2度目の人生を、楽しく生きる

皐月 遊

24話 「試験開始、教師との戦闘」

眩しい光に包まれ、自分は転移したのだと分かる。

そして徐々に眩しさが消え、目を開けると……

「ふむ……」

そこは木に囲まれた場所だった。

っていうかここ森だな。

あれ? 学園内にテレポートするはずだよな? この学園は森があるのか。

「さて……まずは方向の確認だな」

とりあえず剣を抜き、常に警戒しながら歩く。

セレナとアリスに「試験会場で会おう」なんて言ったのに、言った本人が脱落したら笑えない。

「それにしても…俺は運が悪いな…」

よりによって方向が分かりにくい森にテレポートさせられるなんて……

「…とりあえず木に登ってみるか」

俺は近くにあった木を登り、木の上から周りを見る。

「んー……、あ、あった。 あっちに校舎があるんだな」

右側に校舎を発見、その方向を忘れない内に地面に降り、歩き出す。

方向が分かればこっちのもんだ、後は教師に見つからないように急ぐだけ……

「まずは冷静に方向を確認…、なかなか良いじゃないか」

「…マジかよ…、さっそくフラグ回収か」

背後から声を掛けられる。

降り向くと、そこにはローブを着てメガネを掛けた大人が立っていた。

……早速教師と遭遇か…

「あの…もしかしなくても…この学園の先生…ですよね?」

「うん、そうだよ。 僕はこの学園で魔術を教えている。 ザイルだ、無事入学出来たらよろしくね」

「えぇ、入学したらよろしくお願いします」

ザイル先生、見た目通り魔術師か。

厄介だな…俺は魔術師と戦闘なんてしたことないぞ…

俺が戦闘した事あるのは、ディノスとフロウだけだ。

2人共主に剣を使ってきたので、魔術を主に使う奴とは初めてだ。

「念のため、君の名前を聞いておこうか」

「……ルージュ・アルカディアといいます」

「ルージュ君だね、見た所、君は剣術が得意なのかな?」

「いえ、俺は……あっ…」

良い事を思いついたぞ……

「はい、俺は剣術しか使えません。 魔術は全然出来なくて……入学したら魔術を学ぼうと思っています」

嘘だ、俺は剣術が苦手で、どちらかと言えば魔術の方が得意だ。

「なるほど、勉強熱心なのは良い事だね」

よし、信じたな。

なら、直ぐに終わらせよう。

「さて、そろそろ始めようか。 学園長から聞いてるだろ?」

「えぇ、やっぱり戦闘…しますよね?」

「うん、僕も心苦しいけど…仕方がない事だ。 本気で行くよ」

「望む所です、手加減されちゃ、ここまで来た意味がないですから」

俺は剣を構え、姿勢を低くする。

ザイルは、杖を構える。

先に動いたのはザイルだ。

雷光ライトニング・ボルト!」

「おぉっ⁉︎ 早速中級魔法かよ」

俺はザイルの雷光を横に飛んでかわす、凄まじい速さの電撃だが、避けられない速さじゃない。

泥地面マッド・グラウンド!」

「なっ…⁉︎」

急に、俺の足元の地面が泥に変わる。

その泥に足を取られ、俺はバランスを崩す。

「残念だけど、君はここでリタイアだね。炎連弾フレイム・マシンガン‼︎」

1つ1つが巨大な炎の球が、大量に俺に向かって飛ばされる。

………え、流石にヤバくね?

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーーザイル視点ーー

ボカアアアアン‼︎ 

という音が響き渡り、炎連弾が爆発する。

さっきまでルージュ君がいた辺りに、黒煙が出来ており、ルージュ君の姿は確認できない。

「悪いね、ルージュ君。 半端な実力の子を入学させるわけにはいかないんだ」

結局、ルージュ君は何も出来ずに終わってしまったな…

まぁ中級魔法を3発も撃てば当然かな…、教師として、一撃くらいはルージュ君の技を見てみても良かったかも知れない。

「はぁ…こういうのを、大人げないって言うんだろうなぁ……」

まぁもう気絶しちゃったし、しょうがないか、次に会った子は、ちゃんと技を見てあげよう。

「さて、ルージュ君を拘束しないと」

僕はルージュ君を拘束バインドするために、黒煙のある場所に歩き始める。

突風ウインド

僕は風を起こして黒煙を飛ばす。

きっとルージュ君は気絶しているだろう、後は拘束して終わりだ。

「……………あれ?」

だがそこには、ルージュ君の姿はなかった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーールージュ視点ーー

あ、危ねええぇぇ……!

何だよ最後の魔術! あんなの子供に撃つ威力じゃないだろ。

いや、手加減しなくて良いとは言ったよ?
 でもさ、一発くらいは攻撃受けてくれても良いんじゃないの?

なにあれ、全部中級魔法じゃん、あんな事されたら俺、手も足も出ないじゃん。

「黒煙が出来たおかげで何とか隠れられたけど…どうするか……」

俺は炎連弾が当たる直前、魔力を沢山込めて土魔法で土壁アース・ウォールを作った。

炎連弾が土壁にあたり、爆発した瞬間に俺は近くの木の裏に隠れた。

そして現在に至る。

「やっぱり…甘くないんだな」

嘘をついて意表をつけば、倒せると思っていた。

だが、そんなのは通用しないのが分かった。

向こうは俺なんかより何倍も強い、俺みたいなガキが考えた小細工は通用しない。

なら……小細工無しの、全力で戦うしかない。

俺の中には”逃げる”という選択肢は無かった。

理由はないが、ここで逃げたらダメな気がした。

「……………あれ?」

その頃、ザイルが黒煙を風で消し、俺の姿がない事に驚いていた。

…………今だ。

炎斬えんざん!」

俺は木の裏から飛び出し、まだ驚いているザイルに炎斬を撃つ。

やっと技を撃てた。

「なっ…! 水壁ウォーター・ウォール!」

だがザイルは驚きながらも水壁で俺の炎斬を消す。

マジかよ…初めて見る技のはずなのにすぐ対応出来んのか。

「ルージュ君、何だい今の技は…!」

雷球サンダー・ボール!」

ザイルの問いかけを無視し、雷球を放つ。

会話をしてる暇じゃない。

休むな、常に魔術を撃ち続けろ、相手を休ませるな。

それだけを考え、雷球を撃ちまくる。

だが、ザイルはそれを全部避ける。

「っていうか君! 魔術使えるんじゃないか! 嘘をついたんだね!」

突風ウインド!」

知るか、嘘をつこうが勝てばいいんだ。

地面に風を撃ち、砂埃を発生させ、ザイルから俺を見えなくする。

そして脚に風を纏い、剣には雷を纏わせ……

風加速ウインド・アクセル!」

オリジナル魔術、風加速を使い、高速でザイルの元へ向かう。

ディノスとの戦闘でよく使っていた、 脚に風魔法を使った加速だ。

一気にザイルとの距離を詰め、ザイルに剣を振るう。

「くっ…!」

「おらぁっ!」

全力で、斬りあげや、水平斬りをする。

しかも雷を纏っているので、一発当たれば身体が痺れるはず。

……なのに、攻撃が当たらないのだ。

ザイルは俺の剣撃を全て交わしている。

「ちっ…! このっ!」

だんだんイライラしてくる、全力でやってるのに、なんで当たらないんだ。

「だんだん、動きが単調になってきたよ」

「っ! くそっ! なんで当たらねぇんだよ!」

それまでは避けるのに必死だったザイルが、涼しい顔で避けるようになった。

そして、余裕になったのか、ザイルは避けた後に俺の腹を思い切り蹴った。

「ぐっ!」

そのまま俺は地面を転がり、ザイルは「ふぅ……」と溜息をつく。

「君さ、イライラしてるせいで、動きがバレバレだよ」

「……………」

「まぁ、まだ10歳だからね、しょうがないと思うよ。 まだまだ子供だからね」

「っ!」

確かに俺は子供だ、精神は17歳とはいえ、まだまだ未成年のガキだ。

だが、10歳だから、子供だからという理由だけで、見下されるのは…嫌だ。

俺は、イライラして熱くなっていた頭を冷やす。

自分でも、冷静になっていくのが分かる。

「すぅー……はぁー…」

「おぉ、大分冷静になったみたいだね。 でも無駄だよ、君は僕に、攻撃を当てる事は出来ない。 絶対にね」

深呼吸をして、思考を切り替える。

さっきまでは、何で当たらないのか、どう''すれば”当たるのかだけを考えていた。

だが今は違う、今考えるのは、どう”やって”攻撃を当てるかだ。

ザイルの回避力は高い、おそらく魔術師だから、接近戦を挑んでくる奴らが多かったんだろう。

「…さっきは小細工は無しって言ったけど」

やっぱり、俺が勝つには小細工を使うしかない。

「ザイル先生、宣言します。 絶対、あんたに攻撃を当てる」

「…………へぇ…?」

小細工を使わずに勝つには、俺はまだまだ知識や実力が足りない。

だから、小細工でも卑怯な手でも、使える物は何でも使う。

悔しいが、今はそれしか、ザイルに勝つ手段はない。

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