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チャット始めたら、危ない女が現れた。

片山樹

四葉のクローバー

 俺と真弓は秘密を共有していた。
同じ悩みを持っていた。

だけどそれはもう終わった話だ。
もう、全て終わったんだ。
俺はそう思いながら、東階段へと向かう。

東階段へと向かう理由は岬から呼ばれたから。深い理由は分からない。
東階段へと向かう最中、真弓に見つかってしまえばすぐに「なぜ、嘘をついたの?」などと問い詰められるのでトイレに行ってくると嘘をついて向かっている。

 我ながら最低である。
彼女に嘘をつくなんて。

東階段につくと、そこには岬、恵梨香、健一、葵と言ったメンバーが勢揃いしている。

はっきり言って謎のメンツである。

「正直言って、変なメンツだな。それでこれはどんな集まりなんだ?」

皆に訊ねてみる。

「本当に覚えてないの? 夕君?」

恵梨香が心配そうな目で俺をじっと見つめる。
俺はその視線を後ろめたい気持ちになり、目線を逸らした。

「覚えてないって? 何のことだよ?」

「本当に貴方は馬鹿な人だ」

葵が俺を侮辱してきた。
まじでこいつ、うぜぇぇー。
ってか、こいつなぜここにいるの?
場違いすぎるだろ!

「お前、一発殴っていいか?」

「僕は暴力反対人間ですから。やめてくださいね」

ガンジータイプの人間ってわけね。
とりあえず、こいつは後からぶん殴る。
俺は心に誓った。

「そ、それで……こ、これ」

俺の唇に誰かの唇が当たった。
この感触を俺は……知っている。覚えている。

こ、この感触は……恵梨香の唇だ。

俺は恵梨香を引き離す。

「え、恵梨香……お前、何やってんだよ?」

「嘘つきさんにお仕置き。まだ、思い出せないの?」

恵梨香がもう一度、俺の唇に自分の唇を重ねてきた。

頭がとろけそうだ。ぐちゃぐちゃになってきた。もう、恵梨香を本気でめちゃめちゃにしたい。だけど……俺には真弓という彼女がいて……でも、俺は恵梨香のことも好きで。もう、わけがわかんねぇーよ。

どうにでもなりやがれ。

「おぉー、大胆だねぇ〜」
葵がおちょくってくるが、今は関係ない。

「さすがにちょっと……見るの辛いかな」
岬が今にも泣きそうな顔をしている。
そんな岬を健一が心配そうに見つめていた。

なんで、あんなに岬は泣きそうな顔をしているんだ?
分からない。なんでなんだよ!

 記憶を失う、それがこんなにも怖いことだとは思わなかった。俺の記憶は……どこに行ったんだよ!

誰でもいいから教えてくれ、教えてくれよ。
頼むから。俺に全てを教えて下さい。

あ、あれは……。

俺の目線は岬の手に見える物で釘付けになった。

「み、岬……お前、なんでお前がそれを持ってるんだよ?」

恵梨香からの積極的な行動を途中で止める。
恵梨香は満足できなかったようで俺の身体を離さない。それに目がうっとりとしている。

「夕君、覚えてないんだ?」

恵梨香が俺に訊ねてくる。

俺には、俺と恵梨香にはもう一人幼馴染がいた。

そいつと俺はある約束をした。

俺が必ず見つけ出す。
彼女に向けて言った言葉。
それはあの時、子供だった頃の俺が掛けられる最大の言葉であり、確証を持てない未来に対する期待の言葉だった。


 岬の目からは涙が流れ始め、恵梨香は俺の事はどうでもよくなったみたいに岬に抱きついた。
岬は涙を拭いながら、言った。

「もう、遅いわよ。気づくの……わたしは入学式の時から気づいてたんだから」

「今まで気づかなくて……ごめん。
俺も四葉のクローバーを持ってるよ」

彼女から貰った時は新品のような輝きを放っていたストラップはもうそんな輝きを持っていない。
だけど俺達をもう一度、会わせてくれた。

魔法ねがい叶った……」

岬は涙をポロポロと床に落とす。

俺はもう一人の幼馴染に掛ける言葉を探す。

とりあえずこう言うのがいいだろう。

「あの時、恵梨香を助けてくれてありがとう」

別に彼女が医師だったわけではない。
だが、あの時恵梨香が助かったのは岬の意志が強かったから。俺はそう思っている。
それにあの時の俺を慰めてくれ、俺に強さをくれた。諦めない想いが強ければ願いは叶うことを教えてくれた。

「どういたしまして……ゆう」

俺のもう一人の幼馴染は俺にそう言って、そっと俺に口づけをした。

急な出来事に頭の中が真っ白になる。

「ごめんね……恵梨香。だけどわたしも諦めきれないのよね」

その言葉が俺の胸に突き刺さる。

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