転生先は現人神の女神様

リアフィス

05 王都王城

1人で散々悩んでるうちにお城に到着した。
庭師に整えられたであろうかなり広い敷地に船着場が存在し、そこから上陸する。城と壁の距離を見る限り大体中間ぐらいにあるんだろう。

「では、ご案内致します。途中侍女と変わり王様と話をつけてくるのでお部屋でお待ち下さい」
「ん、分かった」

隊長達に連れられてお城の中を移動。大国だけあってどでかいお城だ。
これは部屋覚えるだけで一苦労だろうな……。
ぬ? 正面からものすごいスピードでメイドさんが歩いて来た。
走ってるんじゃないか? どうなってんだあれ。

「む、ブリュンヒルデ。いいところに来た」
「御三方ともご無事で。片付きましたか?」
「ああ、これから王様へ報告に行くところだ」
「然様でございますか。すれ違いにならず良うございました」

ヘルムート隊長とブリュンヒルデと呼ばれていた侍女が話してる。
うん、異世界だのぅ……。
いやまぁ、少し前まで私達の後ろを騎士達がぞろぞろ歩いてたんだけどさ。
本物のメイドさんですよ! 職業メイドさん! 動作が綺麗だねぇ。

「というわけでこちらの御方を頼む。丁重にな!」
「畏まりました。ご案内いたします」

ほいほい付いていこう。
途中まで隊長達と一緒で、途中から別れる。
隊長達は王様の元へ、私は客室で待機。美味しい紅茶をいただきました。

・・・・・・
・・・


迎えに来たヘルムート隊長にほいほい付いて行くことしばらく。
正面に大きな門と左右に立つ2人の騎士が見えてきた。

2人とも《剣術 LV7》の《盾術 Lv6》か。近衛ならこんなところか。
スキルレベルは1~10
1~2 使い始め。魔術師。
3~4 一般。騎士。
5~6 師範代。隊長格。魔法師。
7~8 ベテラン。
9~0 Sランク冒険者。
だそうだ。
大体の人は3か4が基本らしいから、この2人はエリートだね。
創造神様からの知識だからズレてる可能性もあるけど。
あの人地味に抜けてるから『前の知識だったてへぺろっ』とかありそう。
オリジナル魔法を使える者が魔導師とか呼ばれるようだ。結構てきとーだな。
まあ、置いとこう。

「そういえば隊長や」
「どうしました?」
「細かい礼儀作法知らないんだけど?」
「それに関しては大丈夫です」
「ふむ。確か身分制度、大事なんでしょう?」
「……ええ。かなり」

一瞬隊長が身分制度と言った時に驚いたな。そんな馬鹿っぽい?
あ、隊長達に対する態度の問題かな? んー、今更だな。
そんなことより。

「はて、どうするべきかのぅ……」
「えっと、普通に会話して頂ければ……」

うん、そうじゃないなぁ。と言うかそんな野蛮に見えます?
思わずジト目でガン見するぞ。

「あ、えっと、その……」

ああ、うん。私が暴れたら君達じゃ止められないだろうしね。そうだね。
大丈夫。怒ってない。怒ってないよ。

「王様次第かな……」

うん。結局どう出るかは王様次第だな。善良な王様かそれとも……。
王都を見た限り恐らくは優秀な王様なんだろうが。まあ、会えば分かる。
隊長が微妙な顔してるが華麗にスルー。そして大きな門もスルー。
あるぇー? 謁見の間かと思ったけど違うのかな? とことこ歩いて行く。
大きな門から歩くこと暫し……。扉の前に立つ近衛を発見。
おや、ここっぽいな。近衛騎士団副隊長のヨーゼフ。
個人情報保護法? いえ、知らない子ですね。

「どうぞ」

隊長に付いて部屋に入ると入り口に近衛騎士隊長、ヨハン隊長とハンネ隊長がおり、正面にがっちりしたおじ様とできる男的な人、更に爽やかイケメンがいる。
既に私を見ている隊長2人以外が私を見て軽く目を見開いたようだけどスルー。

ここは執務室かな? 机の上に紙沢山あるし。と言うか周りが本やら資料やら紙だらけだな。……紙はあるのか、この世界。王の執務室だし高級品だとしてもあるのは当然か。

「よく来てくれた。まずは礼を言おう。魔物の群れを倒してくれたようだな。ヘルムート達から聞いた、ありがとうな」

がっちりしたおじ様がそう言った。《真実の魔眼》でポップアップ出てるけど、王様のようだ。できる男が宰相、爽やかイケメンが第1王子。
王太子までいるとは……。ふむ、この国なら大丈夫そうか。
《真実の魔眼》は便利だなぁ……。

「完全にたまたまだし、こっちにも理由があったから気にしないでいいわ」
「理由?」
「うん。これから住もうとしてる場所が無くなったら困るでしょう?」
「この国に住むのか?」
「ダメ?」

ダメなら次は東のマーストかなぁ……。
王が宰相をちらっと見ると……

「西のアクウェスでは無く、うちですか?」

と聞いてくるが……。答えは簡単。

「あそこ行ったら身動き取れ無くなりそうだし?」
「……なるほど」

あ、やっぱりそういう反応なの?他の皆もうんうん頷いてるし。
アクウェス法国。人間至上主義の国。誰がそんなところに行くかと。
そんなことに付き合うつもりはさらさらない。

「ふむ。我が国としては全く問題がない。できるこ――」
「あ、『神』として力は貸さないからね」
「ぬ……」

先に釘を差しておかないとね。《真実の魔眼》で思考はもちろん過去も見えるんだ。未来は見えないけど。

「……ただし、この後教会が空き次第ステータスリングを貰って冒険者登録するつもり。よって、『冒険者として』協力はできるかもね?」
「……ふむ」
「そもそも、信じるの?」
「本当に女神かどうか、か?」
「ええ」

これ気になる。いきなり、しかも少女が神です。とか来ても『は?』だよね。

「ステータスボールにそう出てたんだろう?」
「「「はい」」」
「……こいつらがこう言ってるからなぁ」
「現状ボールはともかく、ステータスリングを誤魔化す方法は無いと言われています」
「ふむ……」
「実はここにステータスリングを用意してあるのですが。もしよければ見せて貰えないでしょうか?」
「確認が取れたら我も対応を変えるぞ?」

王様が宰相を軽く睨みつつ確認を取っている。うん、宰相に言われてその態度だったの知ってるから。女神は寛容なのです。

「見せるのはいいけど、いいの? お金なら多少持ってるけれど?」
「見せてくれるならプレゼントするさ。元々お城には3個ほど常備しているんだ。生まれた子供のためだったり、つけた腕ごと持ってかれた兵のためとか……な」
「ああ、うん。いくら外せなくても腕ごと持ってかれたりしたら無くなるか」
「そういうことだ」
「では、こちらを。リングに腕を通し、どの位置でもいいので固定したいところに10秒ほど当てて下さい。そうするとゆっくりリングが閉じていくので、カチと音がなるまでそのままで」
「分かった」

左手首のところでいいかなー。関節からは避けてっと……。

「触れればステータスが見れます。他人に見せるときは触れたままスライドさせて下さい。表示させるものを設定するときは長く触れていて下さい」

カチ。

「離していいですよ」
「見せるときはスライドだったね」
「はい」

宰相さんの説明通りに触れてそのままスライドする。すると薄い青のディスプレイが表示され、そこにステータスが書かれている。


名前:ルナフェリア
種族:女神
性別:無性女性形
職業:月の女神
称号:夜と魔を司る者
年齢:90
スキル
【武闘】

【魔法】
    《魔力操作 Lv10》 《無魔法 Lv10》
    《火魔法 Lv10》 《水魔法 Lv10》 《風魔法 Lv10》 《土魔法 Lv10》 《光魔法 Lv10》 《闇魔法 Lv10》 《氷魔法 Lv10》 《雷魔法 Lv10》 《結界魔法 Lv10》 《空間魔法 Lv10》 《重力魔法 Lv10》
【生産】

【身体】
    《魔力強化 Lv10》
【その他】
    《思考加速》 《並列思考》 《並列魔法 Lv10》
    《空適正 Lv10》 《夜適正 Lv10》 《魔法適正 Lv10》
【種族】
    《月の魔眼》 《月の祝福》 《月の魔導》 《飛行 Lv10》
    《物理無効》 《痛覚無効》 《環境効果無効》 《状態異常無効》
【固有】
    《真実の魔眼》 《多重存在》 《物質創造》 《魂攻撃無効》
【所持称号】
    一般

    固有
        [創造神の御使い] [月の女神] [現人神] [夜と魔を司る者]
        [転生者]


「うむ。うむ?」

なぜ全員固まってるのか。王様や宰相、近衛の人はまだしも、なぜ隊長達まで。

「なんで隊長達まで固まってるの? 知ってるでしょうに」
「い、いや。ボールの方にはスキルと所持称号は表示されないから……」
「ああ、スキルを見て固まったのね」
「ええ、まぁ……」
「全部Lv10じゃないか……」
「知らないスキルもありますね……」
「《物理無効》に《状態異常無効》、更に《魂攻撃無効》とか、戦う場合魔法戦? 無理だろ……」
「ドヤァ」

もう腕くんで仁王立ちしちゃう。
この国には世話になるし、ある程度教えてあげるか。
弱点になるから普通手の内は教えないだろうが……ねぇ?

「教えてほしいスキルを言いたまえ、教えてあげよう」
「いいんですか?」
「いいよ?」
「気になるのはやはり種族スキルか……」
「まぁ、そうだよねー。じゃあ、説明しよう!」

《月の魔眼》
    空から地上を眺めているように見ることができる。
    非常に強力な魅了効果を持つ。マナや魔力に関する物が見える。
《月の祝福》
    マナや魔力に関する効果が上昇する。周囲のマナが活性化する。
《月の魔導》
    マナと魔力を自在に操れる。マナや魔力が関わる物の解析が可能。

「と、言うわけだ」
「ま、マナってあれですか!? 空中を漂ってると言われるあの!」
「え、ええ。そうね。それの事よ」
「あれが見えるどころか操れるなんて……!」
「あー、ハンネにスイッチ入ったなこりゃ……」
「魔法バカだからなぁ……」

魔法師団隊長のハンネは魔法バカらしい。目の色が変わった。
あ、近衛兵に連れてかれた……。さらば……。
その後、転生者やら年齢のことやらを話し、《真実の魔眼》についても話した。

《真実の魔眼》
    思考や過去を見通す神の魔眼。高精細鑑定、高精細分析の効果も持つ。
    神は欺けない。
《高精細鑑定》
    対象の物体を詳しく鑑定する。妨害系魔法などを無効化する。
    名前、レア、状態、用途。
《高精細分析》
    対象の生物を詳しく分析する。妨害系魔法などを無効化する。
    名前、種族、職業、身分、称号、所持称号、状態、スキル。

「ふむ、今の思考と過去は見えるが、未来は見えないか……」
「うんうん。私を騙そうとしたところですぐに分かる。それと王様?」
「なんです?」
「口調、無理しないでいいよ? 分かるから。慣れてないでしょう?」
「う、うむ……。こう、どうしても違和感がな……」
「うん、お互い軽く行きましょう? 私も女神はなるべく隠して冒険者する気だし。力を隠す気はないけど」
「いい……のか?」
「いいわよ、言ったでしょう? 転生する前は一市民だったって。王政でもなかったし、あんま拘りないのよねー。喧嘩売ってこなければ構わない」
「喧嘩売る度胸はない。と言うか理由がないし、国が滅んだらたまらんからな」
「国の中心を基点にして超重力空間にすれば簡単に潰れそうよね」
「うん、やめてくれ?」
「やらないわよ。これからここに住むんだから」

王様達とあーだこーだ会話。
私に対する呼び方や私の住むところなどなど。
呼び方は、王族は呼び捨てで構わないが、他はダメ。と言うか立場的に無理。
表向きの扱いは王族にするようだ。冒険者の王族ってどうなんだろう……。
月の都の王族ですって言い張ろうかな。こっちの世界で通じるか知らないけど。
ステータスリングに城への入場許可を記入して貰い、これを見せれば入れる。
住むところについては……。冒険者で稼いで買う予定だったけど、くれるって。
家は《土魔法》で自分で作るから壊していいボロいところを頼んどいた。
後もう1つ。ステータスリングの表示内容が弄れた。王様達が驚いてたけど、私にしか無理だろう。

ステータスリング アーティファクト
    1番身近なアーティファクト。神より与えられしアイテム。
    自分のステータスが表示でき、誰にも弄れないため信用度が非常に高い。
    神の力に干渉できるのは神の力のみ。

って書いてあるんだよね。私は女神で、《月の魔導》まであるから問題ない。
ということを説明し納得。そして表示を変えたのがこれ。

名前:ルナフェリア
種族:人間
性別:女性
職業:冒険者
身分:王族
称号:夜と魔を司る者
年齢:10
スキル
【魔法】
    《魔力操作 Lv10》 《無魔法 Lv10》
    《火魔法 Lv10》 《水魔法 Lv10》 《風魔法 Lv10》 《土魔法 Lv10》 《光魔法 Lv10》 《闇魔法 Lv10》 《氷魔法 Lv10》 《雷魔法 Lv10》 《結界魔法 Lv10》 《空間魔法 Lv10》 《重力魔法 Lv10》
【身体】
    《魔力強化 Lv10》
【その他】
    《並列魔法 Lv10》
【固有】
    《真実の魔眼》

これでよし。魔族でも良かったんだけど、人間。
年齢に関しては冒険者登録できるギリギリの見た目年齢。
称号もでっち上げるのを考えたけど、魔法の威力が違いすぎるからこれかな……。
他の称号使うわけにもいかないし。逆に不自然になるから魔法に関しては隠す気無し。どうせ使ったらバレるんだし?

「10歳でこれとか頭おかしいですね……」
「さっきも言ったけどこの世界に来てまだ2日目です。0歳と2日」
「余計おかしい……」
「考えたら負けだ。女神様だぞ」

うんうん。考えたら負けだよ、ヘルムート隊長。ヨハン隊長を見習おう? たいして考えてないよこの人……。脳筋かな?

「む? そういえばこの魔法スキルで【称号】の[魔導]が無いのか。後《回復魔法》も無いな?」
「あ、そういえばそうですね?」
「あー、多分[夜と魔を司る者]のせいじゃないかな? 夜と魔の魔は魔法の魔だからね。《回復魔法》はまだ試してないだけ」
「ふむ、なるほど。しかし[魔導]より上の【称号】か……」
「導くものより、司るもの。魔は私の管理下であり、司り統べる。私が許さなければ導くこともできないわけだ」
「……なるほどな」
「しかも《物理無効》の《状態異常無効》で《魂攻撃無効》ですよ? 詰んでますね」

ヨハン隊長の思考が戦闘一直線で笑える。脳筋すぎる。
立場的に敵になった場合の対処法を考えると言う意味では優秀なのかも?
あ、王様考えるのをやめたな……。

「《真実の魔眼》は隠さなくて良いのか?」
「髪と目が軽く光っちゃってるし、超高魔力持ちの魔眼持ちなのは隠せないからねー。翼は隠します!」

と言って翼を消す。どうもこの翼魔力の塊っぽいから遮断すれば消える。

「あ、消せるんだな……それ」
「綺麗だしかっこいいから出したいけどさ? 人間です! は流石に……」

うん、皆頷くよね。そうだよね。少なくとも天使のセラフィム一直線。
天使の翼は強さの象徴。天使の最上位セラフィムは3対6だから私と一緒。
翼の形は全然違うし、大きさや質もぜんぜん違うけど。
でもセラフィムなんか出てくることが無く、3対6の翼で判断するから大混乱になると。ちなみにセラフィムさん1体で大国相手にどちらが先に死ぬかだって。
過去に大国が落ちたって記録が残ってるらしい。天罰って言われてるようだ。

「飛ぶ時だけ翼だそう」
「え! 出すんですか!?」

うるさいぞぅ。ヘルムート隊長。

「飛ぶための補助として魔力で作ってます。って言ってなんとかならない? 嘘ついてないよ? あ、飛行 Lv10も表示しとこうか」
「ま、まあ。あのLv10群に混じってても違和感はないんじゃないか……?」
「た、確かにそうですね。飛べても不思議ではありませんね」

よし、王様と宰相がこう言ってるし問題ないな。

「本音は。これを! 隠すなんて! とんでもない!」
「まあうん。確かに、綺麗だよな」

5人苦笑のヘルムート隊長唖然。王様、王子、宰相、近衛、ヨハンね。

「うん、ここなら楽しく過ごせそうね」
「そうか……。頑張ってきた甲斐があったな?」
「これからも頑張って下さい」
「お、おう……」
「父上そろそろ休みませんか?」
「む、もうこんな時間か……」

この世界、意識すれば時間が分かるのだ。ほんとゲームみたい。
今は夜中の2時ほど。

「では皆様はお休み下さい。城への許可と土地の手続きは私がやっておきます。よろしいでしょうか、ルナフェリア様」
「いいわよ。私は寝る必要ないし。と言うかあなたも起きてからでいいのよ?」
「いえいえ、すぐ終わりますので。土地も場所をお教えした後、起きてから書類の方は済ませます」
「なるほど、じゃあよろしく」
「ええ、では行きましょう」

そうして執務室を出て行く……前に。

「あ、そうそう。もしこの国がどこかに攻めこまれたり、さっきのように魔物が来たら私が『個人的に』動くかもしれないから。じゃあまたねー」

これでよし、と。この国が平和じゃないとのんびりできん。
私が個人的に目障りのものを消すだけ。
きょとん、としてたけどスルーしてにっこり手ふりふりの退場。
その後宰相さんにお城に入れるようにしてもらって、土地も条件を言ってピックアップしてもらい、その中から選んだ。後ギルドの位置も教えてもらった。
もちろん魔眼で空から土地、ギルド両方の場所を確認済み。便利。
さらば王城! また用があるまで。


そういえばドナドナされてからハンネ隊長に会わなかったな。

コメント

  • イルシオ

    誤字報告です
    スキルレベルが9〜0になってました

    1
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