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シロ紅葉

first day 3

 野原中学 二年二組そこが私たちの所属。今年で創立五十周年というそこそこ歴史の長い学校です。
 校内には五十周年記念ということで様々な新しい設備が設置されています。クーラーやストーブの設置、机、黒板までもが新品に変わっているところがあります。
 午前八時二十五分。三十分にチャイムが鳴るのでギリギリです。
「ま、間に合ったー」
「ギリギリだね」
 途中から走ってきて息切れした呼吸を整えて教室に入る。教室に入るといつもの仲間が声をかけてくれます。
「おはよ。今日は遅いな。まあ原因は、彩葉の方にあるんだろうけど」
「おはよ」
 二人の男子が声をかけてくれます。この口が達者な男は浅草秋彦。髪が耳、肩まで伸びて、後ろ髪は結べれそうな長さをしており、女性のようなひょろっとした華奢な体型に、さらに中二にしては身長が百七〇近くもある長身です。まあ、一言で表すとしたらただ長いだけの男といったところか。
  もう一人の口数の少ない男の方は坊主頭にがっちりとした体型の持ち主です。ただし、身長は百六〇ほど。さっきの長いだけの男よりは男らしい人物です。
「おはようございます。アキ君、仁君」
 礼儀正しく挨拶をする茜ちゃん。私もそれに続いて挨拶をします。
「それにしても五分前に来るなんて珍しいな。何かあったのか?あ、まさかまた彩葉が困ってるおばちゃん助けてどろぼうよーなんて騒がれたのか?」
「そんなんじゃないよ。大体あれは失礼しちゃうよね。善行のつもりで重たそうの荷物を持って階段を上ってあげたのに、登りきるなりいきなり荷物泥棒扱いするんだもん」
「そうそうあれは傑作だったなあ。きっと彩葉の行き過ぎた優しさが荷物泥棒と誤解させたんだぜ」
「災難だったな」
「お年寄りだったから勘違いしちゃっただけだよきっと。だからあれはおばあさんも彩葉ちゃんも悪くないよ」
「さすが茜ちゃん。私にもおばあさんにも優しいフォローありがとう。でも、私あの事件をきっかけに人助けがトラウマになっちゃうかも」
 私たちが今話してるのは二日前、通学中におばあちゃんを助けた時に起きた事件の話です。アキはこれを彩葉のおばちゃんの荷物泥棒未遂事件と呼んでます。そのまんまですね。あと、名前が長い。どうやら長いのは髪と身長だけでなく名前も長いみたいですね。また、一つ特徴が増えてしまったようだ。
「で、結局のところ遅かったのはどうしてだ」
 仁が簡潔に聞いてきます。
「実は二度寝しちゃって、起きた時には七時だったから急いで来たんだよー」
 てへへっとちょっと可愛い子ぶって言ってみます。
「今度は二度寝かよー。また、彩葉の遅刻ギリギリ伝説が増えてしまったな。あとその仕草キモい」
「なんだとー!」
 手に持っているカバンを振り回して殴りつけようとする彩葉を呆れたように見守る仁。
「ケ、ケンカはダメだよ」
 一触即発のムードを茜ちゃんが仲裁に入ろうとしますが、 タイミングよく鳴ったチャイムのおかげで茜ちゃんの努力は空しく終わりました。

 退屈な授業も終わり、下校時間になりました。下校時は朝の通学のときとは違って四人で帰ります。
「もうすぐ冬休みかあ、何しようかなー」
 大きく伸びをしながら考えてみる。
「彩葉ちゃんは剣道の練習があるんじゃないの?」
「うーん、それもあるんだけど練習ばっかりっていうのもいやだしなあ。やっぱ学生のときは遊びたいじゃん」
「でも、冬休みが終わっちゃったら進路のことも考えていかないとダメだから遊んでばっかりっていうのもどうかと思うな」
「進路かあ、彩葉のところは家が剣道場だからそのまんま家業継げるからいいよな」
「うーん、家業継ぐってなんか複雑な気分だなあ」
 家業がある家は進路が楽なように思われがちですが、実際は親の期待も背負って生きていかないといけないから大変なのです。
「家業といえば、茜ちゃんも花屋をやっているよね。茜ちゃんはどうするの?」
「私は家継ぐよ。お花育てるの好きだし」
「彩葉と違って女性らしくていい仕事だよなー」
「私の初段の力をもってあんたの頭をかち割ってやろうか!」
「おう、かかってこいや。親父から学んだ技で返り討ちにしてやらあ」
「だ、だからケンカはダメだってば」
 またもや一触即発のムードになってしまいました。でも今度は茜ちゃんがしっかり仲裁に入ってくれたからケンカにはならずにすみました。毎回ごめんね茜ちゃん。
 そこで今まで無口を貫いていた仁が口を開きます。
「お前たちは家業があってうらやましいな」
「まあ、オレのとこは家業ではないけどな」
「あ、じゃあさ仁はガタイがいいんだからさプロレスラーとか柔道選手とかやってみたらいいんじゃない。試しに背負い投げとかやってみてよ。アキ相手に」
「なんでオレだよ!」
 背負い投げのジェスチャーをする彩葉に素早くツッコミを入れるアキ。
「わあ、柔道選手かー、仁君に似合いそう」
「そうかな、だったら練習してみようかな」
「ってなんでオレの方をみるんだよ」
 逃げる態勢をとるアキ。身長百六十の男が百七十の男を投げるって何気に凄いことだなと考え込むもアキ相手だと案外簡単なのかなと思い、すぐに悩みは解決しました。
「彩葉の親父から剣道を学んでみたらいいんじゃない」
 柔道だと敵わないと思ったのかアキは剣道をすすめる。
「でも迷惑じゃないかな」
「今日は休みだから、多分暇してると思うよ。家来る?
 」
「迷惑じゃないなら行こうかな」
「じゃあ今日はこのまま彩葉ちゃんの行こっか」
 そんなこんなで今日の放課後は、彩葉の家で修行になりました。

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