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チャット始めたら、危ない女が現れた。

片山樹

完結

 真弓が七海という存在を消した日。
存在というよりも七海というもう一人の自分と決別をした日から1週間という月日が経った。
これで良かったのか、という疑問が浮かび上がりながら授業を聞く毎日。本当に退屈な日々である。ただこんな退屈な毎日の方が俺みたいな奴にとっては荷が重くなくていい。
真弓との仲はどうにか前よりも親密な関係に戻ったが、状況は更に深刻になったとも思える。
でも彼女はもう俺自身に恨みも何もないらしい。
友達として。そしていずれは家族としての関係を望んでいるらしいので、それは無理だと断ったのだが、彼女はまだ納得はしてない。
まぁー少し俺の環境は変わったかもしれないが大きく変化することは特に無かった。
そして今も何も変わらず、いつもと変わらない日常がそこにはあったのだ。
そう、数学という授業が。
でもそんなことを大きく無視して、頭の中では本当にあれで良かったのだろうかという疑問が出ては消え、出ては消えていた。
まぁーそんなことはどうでもいい。
一応これで全てが解決したんだし。
誰かになんと言われてもどうでもいいさ。
だって、これは俺の物語ジンセイなのだから。
俺の物語に口を挟んでくる奴がいるのなら、それはただの傲慢で皮肉で正義感が強い奴なのだろう。
それに俺の青春はまだ始まったばかり。
いや、まだ始まってさえいなかったのだろう。
だからまだまだ青春はある。
修学旅行もまだだし……色々と行事イベントは残ってる。そこで落としどころを着ければいいだろう。


「おーい。渚、お前これ解いてみろ」
 ゲッ!?
当てられた。それもよりにもよって数学かよ……。
俺、苦手なんだよなぁーそれも俺が大嫌いな二次関数だし。

「ほらー、前に来い」
 数学教師に急かされる。
やれやれ……俺は教壇へと向かう。
その間に真弓と目線が合い、ウインクをされた。
さて、どんな意味があるのだろう。
知ったことじゃないが。
それに知ったところで何も起こらないと思うが。

「クッソー。全く分からんな」
 腕を組んで10秒ほど考え込んでみるが、全く分からなかった。

「ほら! 早く書け!」
 またさらに急かされる。

「わ、分かりません……」

「わ、わからないだと!? 廊下に立っとけ!」
 やれやれ。
仕方なく、俺は廊下に立つことにした。
本当に何の為に廊下に立たされなければならないのか。

でもまぁーいいさ。全てが終わったんだ。
これで普通の日常に戻ったんだ。【完】





























































――しかし終わることは無かった。
それは放課後の出来事だった。
そろそろ家に帰ろうかと教材を鞄の中へ押し込んでいた時、校内放送が流れ始めた。その声は担任の紗耶香先生だった。何故か俺の名前が放送され、至急職員室へと呼び出されたのだ。
本当に意味が分からない。鞄を机に置いて、何も悪いことをしていないはずと思いながら職員室へと向かう。
少し緊張しながらドアを開け、紗耶香先生の元へ辿り着くと呆れた顔をされた。

「なんですか? その嫌そうな顔……」

「嫌そうなでは無く、嫌な顔だ。しっかり覚えとけ」
 言葉遣いが悪い。だからお嫁に行けないんだぞ。

「そんなことはどうでも良いでも話をお願いします」

「教師に向かってその口答えはなんだ。最近はそんなオタク本が流行りなのか? 渚」
 ププッと笑われた。ムカつく。

「オタク本じゃありませんよ。あれはライトノベルっていう列記とした小説です!」

「まぁまぁ、そんな慌てるな。オタクが伝染るだろ?」
 本当に嫌な顔しないでくれませんかね。
できればさっきみたいに笑ってくれた方が良かったです。

「はいはいはいはい。分かりました。それでなんですか?」

 コホンと咳払いをして、真剣な面持ちをして、紗耶香先生は言った。

「渚……お前は自分の気持ちを、自分の本心を先にきっちりと伝えないといけない人がいるんじゃないのか? そうやっていつも渚は逃げるから本物にはなれないんだ。本物にはなれない。いや、違うな。お前はいつも嘘ばかりつく。だから、だからこそ――」

 先生はそこで言葉を止めた。

「人を傷付けるですか? 先生――」

「あぁ、そうだ。お前が色々と大変な目にあっていたのは江川さんから聞いていた。だけど何の役にも立てなかった。本当にすまなかったな、渚。だけどな、渚。わたしはわたしがしてきたことを間違ったと思ってないぞ。お前は現にクラスから孤立していた岬を救った。それだけで凄いことだ。だけどな、渚。わたしはつくづく思うんだ」

「そろそろ、お前も救われていい頃じゃないのか?」

 ――救われていい?

「渚。色々とお前の過去を江川さんから聞いた。色々と辛かったそうだな。だけどな、渚。お前は操り者ロボットじゃないんだ。お前は人間なんだ。しっかりと感情がある。だから心が傷付く。確かにお前が誰かに助けを、救いの手を差し伸べる行為は否定しない」

「だけど――そんな優しいお前を支えてくれるのは誰かいるのか?」

 ――俺を支えてくれる人?

「お前はもうあの頃の様に一人じゃない。仲間がいる。だからもうあの頃の様に一人で色々と悩まなくていいんだ。困った時は誰かに『助けて』と呼べばいい。そうすれば、お前を助けてくれる人はいるはずだ」

 涙が止まらなかった。
雨漏りしたかのように最初は流れ始めた雫が次第に止まらなくなる。
 先生から肩を掴まれる。
その手はとても心強く感じた。

「泣くな。渚、わたしが付いている。わたしがお前を守ってやる。それがわたしとして。教師としてのわたしの役目だ」

「先生――俺、今からどうすればいいですか?」

「そうだな。とりあえず、お前は気持ちを伝えに行くことだな。そしてケジメを付けてこい。女の子ヒロイン達の元へ――それとな、渚」

 先生が何かを言おうとしていたが、俺はそれを無視し職員室を飛び出て、図書室へと向かう。

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