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シロ紅葉

運命の日 2

 午後十六時十分。
 今日の帰りはいつものメンバーに加え、アンチマジックのアキの父がいる。
「親父が迎えにくるなんて幼稚園以来だな」
「ふふ、嬉しそうだね!アキ君」
「べ、別に嬉しいわけじゃねーけど」
「おいおいどうしたんだ、その動揺は?めちゃくちゃ嬉そうじゃん?」
「おまえ、なんか親父に似てきたな」
「うそ!?昨日は母さんに似てきたなって父さん言っていたのに」
 父さんに似ているって言われてすごくショックだ。私にもあんなウザさが身に付いてきているのだろうか。
 そう考えると、途端に嫌気がしてきた。今度からはもう少しおとなしくしていよう。
「ふ、お前達はいつも仲がいいな」
 キザったらしい笑みを浮かべながら私達の関係を羨ましそうにみてくるアキの父。
「小学生の頃からの付き合いだしね」
「もう四年になるのか」
 四年と聞いて少し長く感じるようだけど、この四年間は密度の濃い時間を過ごしたので、短く感じる。
「今後ともアキと仲良くしてやってくれ」
「は、はい。それはもちろん。これからも私達はいつも一緒ですよ」
 なかなかに恥ずかしいことを言ってくれる茜ちゃん。
 その発言に照れながらも私達は賛同する。
「それにしてもわざわざ家まで送ってくれるなんて、お仕事の方は大丈夫何ですか?」
「巡回も兼ねているから問題ないよ」
 なるほど、仕事の方も抜かりなしと。これがアキ自慢の父か。ほんとうちの父さんにも見習わせたい。
「あれから魔女のことについて、なにかわかったことってあるんですか?アキからは危険な魔女だと聞いていますが?」
「いや、まだ危険と決まったわけではない。あくまでも可能性の話だ。これ以上は仕事の話になってくるから詳しくは話せないが、いつでも逃げれるようにはしておくといい」
 その一言で緊張感が湧いた。少なくとも戦闘が起きる可能性があるということだ。
「ま、安心しろ。最悪の状況にはならないようこちらも頑張るから。オレもようやくB級に昇格できたことだし今まで以上に活躍しないとな」
 そう言って胸に付けている緑色のバッジを見せてくれる。
 確かアンチマジックはバッジの色で階級が決まっているんだっけ。
 そうして自身の階級に応じた魔力保持者を殲滅することになっている。
「階級って七段階あるんでしたよね?」
「そうだな、S級からF級まであるな。といってもS級のアンチマジックが来ることは基本的には一般市民には事前には知らされることはない」
 下手に一般市民が知ってしまうとそれだけで緊張感が高まり、市民に混乱を与えてしまうことがあるという理屈らしい。
 なるほど、道理でS級なんてみたことがないはずだ。そんな人が来たと知ったら大変なことになる。
「アンチマジックって大変なんですね」
「まあな。けどそれなりにやりがいのある仕事だよ」
 そういう誇りの持てる仕事っていいなあと思う彩葉。
 夢中になって話し込んでいると、そろそろ普段の私達の別れ道まで来ていた。
 誰の家から送ってもらうか相談しあい、結論として私の家が一番近いという理由で雨宮家から向かうことになった。


 午後十六時四十分。
 雨宮家の前まできた私達はインターホンを鳴らす。
 しばらくすると、ひょこひょこと昨日傷ついた足を支えながら母が現れた。
「は~い。……ってなんだ彩葉とアキ君達。……と、どちら様?」
「初めまして。私はアンチマジックの浅草春彦といいまして、今日は巡回がてら子ども達を家まで送っていました」
 見知らぬおっさんとともに帰ってきた彩葉達のことに疑問を持つ母に対して、アンチマジックの身分証明証とバッジを見せる春彦。
 それで納得したようで、温かく迎える母。
「そうでしたか。わざわざご苦労様です。娘がお世話になりました」
「いえいえこちらこそ、昨日はうちの息子がお世話になったようで、これで借りが返せれたらよいのですが」
 借りと言われて戸惑う母。
 アキは幼い頃に母を亡くしており、それからは男手一つで育てられた。
 それにアキの父はアンチマジックという職業柄帰宅時間は遅くなりがちだ。なので、たまにアキやみんなと一緒に夕食を食べることがあるのです。
 それを知ってか知らずか、再度礼を言う春彦。
「ところで、先程から足を押さえていますが、もしかして怪我でもしたのですか?」
 ズボンで覆われていてどのくらいの傷か分からないが、痛みが隠せれていないことに心配そうに尋ねる春彦。
「そうなんですよ。昨日茜ちゃんと買い物帰りにどこかでぶつけたみたいで」
「買い物帰りですか。となると夕飯の買い出しに行っていたと言うことですか?」
「ええ、すぐ近くにあるスーパーまで行った帰りにです」
 一言で近くと言っても徒歩で二十分もかかる距離にあるので、少し遠いぐらいです。
 それを毎日のように続けているので、母の足腰は女性にしては鍛えられています。それに加えて父に対して、蹴りを入れているので、実際はもっと筋力があると思う。
「傷が痛むのでしたら、余り無理はしないように気をつけてください」
 そう言って春彦は、アキ達を暗くならない内に家まで送り届けたいということで、母との話が終わるまで、遊んでいたアキ達を連れて次の家に向かった。


 午後十七時三十分。
 今日はいつもよりも早目の夕食だ。
 なぜか昨日よりも豪勢な料理になっており、家族三人で食べるには少し多いぐらいです。
「今日はなんか珍しいね」
「すごいでしょう!今日は特別な日だからお母さん気合い入れすぎちゃった」
「特別な日?」
 あれ……今日ってなんかあったっけ。誰かの誕生日ってわけでもないし、……結婚記念日ってわけでもなかったような。
「……彩葉。食べ終わったら話があるから少し覚悟しておけ」
「え!?話?……それに覚悟しておけってどういこと?」
 父は私の問いかけには答ずに静かに食事を始める。それを合図に私と母も食事を始める。
 父の無言の圧力に耐えながら。







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