チャット始めたら、危ない女が現れた。
始まりの場所
始まりの場所……。
何か意味深な事を言いやがって。
さっぱり分からん。
尋ねても、「着いてからです」という言葉であしらわれるし。ったく……どうなってるんだか。
その後、何も話さずに20分ぐらい歩いた頃だろう。
「着きましたよ」
そう言って朱里が振り向く。
「ここか……」
横を向いてみると俺が昔遊んでいた公園があった。
そしてそこに真弓の姿もあった。
「真弓さんと話して来てください。しっかりと。そうすれば全てが解決しますよ」
朱里は微笑んだ。
でもな、俺は真弓に何度も殺されかけたんだぞ。
流石に無理だろ。それに俺が元々記憶喪失じゃなかったと分かったら今からでも殺すに違いない。
「はははっ、何ですか? その顔は。でも貴方は確かに私に言いましたよ。謝りたいって。そして貴方はメインヒロインである恵梨香さんと関係をもう一度築きたいと言ったじゃありませんか?」
「そうだね。言ってくるよ。もしも俺が刺されそうになったら……いや止めておくよ。俺は真弓を信じてみる」
「そうですか。それも有りかもしれませんね」
ではっ、健闘を祈ります。
彼女はそう言って、俺の背中を押した。
押された衝撃で身体が前に動く。
前かがみになり、地べたを見ていたがそこで真弓の靴が見えた。だから俺は頭を上げた。
真弓は泣いていた。
目を真っ赤にして泣いていた。
「どうしたの?」
俺は子供を扱う様に優しく尋ねた。
すると彼女は目をゴシゴシと手で拭く。
「あ、あのね……あのね……」
彼女は今にも崩れ落ちそうなビルの様に脆かった。
誰か支える人が居ないとどうにもならない程に。
夜空に輝く星の様に儚げだった。
「夕君が居ないの。どこにも居ないの。夕君が。夕君が。夕君が。居ないの。どこにも居ないの。どこにも居ないの。どこにも居ないの」
「俺が夕君だよ。俺が夕君だよ」
「嘘だ! 嘘だよ! 夕君はそんなこと言わない! 夕君は!」
夕君は? 夕君は?
どういうことなのだろう。
それに彼女の言動が少し幼く感じるのは気のせいなのか。
それよりも朱里の言った『始まりの場所』ってのはどういうことなんだ?
その始まりの場所には真弓が居て。
真弓が居て……ん? どういうことだ?
真弓と俺が初めて出会った場所ってこと?
俺と真弓があったのは正式では入学式のはずなんだが。
俺は何度か中学生の頃に真弓を自分の家の近くで見ていたけど。全く分からんな。
これはさっぱりだ。
「あのさ、夕君とはいつ会ったの?」
「い、いつ? いつ? いつ? いつだろう。いつだろう。いつだろう。昨日……いや、三日前? いや、一週間前? 一年前? 二年前? 三年前? 四年前? 五年前? いつだったっけ? あれ? あれ? あれ? おかしいな。おかしいな。おかしいな。おかしいな。おかしいな」
彼女がブツブツと呟き始めた。
次第にブツブツは早くなった。
そして頭を両手で押さえ込んだ。
「あれ? あれ? あれ? あれ? あれ? おかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしい。夕君は? 夕君は? 夕君は?」
彼女は突然辺りをグルグルと歩き出した。
そして呟く。
夕君は? 夕君は? 夕君は? と。
俺は血の気が引いていた。
正直怖かった。めちゃくちゃ怖かった。
彼女の異常さを際立てている。
「あのさ……その夕君のどこがいいの?」
「私を可愛いと言ってくれた。私が辛いことにあっていたら守ってくれると言ってくれた……言ってくれた。言ってくれたはずなのに……言ってくれたはずなのに?」
彼女の行動が止まった。
そう思った瞬間には彼女は奇声を発していた。
そして笑いだした。
正直めちゃくちゃ気持ち悪かった。
だけど俺は声を掛ける。
何故なら俺には確かに薄っすらだがそんな記憶があるからだ。遠い昔とは言わないけど過去にそんなことがあったような気がする。そう、気がする程度だけど覚えているのだ。ある女の子にそんなことを言ったという記憶が。彼女をこんなにしたのって俺だったんだなって。
彼女が辛い時に一緒に居てやれなかった俺は無責任だったんだなって。俺が何故、彼女に喋りかけたんだろうって。そう思ったよ。そう思ってしまったよ。
ちょっとした好奇心だったのかもしれないけど、そんなものから一人の女の子をこんなにも不幸にさせる出来事になるなんて本当に俺は最低だと思うよ。
だけどね、だけどさ。
それってただの責任転嫁だと思うんだよ。
俺は悪くない。そうとは言い切れない。
でもさ、元はと言えばこれは彼女の問題だ。
彼女が勝手に傷つき、心を病んだ。
それだけの話だ。それだけの話なんだ。
それなのに俺がとやかく……こんなお節介な野郎に何故ならなければいけないのだ。それに殺されかけたというのに何故こんなにも俺は彼女に手を差し伸べているのだろう。本当に俺はお人好しだ。
そして単なる馬鹿だ。
そんな馬鹿な俺だからこそ、いやそんな素直な俺だからこそ、彼女を変えたいと。救いたいと。
俺は今、思っているのかもしれない。
何度も何度も殺されかけ、他の奴等にも迷惑をかけてきたかもしれない。
それでも俺は彼女を助けたい!
救いたいんだ!
だから俺はそっと彼女を抱きしめた。
そしてこの言葉の吐く。
「助けに来たよ。真弓。かなり遅くなったけど。遅くなり過ぎたけど。本当にごめん。だからもう七海なんて言わなくてもいい。お前は真弓だ。俺達のクラスの学級委員だ。もう、何もかも自分で抱え込まなくていい。俺がお前の悩みは聞くよ。だから真弓は真弓のままでいいんだ」
真弓は何も言わなかった。
だけど俺を抱きしめるその手は強くなっていた。
何か意味深な事を言いやがって。
さっぱり分からん。
尋ねても、「着いてからです」という言葉であしらわれるし。ったく……どうなってるんだか。
その後、何も話さずに20分ぐらい歩いた頃だろう。
「着きましたよ」
そう言って朱里が振り向く。
「ここか……」
横を向いてみると俺が昔遊んでいた公園があった。
そしてそこに真弓の姿もあった。
「真弓さんと話して来てください。しっかりと。そうすれば全てが解決しますよ」
朱里は微笑んだ。
でもな、俺は真弓に何度も殺されかけたんだぞ。
流石に無理だろ。それに俺が元々記憶喪失じゃなかったと分かったら今からでも殺すに違いない。
「はははっ、何ですか? その顔は。でも貴方は確かに私に言いましたよ。謝りたいって。そして貴方はメインヒロインである恵梨香さんと関係をもう一度築きたいと言ったじゃありませんか?」
「そうだね。言ってくるよ。もしも俺が刺されそうになったら……いや止めておくよ。俺は真弓を信じてみる」
「そうですか。それも有りかもしれませんね」
ではっ、健闘を祈ります。
彼女はそう言って、俺の背中を押した。
押された衝撃で身体が前に動く。
前かがみになり、地べたを見ていたがそこで真弓の靴が見えた。だから俺は頭を上げた。
真弓は泣いていた。
目を真っ赤にして泣いていた。
「どうしたの?」
俺は子供を扱う様に優しく尋ねた。
すると彼女は目をゴシゴシと手で拭く。
「あ、あのね……あのね……」
彼女は今にも崩れ落ちそうなビルの様に脆かった。
誰か支える人が居ないとどうにもならない程に。
夜空に輝く星の様に儚げだった。
「夕君が居ないの。どこにも居ないの。夕君が。夕君が。夕君が。居ないの。どこにも居ないの。どこにも居ないの。どこにも居ないの」
「俺が夕君だよ。俺が夕君だよ」
「嘘だ! 嘘だよ! 夕君はそんなこと言わない! 夕君は!」
夕君は? 夕君は?
どういうことなのだろう。
それに彼女の言動が少し幼く感じるのは気のせいなのか。
それよりも朱里の言った『始まりの場所』ってのはどういうことなんだ?
その始まりの場所には真弓が居て。
真弓が居て……ん? どういうことだ?
真弓と俺が初めて出会った場所ってこと?
俺と真弓があったのは正式では入学式のはずなんだが。
俺は何度か中学生の頃に真弓を自分の家の近くで見ていたけど。全く分からんな。
これはさっぱりだ。
「あのさ、夕君とはいつ会ったの?」
「い、いつ? いつ? いつ? いつだろう。いつだろう。いつだろう。昨日……いや、三日前? いや、一週間前? 一年前? 二年前? 三年前? 四年前? 五年前? いつだったっけ? あれ? あれ? あれ? おかしいな。おかしいな。おかしいな。おかしいな。おかしいな」
彼女がブツブツと呟き始めた。
次第にブツブツは早くなった。
そして頭を両手で押さえ込んだ。
「あれ? あれ? あれ? あれ? あれ? おかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしい。夕君は? 夕君は? 夕君は?」
彼女は突然辺りをグルグルと歩き出した。
そして呟く。
夕君は? 夕君は? 夕君は? と。
俺は血の気が引いていた。
正直怖かった。めちゃくちゃ怖かった。
彼女の異常さを際立てている。
「あのさ……その夕君のどこがいいの?」
「私を可愛いと言ってくれた。私が辛いことにあっていたら守ってくれると言ってくれた……言ってくれた。言ってくれたはずなのに……言ってくれたはずなのに?」
彼女の行動が止まった。
そう思った瞬間には彼女は奇声を発していた。
そして笑いだした。
正直めちゃくちゃ気持ち悪かった。
だけど俺は声を掛ける。
何故なら俺には確かに薄っすらだがそんな記憶があるからだ。遠い昔とは言わないけど過去にそんなことがあったような気がする。そう、気がする程度だけど覚えているのだ。ある女の子にそんなことを言ったという記憶が。彼女をこんなにしたのって俺だったんだなって。
彼女が辛い時に一緒に居てやれなかった俺は無責任だったんだなって。俺が何故、彼女に喋りかけたんだろうって。そう思ったよ。そう思ってしまったよ。
ちょっとした好奇心だったのかもしれないけど、そんなものから一人の女の子をこんなにも不幸にさせる出来事になるなんて本当に俺は最低だと思うよ。
だけどね、だけどさ。
それってただの責任転嫁だと思うんだよ。
俺は悪くない。そうとは言い切れない。
でもさ、元はと言えばこれは彼女の問題だ。
彼女が勝手に傷つき、心を病んだ。
それだけの話だ。それだけの話なんだ。
それなのに俺がとやかく……こんなお節介な野郎に何故ならなければいけないのだ。それに殺されかけたというのに何故こんなにも俺は彼女に手を差し伸べているのだろう。本当に俺はお人好しだ。
そして単なる馬鹿だ。
そんな馬鹿な俺だからこそ、いやそんな素直な俺だからこそ、彼女を変えたいと。救いたいと。
俺は今、思っているのかもしれない。
何度も何度も殺されかけ、他の奴等にも迷惑をかけてきたかもしれない。
それでも俺は彼女を助けたい!
救いたいんだ!
だから俺はそっと彼女を抱きしめた。
そしてこの言葉の吐く。
「助けに来たよ。真弓。かなり遅くなったけど。遅くなり過ぎたけど。本当にごめん。だからもう七海なんて言わなくてもいい。お前は真弓だ。俺達のクラスの学級委員だ。もう、何もかも自分で抱え込まなくていい。俺がお前の悩みは聞くよ。だから真弓は真弓のままでいいんだ」
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