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チャット始めたら、危ない女が現れた。

片山樹

ホオズキ

「流石だね。朱里ちゃん……」

「あかりちゃん?」

「そうだよ。あ・か・り・ちゃん!」

「なぜ、そこだけ強調!?」

「まぁ、気にするな。それでどこから知りたい? どこから聞きたい? いやどこまで知ってる?」

「全部です。全部、私に教えてください」

「ぜ、全部か……。それは困ったな。どこまで話せばいいのやら。まぁ、いいけど。先に言っておくけど、君はあまりこの事柄には関係しないほうがいいと思うけど」

「できれば関係したくなかったです。ですが、関係してしまった。知ってしまった。だから仕方ないじゃないですか、気になるんです。全てが解決するまでは」
 ったく……中学時代と全く変わってない。
何かに興味を持つとすぐに熱中する。
懐かしい灰色の青春を彩っていた部室には確かにそんな奴がいた。

「へぇ〜それは困るね。俺も俺で言えない事はあるし……」

 彼女が手に持っていたペンチが少し動く。
どうやら話せと要求しているようだ。
話さなければそのペンチ……もしくは隠し持っている何かで俺を襲う可能性がある。
生憎、現状の俺は戦う武器を持っていない。
ここはもう従うしかない。

「全てとは言いません。私が質問したことに正直に話してください。では、最初の質問です。何故、貴方は記憶喪失のフリをしていたのですか?」
 それはありがたい。
それなら俺の手間が省けるわけだ。

「それは簡単な質問だね。真弓という存在がこの場で何をしたか分かるだろ? だからそれを『無かったこと』にしたかった。ただ、それだけだ」
 もっと詳しく言うならば、田神真弓という恐怖から逃れる為にこんな方法を取ったというべきだ。

「なるほど。『無かったこと』とは記憶が失くなれば、七海の正体を知っているのは田神真弓本人だけとなるから。そういうことですか?」

「まぁーそれもある。あいつは俺を許さないと言っていた。だからこそ、そうするしかなかった。だけど残念なことに病院内で襲われることになり、色々とデタラメなことを言われ、付き合うことになって、あいつの傀儡状態になってしまったが……」
 自分でも思うことがある。
俺は本当のことを知っていた。
それなのに真弓本人のいう事を聞いていた。
もしかしたらそれは同情していたのかもしれない。
 田神真弓という存在に。

「自業自得ですよ。そんな真似をするからです。では、次の質問です。貴方は大体の犯人の目星がついていますか? 一連の出来事の」

「岬の偽アカや謎の不審女のことか?」
 ゆっくりと朱里が頷いた。
その隙を突いてペンチを奪い取るという行為をしていればいいのだが、生憎女の子にそんなことはしたくない。というかできない。
俺のポリシーに反する。
それにもう潮時だと思うんだ。
全てを終わらせるいいキッカケになると思うんだ。だから正直に話そう。

「はい、そうです」
 彼女の声はやけに嬉しそうだった。

「俺に聞くなよ。犯人は真弓だろ?」
 俺は投げかける。
正直に。全てを打ち明ける為に。
これが俺の思っている真実だから。
俺が知っている最低限の答えだから。

「半分正解で半分不正解です」
 さっきとは打って変わり、彼女の声は暗かった。子供がガチャポンをして狙っていない物が当たった時みたいに「あぁーあ」と言いそうな程に声もひょうじょうもガッカリしていた。
俺に失望していたかのように。
それよりも気になることは半分正解、半分不正解という彼女の解答だった。
勿論、俺もそんな採点をされ黙ってはいられない。

「はぁ? どういうことだよ!」
 彼女は溜息を吐き捨て、「ガッカリです」と俺を卑下して言った。

「実は……この一連の事件。色々と節穴があるんです」
 お前は名探偵にでもなったつもりか。
それともそれに準ずる何かか。
どっちにしろ、お前の身分はただの高校生だと言いたい所も山々だったけど、俺は非常に興味深いと思ってしまっていた。

「例えばの話です。田神真弓が偽アカの犯人だとします。ですが、田神真弓が犯人ならば明らかにおかしいことがあるんですよね」

「はぁ? 何がだよ!」

「どうして? 田神真弓は恵梨香さんと岬さんが幼馴染だという事を知っていたんでしょうね」

「それは岬が教えたからだ。真弓本人がそう供述した」

「ふぅ〜ん。そうですか、なら今から言うことは私の戯言です。信じるか信じないかは貴方次第という、アレですよ。あのですね、私が思うにこの一連の出来事の発端は意外とTwitterより以前に起きていたのだと思うんです」

「はぁ? それはどういうことだよ?」

「少しスマホを貸して下さい。そこに解答がありますから」

「はぁ? どういうことなぁ」
 朱里が俺にスマホを渡せと手を出してきた。
俺にお手をさせようとはいけ好かない奴だ。
だが俺はペンチが怖いから、スマホを渡す。
そしてあろうことか、真弓同様に俺のスマホをささっとロック解除して操作をし始めた。
一応、パスコードを掛けているのだが……こんなにも意図も簡単に解かれては困る。
返してもらったら、早速パスコードを変えておこう。 

「これを見てください」
 朱里がスマホの画面を見せつける。

そこにはTwitterのフォロワーさんである『なえこ』という人が表示されていた。

『あなたをフォローしています』
 その言葉が無慈悲にも表示されている。

確か……なえこさんは俺がTwitterを初期からしている頃からのフォロワーさんだよな。
いつもすぐにいいねをつけてくれる人だ。
その速さがbot並に早いんだよな。

「それでこれがどうしたんだよ?」

「この人こそが犯人と言うわけです。そして、この人物こそが元凶とでも言うべきでしょうか。
あ、なえこというのは偽名ですよ」

 彼女はキッパリとそう言った。
目はとても真剣だった。
どうやら色々と証拠があるらしい。
それにしてもどういうことなのかさっぱりわからない。なぜ、そんな顔も名前も知らない人がこんなことに関係しているのだろうか。
俺には謎でしか無かった。

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