引きこもり姫の恋愛事情~恋愛?そんなことより読書させてください!~

雪桃

引きこもり虫の怒り

 約束通り月海は家族には何も言わず私の作戦に付き合ってくれた。勿論説得には大分時間がかかったよ。
 そりゃあこんな重傷だからね。正宗兄さんや愛子姉さんだけじゃなくて透さんも温厚組から離れそうになってめっちゃ焦った。

 そして一週間というのはあっという間に過ぎ、今日が復讐日。

「なるほどね。どうしてあんたが今日にしたかったかよーく分かった」
「でしょ? これなら安心して誰にもバレずに済む」

 そう。今日は少し特別な日なのだ。
 この学校は実を言うと少しお金持ちの学校。
 お金持ちと言っても私達や佐藤くん家――佐藤くんが自分でうちは金持ちじゃないって言ったんだからね――も入れるのだから学業と一定のお金があれば入れるからなんて言うんだろう。元お嬢様お坊ちゃま学校?

 で、そんな伝統があるから入学した人達と交流しようってことでパーティーが催されるんです。

 ああやだやだ。こんな賑やかな所本当に嫌い。と思っていたのは昨年まで。

 この状況を考えればパーティー万々歳。とか言ってるうちに女王様降臨のお時間です。後ろには生徒会の勘違い様々が。

「あ、あの。話とはなんでしょうか」

 おう。凄い怯えよう。確かに私の知識が全く無けりゃ本当にいじめられてる子みたいだね。

「すぐに終わりますからそんな怯えなくても。後二人で話したいんですけど」
「ふざけるな。琴音はお前のせいでこんな風に怯えるようになったんだぞ。琴音と二人きりで話したいなど図々しいにも程がある」

 ああもう鬱陶しいな。ここまで来ると殺意どころか間抜け過ぎて

「笑えてくる」
「は?」

 あ。つい口に。

「すみません。今のは失言でした。いくらあなた達が馬鹿で能天気でそんな主役は私よ的な痛い女の子を庇ってるようなとろい男だとしても私は生まれつき障害持ちだから笑えないんでした」

 いやーすみません。と軽く言うと相手は全員ポカンと口を開けた。うわー無様。

「い、いい加減にしろ! 大体謝りもせず退学もせず家族に迷惑ばかりかけている問題児のお前が何故平然と琴音の前で立っていられるんだ!」
「そうだ! それに琴音の婚約者まで奪ったそうだな。とんだ泥棒猫だな」

 口々に言っていますがもしそれを家族が聞いたらまあ殺されるでしょうね。比喩的にじゃなくてマジで。
 色々撤回したい。ていうか全部間違いなんだけどそれ言ったって無駄なんだよね。
 なら本当に悪役になっちゃおうかな?

「琴音さん」
「は、はい」

 即座に生徒会さんが女王様を後ろに庇う。話できねえよ。

「とりあえず私があなたをいじめたことは前提としておきましょう。それであなたは後遺症などが残りましたか?」
「え?」
「琴音は心に傷を負ったんだ!」

 女王様に聞いてんだけどな。

「不登校にしたと前提しておきましょう。あなたはその腹いせとして私の足を一生涯完治しないものにしたんですか?」
「琴音の傷に比べたらそんなもの苦にもならないだろう!」

 苦にもならない? 

「それではもう一つ。私がいじめたと前提して、私の家族を傷つけましたね?」

 おや。あからさまに震えた。
 だよね。私が傷を負ってるから面白く無いって華ちゃんをいじめてたんだよね。この一週間。

「な、なんのことで……」
「へえ? しらばっくれるんですか?」
「いい加減にしろと言っているだろう! おい、理事長に言ってこいつを」
「うっせーんだよゴミ共」

 そうそう人気が無いところが良いんだよね。
 仮にも根尾家令嬢の一人がこんな暴言吐いたら確実に名に傷が付くし透さんにもし会った時に見られたくないし。

「さっきから私は琴音さんと話したいと言っているのに邪魔ばかり」
「そ、それはお前が」
「琴音さんの証言以外で私がやったという証拠はありますか?」
「な。それは」
「ちゃんと準備してから人を陥れる。それを私は兄や姉から教わりました。だから今からやってみましょうか?」

 予め用意しておいたスマホをいじる。

「何をしているんだ」
「ちょっと待ってください。後大声出さない方が良いですよ。人集りが出来たら困るのはあなた達だし」
「どういう意味ですか?」

 まだしらばっくれるんだこの人。
 にしても使いずらい。そう思うのは私だけかな? ああ松葉杖邪魔。

「あ、あった。琴音さん、あなた隠れて沢山の男の人と交友関係を持っていたらしいですね」
「え、え? な、なんのことですか?」
「まぁだしらばっくれるんですか。そっちこそいい加減諦めれば良いのに」

 いや〜びっくりしたよこれ見て。それも女王様隠す気が無いのかブログにガッツリ載せてるし。
 透さんが見ないからいいと思ってんのかね。

「付き合った男性は百を超えて、肉体関係も……これは私も人のこと言えないからスルーしましょうね」
「そ、そんなことしてません! 私は透様だけを愛して」
「写真もありますけど」

 生徒会長様に見せますかね。
 凄いよ。ディープキスに裸で自撮りしてる写真に。ハゲデブな中年男とも一緒に写真撮ってるし。

「こ、琴音。これは一体なんだ? 」
「ち、違います! これはあの方が作った」
「こんなもの作りたくないですよ吐き気がする」

 女王様って間に受けやすいタイプだね。これ見せただけでこんなに蒼白にしちゃうなんて。

「違います! 私を信じてください会長さん!」
「あ、ああそうか。そうだよな。琴音がそんなことをするはず無いもんな」

 おい。何そこでイチャついてんだよ。作ってないし分かりやすい小細工だろうが。
 仕方ない。完璧に悪役令嬢になりきっちゃおう。

「そんなに認めないなら私にだって策がありますよ」
「え?」
「例えば」

 スマホいじりにくい。ええとこうしてこうして。

「送信っと」

 あ、出来た出来た。月海とやって見たら結構失敗したから不安だったんだよね。

「な、何を」
「今のブログを神宮寺家の人達に送りました」
「え、え!?」

 はいどうぞ。

「別にそんなにショックを受けることじゃないでしょう。だってこれが嘘の内容なら透さん達に言えばいいんだもの。もし嘘であれば私は犯罪者だし」
「っあ。ああ」

 もう女王様ったら顔面蒼白にしちゃって。人を束ねるならもっと気丈な女性でいなくちゃ。

「大丈夫。その写真を知ってるのは私とそこの人達と神宮寺家の人達だけだから」

 まあ彼女にとっては全ての終わりでしょうけど。
 座り込んだ女王様と目線を合わせる。

「琴音さん。あなたは嘘を吐かなくなりましたね」
「……」
「だって私はあなたをいじめてあなたに深い心の傷を作ったんだから。まあ自業自得。私の家族を傷つけようとしなければこんなに酷いことしなかったのに。さようなら」

 純粋な華ちゃんも強いには強いから普通に耐えてたけど傷つけたことには変わりない。
 月海にだって嫌悪的な想像をさせた。
 これくらい当然よ。

「凛音。凛音」
「ああ月海、ただいま。疲れたからもう帰りたい」
「何もあそこまでやんなくたって」
「六条のおじさんが言ってたでしょ。蹴落とされる前に蹴落とせって。それに人を陥れるわけじゃないわ。これはそれ相応の対処だもの」
「……」

 月海は溜息を吐いた。
 急に病んできた私に呆れてんのかね。それでも付いてきてくれるなんて良いお姉ちゃん。

「これならまだ無関心な方が良かったかも」
「なんか言った?」
「いいや別に何でもない」

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