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チャット始めたら、危ない女が現れた。

片山樹

クレマチス

 体感時間が何時間にも感じた沈黙が続き、恵梨香が漸く口を開く。

「みぃーちゃん、わたしも諦められない。だけど……今の夕君の心は真弓ちゃんのものだよ」

少し寂しげに言う彼女の顔を見ていられない。
見られなくしたのは俺なのに。
俺が彼女達を裏切ったまでは言わないが、彼女達の心を知っておきながらも真弓と付き合った。それが原因だ。確かに最初は無理矢理だった。でも、いつの間にか彼女の事を本気で好きになっていた自分がいたのも事実で。

でも、俺は恵梨香が好きだし。
岬も幸せにしたい。

だけど……日本は一夫多妻制というような都合の良い展開は無い。

だからこそ、一人を決めなくてはならない。

ってか、元々そうするべきだった。
そうすればこんなに悩む必要も無かったのだ。

それにしても記憶が無いというのは難関だ。
解答の無い問題を解いている気分になる。

「それよりも今は大事なのは渚君、貴方の事よ」

さっきはゆうと呼んでくれたのに渚君に戻っている。恥ずかしいのだろうか?

「俺のこと? どういうことだよ?」

「本当に貴方、記憶が無いのね。実は……記憶は元々ありましたぁ〜とか言ったら、絶対に許さないんだからね」

実は記憶があった。
それならどれだけ良かったことか。

そうすれば彼女達を泣かせることも無かっただろう。

「まぁまぁ、そんなに慌てなくても……」

「貴方は喋らないでくれる? 葵君?」

岬が葵を睨みつけられたが、寧ろご褒美を貰った様にニヤニヤしている。
そう思えば、こいつは岬の事が好きだったんだよな。近くで変な視線を感じたのでそちらを見てみると健一も葵を睨んでいた。おまけに葵を後ろからグーで殴ろうとしている。
思い出せば、健一も岬の事が好きだったんだよな。岬が俺にキスをしてきた時、健一かなり辛かっただろうな。俺って最低だな。

岬が視線を俺に戻してきたので

「記憶がある……本来ならばそう言いたい所だが、実際全くない。でも……はっきりとは覚えてないだけで何か引っかかる事があるんだ」

「何か引っかかるって?」

「例えば、岬がもう一人の幼馴染だったとか。俺はもう既に知っていたというか……そんな気がするんだ。デジャヴってやつなのか?」

「デジャヴねぇ〜。だけど、わたしは全くそんな話をしてないし、恵梨香には言わないように口止めしてたし」

「なんで、口止めすんだよ?」

「そ、それはっ……!!」
岬が口をモゴモゴさせる。

「それは夕君に見つけ出して欲しかったから、だよね? みぃーちゃん?」

恵梨香が岬の顔色を伺いながら言う。

「う、うん……」
恥ずかしそうに顔を真っ赤に染める岬の姿は新鮮でとても愛らしかった。

その時だった。

俺のスマホが音を鳴らし、ラインが来たことを教えてくれる。俺はロック画面時にラインが誰から来たか分からないのでラインをわざわざ開かないといけない。

また、誰かのスマホが音を鳴らす。
どうやら、恵梨香のものだったらしい。

また、音が鳴る。
次は岬のものだったみたいだ。

スマホの音が一向に止む気配が無いので俺はラインを開いた。

画像2枚と共に俺へのメッセージが送られてきた。

『貴方を殺して、わたしも死ぬ』

上にスクロールするとその画像が見え、1枚目は俺と恵梨香がキスをしているもの。
2枚目には岬とキスをしているものだった。

この写真はどう考えても今さっき撮った写真だ。

「こ、これどういうことだよ? 俺と真弓の仲を壊すつもりかよ?」

俺は流石に頭にきた。
こんな汚い手を使われて、俺等の愛をぐちゃぐちゃにするなんて……酷すぎる。

「夕君、ごめん……だけどこんなやり方しかできないの」

恵梨香がそう言うと、葵が俺を羽交い締めにして、健一が俺の首を握りしめてきた。

お、おい……これどういうことだよ?

「ごめんな……夕。少し辛いかもしれないけど、すぐに目が覚める」

その言葉を最後に首を握りしめる力は大きくなって、酸素が徐々に無くなっていくのを感じた。

く、苦しい。
どういうことなんだよ?
意味が分かんねぇーよ。

そんな想いを抱きながら、俺はポケットから四葉のクローバーを出して握りしめる。

でも、その後には手に力が入らなくなって……俺の視界は暗くなった。


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