!」

「死ぬときは一緒よ!」

「いや、死ぬ予定はないから!危なくなったら1人だけ飛んで逃げるから!」

「薄情っ!!」



 ★☆★



『こちらが主人ギルハートレッドの遺体です。今晩中に荼毘に付すところでした。これも運命のなせる業でしょうか』

 ギルハートレッドさんの奥様が案内してくれた遺体は、確かに言い残したことがあるかのような苦痛の表情を浮かべている。

「相続問題の解決とうかがいましたが、僕たちは秘密を守りますので、ご主人様が召されるまで看取らせていただけますか?」

『ふふっ、しっかりした子ね。私は何も心配なんてしていませんことよ?是非とも看取ってあげて。主人も、奇跡を叶えた勇者と一緒に居たいでしょうから!』

「勇者!?リンネ様みたいな?滅相もない!僕なんてこれしか能がない小市民ですよ!」

『ふふっ!死者蘇生なんて神のお力です。胸を張ってください、小さな勇者さん』

「……ありがとうございます。では、始めます!」


 僕はギルハートレッドさんの胸元にそっと左手をかざす。必要ないけど、後々のために触れておく。冷たい、固い、これが死んだ人か……。

 魔力を練り上げる。僕の心臓、魂のあるところ……熱い力が湧き出ている。目を閉じて力を感じとる。熱い力を……優しく動かしていく。力は、心臓……肩……肘を通って、左手の掌に集まる!

 ゆっくり目を開いて左手を見つめる。
 銀色に輝く聖なる光……勇者リンネ様の髪の色と同じだ!本当にリンネ様が授けてくれた力なんだ!正直、呪文がなくても発動するみたいだけど、雰囲気的に、何かしゃべった方がいいみたい。

「……この者の魂に、聖なる銀の光を与えん!
 天より還れ、レイジング・スピリット!!」


 激しい光の奔流がギルハートレッドさんの身体を包み込む!身体が光を纏う!青ざめた皮膚が色を取り戻していき、やがて……うっすらと両目が開く。

 ルーミィも、奥様も、ガルハートレッドさんも……その場に居合わせた全員が、圧倒的な奇跡を目の当たりにして、堪えられずに涙を流す。部屋中に嗚咽が満ちる。僕一人が取り残された感じだ……。

『私は……そうか、奇跡の力で一時的な生を与えられたのか……ありがとう!少年よ、名前を教えてほしい』

「僕は、僕はロト!勇者リンネ様の意志を継ぐものです。さぁ、限られた時間は僅かです。奥様やお孫さんとの時間をお過ごしください!」


 僕とルーミィは部屋の隅に下がった。
 ルーミィはまだ泣き続けている。別に君の身内でも何でもない赤の他人でしょ!?こんなに泣き虫だったんだ?こんなのに剣で負けてうじうじしてた自分が恥ずかしいわ!


 余命は5分間くらいあった。説明にあった1分間というのは、最短時間なのかもしれない。人が亡くなる場面を初めて体験した……悲しみが込み上げてくる。これが命の重み……。

『勇者ロト様……本当に、本当に、本当にありがとうございました!全て解決致しました。それ以上に奇跡をありがとう!もうあの人に何も伝えることが叶わず、何も伝えてもらえないものと諦めておりました。主人も私も、幸せです!!本当に、奇跡をありがとうございました!』

『力を……疑ってすまなかった!祖父や祖母が喜ぶ姿を見れて私も幸せだ。命の価値か……下手な交渉をしようとした私が愚かだった!全財産を捧げるほどの価値があった!本当にすまなかった!いや、本当にありがとう!ありがとう!!』

 みんながまだ泣いてる。
 僕たちは執事さんに連れられて屋敷を後にした。脚がうまく動いてくれなかった。
 お金の方は、約束以上の金額をギルドの僕たちのクランに振り込んでくれるそうだ。


 さぁ、初仕事が終わった。ゆっくり深呼吸をする。屈伸運動で凝り固まった脚の筋肉を解す。
 魔力はかなり消耗したけど、気を失うほどじゃない。総魔力量の半分くらいがぶっ飛んでる。もしかして、レベル上げて総魔力量が増えたら1日に2回以上蘇生魔法を使えるようになる?これは、要検証だね!!

 それにしても、依頼人を含めてみんなが“幸せ”って言ってくれた。リンネ様が僕に託した願い、何となく分かった気がする。明日からも頑張るぞ! 

「って、ルーミィまだ泣いてるの!?」

「だって~!!あんな奇跡を目の前で見ちゃったら涙が止まるわけないよ!!」

「とりあえず、ギルドに寄ってからルーミィの家に帰るよ?泣かないでよ、周りの人が僕を見る目が痛すぎるから!!」

「僕だけが蘇生魔法を使える!」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く