引きこもり姫の恋愛事情~恋愛?そんなことより読書させてください!~

雪桃

引きこもり虫の約束

 父さんが帰って来た時、すでに私と神宮寺さんの仲は良好と言っていい雰囲気を醸し出していた。

 父さんのあがり症は困ったもんだけど神宮寺さんは別に気にしていなかった。後でまこちゃん――あ、ちなみに真兄さんのことね――と華ちゃんに叱られるのを覚悟しときなよ父さん。

「そ、それで先程まではどう言った話を?」
「次の日曜に凛音さんがこちらへ遊びに来ることになっております」

 父さん、何でそんな宇宙人見るような目で私を見るのよ。

「り、凛音をお嫁にということに?」
「違うよ父さん。読書に良いところを提供してくれ……」

 聞いちゃいねえ。舞い上がるな父さん。あんた平均より太ってんだから振動がこっちに来るんだよ。

「本当に面倒くさい父でごめんなさい」
「い、いえ。そんなことはありませんよ。それではそろそろ時間にもなりましたのでお開きにしても?」
「あ、はい。それではまた日曜にお邪魔します」

 執事さんに椅子を引いてもらって神宮寺さんはお帰りになった。あの執事さんずっといたけど疲れてないかな。
 ああそうだ、華ちゃん達呼ばないと。

「どうだった音ちゃん。バカ父さんがへましたせいで神宮寺さん機嫌悪くしなかった?」
「今度の日曜に自宅に遊びに行くよ。読書するだけだけど」
「良好みたいだね音。皆に知らせたいけど次全員が暇な時っていつだろう」

 まこちゃん、全員の前で言うの? 鬼畜だわ~。うちの家族。
 ああでも確かに大学生の愛子姉さんと正宗兄さんは中々休み取れないかもね。







「お帰りなさいませ旦那様。本日もお勤めご苦労さまでした」
「ああ。今日は軽食にしてくれ。執筆がよく進みそうだ」
「承知しました」

 僕はすぐに部屋に戻って着替えもせずに原稿に筆を進めた。
 昨日はネタに詰まって一行も書けなかったのに溢れんばかりのネタが脳に残っている。早く書きたい、この気持ちを紙に記したい。

「旦那様。失礼します」
「ん、ああ松崎まつざきか。そこに置いておいてくれ」

 松崎は僕が小学校に入るのと同時に専属となった六つ年上の男性だ。 
 その時はまだ彼も中一だったのに冷静沈着で僕が女嫌いになった時も両親と対処を考えてくれていた。

「先程の根尾様との会話で何か思いついたのですか」
「まあね。少ししか話してないけれど彼女の目には何とも言えないたくさんのストーリーがたたえてあったんだ」
「楽しそうですね旦那様」

 彼女のことは前から噂で聞いていた。
 三家の問題児、引きこもり姫、何事にも興味を持たない娘……
 彼女は笑わないと言っていたけどもしかしたら笑えることが無かったから無表情になったんじゃないだろうか。

「なあ松崎」
「はい」
「結婚するまでに彼女を笑わせてみたいね」

 きっと可愛らしいんだろうな~誰も見た事のない彼女の笑顔は。








「凛音――!! 父さんは……父さんはお前が結婚してくれて嬉しいぞ――!!」

 だからまだしないって。何回言ったら分かんのさ。

「ああ……この喜びを早く誰かに知らせたい。皆喜んでお祝いしてくれるぞ」

 人の話聞いてんのか父さん。この人の思い上がりはおじさんにお願いしよう。
 今はとりあえず読書だ。書庫書庫。

 舞い上がる父さんを放置して私は読みかけの本を片手に書庫へ向かった。

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