転生先は現人神の女神様

リアフィス

09 素材と報酬

「終わったわよ」
「呼んできます!」

テアさんが走ってった。大変だなあの人。今日だけで何往復してるんだ?
座って待ってたらドタドタと音がして扉が開き、強面おじさんがいた。

「おう! 早すぎんだろ!」
「シードラゴンだけだったわよ。多分」
「なんだ、多分って」
「飛び抜けた魔力量は他にいなかった」
「ああ、なら問題ないだろう。現場の被害は?」
「少なくとも私が着いてからは無いんじゃない? ”ドラゴンブレス”は受け止めたし、戦闘は船があるより奥、沖に出て戦ったし。着く前は知らない」
「ふむ、そうかそうか。ああ、報酬の話だが、シードラゴンのサイズで次第で上乗せするとか言ってたぞ? 後素材は別料金な」
「どこが売れるの?」
「龍種は全身だ! 牙に爪、目や鱗はもちろん血だって薬になるぞ!」
「肉は?」
「当然食う! 高級食材だ! シードラゴンなんかめったに取れん! 基本こっちが餌だからな、がははは!」
「……ふむ。解体ナイフ頂戴? 報酬から引いといて」
「テア! ナイフ!」

スッ。 テアさんが無言でナイフを取り出した。

「登録した直後ですし、持ってないだろうなと」
「そ、そうか」

テアさん優秀ですね。

「さて、どこで解体しようか」
「隣に買い取った魔物素材の保存や解体をしてる場所があるぞ」
「40メートル級入る?」
「は? 入るわけねぇだろ。そんなでけぇのかよ。そんなのどこに……って”ストレージ”か」
「そうよー。王都の外で解体して、持ってきたほうがいいかしら?」
「あー、ちょっと待ってくれ。どうせなら騎士にも解体する前に見てもらおう。解体ナイフの使い方は大丈夫か?」
「突き刺すだけじゃないの?」
「テア、説明してやってくれ。俺は連絡入れてくる」
「はい」


テアさんから説明を受けたが、素晴らしき、ゲーム仕様解体ナイフ。
言われた通り、ステータスリングにナイフを当て、リンクさせる。
するとステータスリングの設定に解体ナイフの設定が追加される。
皮のサイズ、肉のサイズ、内蔵や血はどうするかを設定するとその通りにその場に解体されるそうだ。当然入れ物は自分で用意する必要があるそうだが。
よって、まず解体ナイフを使う前に血抜き。
その後にナイフで皮や肉などに分ける。多少残っていた血はしょうがないと。
皮は基本1枚で、後で使うところや欲しいところを自分達で切るんだってさ。

血抜きして、お腹切って中身出してとかしなくて良いんだね!
ちなみにこのナイフもアーティファクトでした。まあ、ですよね。

肉は部位ごとに1キロブロック分割にしとこうか。
説明聞いて設定してたらギルマスが帰ってきて、設定終わる頃に騎士が来た。

「おや、隊長」

ヘルムート隊長だった。ご苦労さまです。
隊長は私を顔、胸、お腹、足……と流し見て……

「ルナフェリア様……なんかでかくなってません?」
「大体15歳。流石に幼すぎると思ったんだけど、全然伸びなかったね。まあ、これに吸われたんだろうね」

むにむに。

「そうですか? 結構伸びたと思いますけど……」
「5年で14センチよ。10から15の5年で。全然でしょう?」
「……確かにそうですね」
「まあ、やたら体付きが良くなって胸が育ったのだけど、それは置いといて……」

ギルマスの方に視線を向けると……。

「おう! じゃあ移動するか」
「西門を出たところでお願いします」
「分かったわ。じゃあ行きましょう」

ギルマスと隊長と一緒に外へ出ると、1番隊の騎士が数人ほど待機していた。
馬車で。解体する物が物だけに、見張りらしい。……それだけでは無いようだが。
貴族達への牽制も兼ねてるんだろう。1番隊、しかも隊長付きだ。
40メートル級のシードラゴンを単独討伐。騎士はともかく冒険者達の前でもやったから、情報規制や情報操作は恐らく無理だろう。
そうなると当然私を取り込みたい、もしくは縁を持ちたい者が出てくるだろう。
しかし私の正体を知っている王族からしたら『余計な事をするな』一択だろう。
そこでそれらを牽制するために隊長付きで1番隊を動かした……と言うところか。
まあ、その辺は任せよう。馬車に乗り込み移動。王都広いんだこれが。

「ん、ギルマス?」
「おう、なんだ?」
「シードラゴンの血ってどのぐらいの量で取引される?」
「大体100ミリリットルだな」
「少ないのね……」
「ドラゴンの血ですからね。それでも結構な値段しましたよね?」
「うむ、するな」
「ふむ……。問題はあれからどれ位取れるかね……」

40メートル級のシードラゴンって血どのぐらいよ? ……知らんがな。
5リットルの入れ物数個用意して、100ミリリットルに分ければいいか。
そういえばこの世界って単位が一緒なんだな……。
まあ、理由なんてどうでもいいか。
創造神様との話題として頭の隅に追いやっとこう。

「……《物質創造》」

《物質創造》でガラス板を作って《魔導工学》で形を作る。
《魔導工学》は生産スキルで、実は家を作ってる時にスキルを取った。
このスキルは魔道具を作るための魔法陣の書き込みや、魔石の加工ができたり、魔装具を作るための魔導文字を書き込んだりできる。
《魔導工学》を使用するには対象に触れている必要があるが、便利なのは確か。
スキルレベルは無く、どこまで魔法を理解しているかが全てらしい。

魔法やスキルの簡単な説明はポップアップで出るけど、結局はどう使うかよな。
まあ、何ができるかとかは後でのんびり研究しよう。どうせ時間は沢山ある。


ガラスを作ってからガラス瓶に加工して数個作成する。
作っては投げ、作っては投げ。”ストレージ”にね?
ある程度作ってから顔を上げると、皆がガン見していた。

「どうしたの?」
「……何も言うまい……」
「ガラスと言う物質で入れ物を作っただけよ」
「ガラス……ですか……」

まあ、ガラスはガラスでも強化ガラスだけど。

「隊長! 到着しました!」
「分かった! では、解体しましょうか」

ぞろぞろと降りると、西門からちょっとだけ離れて、道から少し逸れた所だ。
至って普通の平原である。通行人いるが?
……まあ、騎士がここで良いって言ってるんだから良いか。

さて、問題はどうやって血を抜くかだが……。
……実物見ながら考えるか。
空中に手を伸ばし”ストレージ”に腕突っ込むと、途中から腕が消える。
シードラゴンどこだこら。あ、これか。

「出すわよー?」
「おう! 頼む!」
「お願いします」

”ストレージ”の中の物を掴んで引っ張りだす。

「どーん。……あっあっ」

頭から直立で出てきたシードラゴンの体が王都の方に……。

「「「ちょ!」」」
「”プレスティージオ”」

倒れるけど途中で止める。

「はーい、倒れるのはこっちよー」

王都とは逆側にそっと寝かせる。

「ルナフェリア様……勘弁して下さい」
「……今のはわざとじゃないわよ?」

ヘルムート隊長が超見てくる! めっちゃ疑ってる!
ぷいっと視線を外す。

「さて、どう血を抜こうかしら……」
「……ハァ」

溜息つくんじゃないよ隊長。ギルマスに肩叩かれてるし。
私の味方は居なかった。

「誰もシードラゴンに近づけぬように!」
「「「は!」」」

思ったんだけど、普通のガラス瓶じゃダメじゃない?
血って空気に触れちゃダメだよね?
ああ、でも”ストレージ”だと時間経過ないのか……。

うーん、もう瓶とか言わずタンク作るか。
下の方に蛇口みたいの作ってそこから小出しできるようにしよう。
そのタンクから余分な空気を抜いて、冷やしておく魔道具にしてしまうか。
人間の血液の場合、分離させて保存させてたような気がするけど、調合に使うこれはどうなんだろうね。

まあ、さっさと作るか。蓋はゴム使って完全に密閉。
更に蓋部分に《風魔法》で中の余分な空気を抜いて貰って……。
蓋とは別に本体の方は《氷魔法》で内部を冷却っと。
壊れないように《魔導工学》の”リインフォースメント”を忘れずに。
強化ガラスも真っ青の耐久になってるが、都合がいいから気にしない方面で。
これに入れて”ストレージ”に放り込めばいいな!

氷に穴開けて、穴に結界張って水が混じらないようにタンクに移すか。
後はオリジナル魔法の方で血を抜くか……。
どうせなら真空の中で作業するか。私に影響ないし。

「それじゃあ、作業するわね。結界内部に入らないように。死ぬわよ」
「えっ?」
「中の空気抜いて血だけ処理しちゃうわ」
「お、おう。とりあえず結界内に入らなければ良いんだな?」
「そうね。……あ? 待って」
「なんだ?」
「……真空にしたら氷って……昇華する? フリーズドライの完成?」

……ダメだねこれは。

「何言ってんのか全然分かんねぇ」

気にしないでくれギルマス。

「やっぱなんでもない、普通に血抜くわ……」
「お、おう」

難しく考えるのをやめよう。魔力でゴリ押し1番。
穴開ける部分の氷を《火魔法》で溶かします。
結界で筒を作り、シードラゴンとタンクを繋ぐ。
後はシードラゴンに穴を開けて、血を流し込むっと。

ダバダバ、ダバダバダバ。

「血を抜いたらナイフぶっ刺せばいいのよね?」
「そうだな」

しばらくしたら全部抜けたので、解体しますか。
シードラゴンを1回浮かせて、まず氷を砕いて外そう。
氷にそっと手を添えて……

「ブレイク」

ピシピシピシ、パリィン!

そしたらシードラゴンの下に”マテリアルシールド”で器を作る。
そんでナイフをぶっ刺す。
するとナイフから無数の光がシードラゴンの体に走り、設定通りに分解された。

「おおー。面白いわね」
「未だに原理が分からないんですよね、これ」
「そうなのね」
「まあ、気にしてんの一部だけだがな」

私も原理は別に知らなくてもいいかな。
創造神様に聞いても『そういう物』って返ってきそう。

端っこに”ストレージ”を開いて、”マテリアルシールド”ごと突っ込む。
これで回収完了したので皆で撤収する。
隊長さんも含め、1人1キロずつ肉をプレゼントした。
羨ましそうな顔で見てくる強面のおっさんがうざかったのでちゃんとあげた。
肉とか数えるのも面倒だから、こんな数個ぐらいあげてもいいだろう。
数十トンは普通にあるだろうからね……。細い言っても40メートル級だし。

冒険者ギルドに戻ってギルマスと肉や鱗、血に爪や牙などの値段を決める。
隊長達はサイズは見たので一旦戻って、お金を持ってくるらしい。
そう取れるもんじゃない挙句に状態もいいため、かなり高値になる。
本来はギルドが冒険者から買い取って、ギルドで保存し、相手と取引になるが、今回は討伐した私が”ストレージ”で保存が完璧というのと、後で私を害そうとしても不可能――権力的にも――だろうと言う事になり、ギルド、私、相手との話し合いで値段を決め、決まった値段の内数%をギルドへ渡すことになった。
珍しいだけに取引額がほぼ言い値のため、この方が儲かる。
ギルドが情報と取引場所を提供してくれるし、買い手が来たら呼んでくれる事になった。

必要な事は決め終わって少ししたら、ヘルムート隊長が来て平民なら数十年は暮らせるだろうって金額の報酬を貰った。
多くない?と聞いたら、港街潰されるよりは安いもんだと。
ついでに王様が肉食べたいから売って欲しいと。

……しょうがない、お城行くか。

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