話題のラノベや投稿小説を無料で読むならノベルバ

チャット始めたら、危ない女が現れた。

片山樹

朱里の提案

 今からする話は文化祭1日目の話である。

そしてわたしにとって、最大の戯言を言う日でもあった。

「わたしにとって渚夕との出会いは間違いだったのかもしれない」

 わたしがそう思ったのは彼と高校生になって再開した時だった。
しかし、彼はわたしの存在を忘れているようだった。それとも気づいていたが、気づいてないふりをしていたのかもれしない。
まぁ、そんな事はどうでもよくは無いけど後回しにしよう。だって今回の物語には全く関係が無いんだもん。では、一人の男を巡る熱い攻防戦とはいかないまでも女性達の個々あふれる多彩でダサい執着心が生んだ物語の開演です。

✢✢✢
 わたしにとって彼の存在はとても大きく、届かないような存在。そんなものだった。
かなり大胆な事を言っているが、本音だ。
太陽と月の様な関係。
勿論、わたしが太陽で彼が月。
月は太陽が無いと輝けない。
そう思っていた。そう思っていたかった。
この時点でお気づきの方はいるかもしれないので言っておくが、わたしは彼の事を自分の下の存在だと思っていた。下の存在と言っても下劣とかではなく、母性本能が働くみたいなそんな感じだ。多分だが、わたしは姉に似たのだろう。
そう思わずにはいられないのだ。
気を取り直して、話を続けよう。
わたしは馬鹿だったのだ。
わたし以外にも彼を照らす存在。
わたし以外の太陽がいたのだ。
いや、違う。わたしは太陽になり損ねた惑星。
言うならば、木星と言った所である。
そしてわたし以外の太陽。
すなわち、彼の幼馴染だった恵梨香さん。
そして太陽と月を繋げる存在。
観測者として二人を見る地球。
それが岬さん。
そして月を奪おうとしたブラックーホール。

それこそが七海――いいえ、もうはっきりいいましょう。

 渚夕を悲しませない為に。
私達の醜い争いを終わらせる為に。
全てを終わらせる為に。

✢✢✢

 折角の文化祭だというのにわたしは体育館へと足を運んでいた。傍から見れば、何故こんな何も無い体育館に足を運んでいるのだろうと不審に思われるかもしれないけど、しっかりとした理由があった。
 今までの出来事の犯人に会う為に。

「田神真弓――偽者おまえのせいで……お前のせいで……わたしの人生はめちゃくちゃだ。中学二年生の冬からずっとわたしは……夕の事が好きだったのに。それなのに……それなのに……なんで……貴方はそれを奪おうとするの? 貴方は夕のなんなの? 教えてよ、ねぇー教えてよ。田神真弓、貴方の目的は何?」

 バスケットボールをドンドンと床に打ち付けていた田神真弓は突然笑いだした。
わたしを馬鹿にするように。
その笑い方がとても気に食わない。
元々、こいつはそんな奴だった。
わたしはそう思い出していた。
今更言うのも何だけど、わたしと真弓は小学生の時一緒の学校だった。一緒だったと言っても、『田神真弓』として、とではなく『七海ななみ真弓まゆみ』としてだったんだけどね。
わたしと真弓は別に仲が良いとも仲が悪いとも言えず、間柄はクラスメイトの6文字で解決できてしまうぐらいの仲だった。
中学についてはわたしと真弓は学校が違っていたので分からない。本来ならば、これで死ぬまで出会うことは無いのだろうと思っていたのだが、人生というのは面白いもので変な縁でもう一度高校に入って出逢った。
そして関係が悪くなるなんて小学生の卒業式には夢にも思ってなかった。
だけどそれは偶然では無く、必然だったのだ。
起きるべくして、起きたのであった。
一人の男を奪い合うというそんな形で。

「私の目的? それは……ふふっ」
 彼女が不敵な笑みを零す。
笑みというよりも不快な音に近い。
笑っている様に見せかけて笑っていない。
そんな感じだった。

「ねぇー貴方は運命って信じる?」

「運命……?」

『そう、運命よ。運命。私は信じてるの」

そ、そう。私はそんな言葉しか出なかった。
さっきまでの威勢はどこに行ったのか。
もしかしたら彼女の異常さに怖気づいているのかもしれない。

「そ、そう? それで?」

「私と夕は約束してるのよ。6年前に。夕が私を助けてくれるってね」

 初耳だった。
渚夕本人に尋ねる必要がありそうだ。

「そう、それで?」

「それでって、貴方。夕は私と約束してるの。それこそが運命なの」

「ふぅ〜ん。それで?」

「だからね。貴方には消えてほしいのよ」
 彼女の声は冷たかった。

「そう。でもね、わたしは嫌だ。もう諦めないと誓ったから。もう、逃げないと誓ったから。だって、ゆうはわたしに恋というものを教えてくれたから!」

 わたしは言い切った。
今まで隠していた訳では無いけど、自分の心に秘めていた気持ちを。
今ここで吐いたのだ。

「ふぅ〜ん。貴方も色々とワケありというわけね」

「そうよ。あ、そうだ。この学校にまつわる恋の伝説って知ってる?」

「恋の伝説……?」
 予想外の話の展開に追いつけていないみたいだった。動揺しているのか顔はしかめっ面だ。

「そう。恋の伝説。知らなかった?」

 真弓が頷いた。
一応彼女も乙女だった。
可愛らしい所もあるのだった。

「あのね、文化祭が終わった後に行われる後夜祭で男女が一緒に踊ることができたら恋が成就するっていう伝説があるの」

 彼女の目は輝いていた。
これは食い付きそうだ。

「それでこれは提案なんだけど……ミスコンで優勝したら何でも1つ願いを叶えるという権利があるの。だからね……」
 わたしの言葉を遮るように真弓が言葉を挟んだ。

「なるほど。それで正々堂々と戦えってことね。まぁー分かりやすくていいじゃない。真実の愛が勝つということを証明してあげるわ。ふふっ」
 どうやら真弓はこの話に乗ったらしい。
案外、根は優しいひとなのかもしれない。
だけどまだ危険人物だということには変わりはない。

「それじゃ、わたしはこれで……」
 そう言って、体育館を出ようとするわたしに彼女が言った。

「恵梨香という女は危険だから近づくなよ」と。
 わたしはそれを無視するように体育館を出た。

「チャット始めたら、危ない女が現れた。」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「恋愛」の人気作品

コメント

コメントを書く