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チャット始めたら、危ない女が現れた。

片山樹

健一の物語(続) その2

 真弓ちゃんの姉である七海さんに促されるままにリビングっぽい場所に連れて行かれた。
リビングらしきそこには大きな茶色のソファーがあり、60型サイズのテレビがドン! と置かれている。また、リビングに繋がるようにキッチンがあり、部屋の大きさが強調されていた。
七海さんにソファーに座っていいと言われ、ソファーに座り込む。
フカフカのソファーは高価さが滲み溢れ出ていた。流石である。

「何をキョロキョロしてるんですか?
失礼ですよ」
ジト目になっている朱里ちゃんは、俺を蔑むようだった。

そんな目をしなくてもいいのに。
逆にこんな家を見ても何も思わないのかと疑問に思ってしまう。

「そうだよね。悪いよね」

「別にいいですよ。私だって、一般な方でしたらそう思いますから」
七海さんが高そうなカップを3つ、トレイに置いて持ってきた。カップの中には紅茶が入っているのか、いい匂いが漂ってくる。

「もしかして紅茶は飲めませんでしたか?」
はっとした表情で俺に聞いてくる七海さんに大丈夫ですと伝えるとそれは良かったと七海さんはカップを俺達の前にあるテーブルの上に置く。

一般という言葉が少しばかり引っかかったが、それも仕方がない。

やはり、俺とは全く住む環境が違うのだろうか?

「あぁー大丈夫ですよ。私の家庭も少しばかり特殊ですので」

「あら、そうでしたか? やはり、同じ匂いがしてたんですよ」

「そうですか。私も同じ匂いがしてたんです」

何やら二人は意気投合しているみたいだ。

俺もこの二人に続かなくてはならないと思い、「お、俺も……家庭が少し特殊で」

「あら、そうでしたか? 健一さん」

朱里ちゃんが横で俺を睨んでいるけど、大丈夫だろう。

「はい……えっ!? ってか、何で俺の名前知ってるんですか?」

「ふふふ、そうですか。やはり気になりますよね。実は……朱里さんの事も知ってるんですよ?」

「私の名前も?」

朱里は名前を呼ばれ、びっくりしていた。

「はい。実は……三日前にも貴方達と同じ目的で来た人がいたんですよ」

俺達と同じ目的で来たやつがいる?

「そ、その人って男でしたか?
それとも……女ですか?」

「それはナイショです」

「そ、そこを何とかお願いします」
俺は頭を深々と下げお願いした。
我ながらプライドを捨てている。

「健一君、そんなしつこく言うのはちょっと……」
軽く朱里ちゃんが俺を引いていた。
オーマイガー。

「すいません。七海さん……でも、教えてください」

「そうですか。ならば、わたしと少しばかりゲームをしませんか?」

意外な提案をされ、戸惑う。

横を見てみると朱里ちゃんが「しろ」と言わんばかりの目をしていたのでその勝負に乗るしかない。

「じゃあ、お願いします」

「本当にいいんですか? すぐに決断しちゃって」

「えっ? どういうことですか?」

「だって、わたしが勝った場合の話をまだしてないじゃないですか? それなのにそんな話に乗るなんて……変わってますよ」

「あ、そう思えば……」

「健一君、絶対勝ってね」

朱里ちゃんがやけに笑顔で応援の言葉をかけてくれた。それが如何にも「負けたら絶対に許さないから」と思ってそうで怖い。

「あ、うん。それで俺が負けたらどうすればいいんですか?」

「そうですねぇー。負けた場合は……そうだなぁー。渚君の事を教えてください。全て……」

七海さんの目がキリッとしていてかなり怖い。
だが、俺は言葉を噛み締めて答える。

もちろんですよ、と。

「それじゃ、ジャンケンでもしましょうか?」

「「最初はーー」」

お互いに掛け声を掛け合って始まる。

ジャンケンには必勝法ってのは無い。
だが、勝ちやすい方法を俺は知っている。
ゲームでいう所の小技みたいなものだ。

人間ってのは無意識の内にグー以外の手を出すことが多い。その理由として「最初は」という掛け声でグーを出している為、無意識の内に他の手を出さなくてはならないと思う事が多いのだ。だから十中八九、チョキを出せば大体勝てる。(グー以外はパーかチョキしか無いから)それともう一つ、ジャンケンをする人の腕の動かし方が激しかった場合もチョキかパーを出すことが多い。っていうか、そうしないと出しにくい。なぜなら、手の動きが鈍くなり遅出しになってしまうから。まぁ、それを長年の経験で知っているから無意識に手が激しく動くんだけどね。

ってことで俺が出す手はチョキだ。

「「ポイ!」」

俺の視界に見えたのは細くて今にも折れそうな白い手がチョキの形になっている姿だった。

くっ、クッソ……失敗した。


次だ。次は絶対に勝ってやる。

「あいこですねぇ〜」

七海さんはニコニコと俺に笑みを零している。ゲームを楽しんでいるようだ。

「そうですね。あいこです。続けますか? それとも……」

俺は相手が勝負に乗るか反るかを試す。

「そうですね。あいこですから、お互いの事をお互いに話すということはどうでしょうか?」

意外な提案だった。
確かに俺が知りたいことも聞け、七海さんが知りたいことも聞ければいいことである。

横を見てみると朱里ちゃんもうんうんと頷いている。

「じゃあ、そうしてください」

俺がそう言うと、七海さんは紅茶を啜り、

「あの日、来た人は女の方でしたよ。確か……名前は……」

目を閉じて、その日のことを思い出しているのか眉間に皺がよっている。

「もしかして、みさきっていう名前じゃなかったですか?」

「そ、そう!? その人だよ! 顔がとっても綺麗だったのを覚えてたんだけど……名前はちょっと、ね。最近、少しばかり物忘れが酷くてね」

若いのに大変である。俺もしょっちゅう教科書とか忘れるし、それと同じようなもんだろう。

「いやいや、とんでもないですよ。突然、来客だし。しょうが無いですよ。あ、それよりも岬さんは何の為にここに来たんですか?」

「さっきも言ったじゃないですか? 貴方達と同じく、真弓に貸していたものがあったって」

岬ちゃんが真弓ちゃんに貸していたものがあった?
確かに同じクラスだったし、仲も良かったし、とことなく雰囲気は似ているような気がする。
その二人の事だから物の貸し借りぐらいはあるよな。

「それで岬さんは何を持っていったんですか?」

「確か……USBメモリが何とか言ってた気が……」

USBメモリ? そんなものを何のために?

なぜ、必要だったのか?

朱里ちゃんは顎に手をやり、何かを考えている様子。

「あ、俺達も真弓ちゃんの部屋に招待してもらっていいですか? 俺等も時間無いんで」

俺がそう言うと、七海さんは喜んで真弓ちゃんの部屋を教えてくれた。

真弓ちゃんの部屋は階段を上ってすぐにある部屋で中に入ると……いい匂いがした。

香水の匂いか?

「女の子の部屋って感じだね」

「なるほど。これがイマドキの女子の流行りか」
朱里ちゃんは何か一人で呟いている。

「では、わたしは……下に居ますのでごゆっくり」

ふふふと笑って七海さんは部屋を出ていった。

何か勘違いしている気がするけど……俺の気のせいだよな。

「では、欠片探しとしましょう」

朱里ちゃんがエイエイオー的に一人で盛り上がっている中、俺は部屋の隅にあった押し入れに目が行った。押し入れは完全に塞ぐことはできておらず、隙間からキラリと光るものが見えたのだ。

「あ、朱里ちゃん……あ、あれ!?」

指を指してキラリとするものを教えると、朱里ちゃんはすぐに押し入れの中を開けた。

そこにあったのは……大量のゴミと血が付いている包丁やナイフだった。

「こ、これは……一体何なんだ?」

「どう見ても見ている通りのものですよ。あ、この紙くずは何でしょうかね?」

そう言って、朱里ちゃんがぐしゃぐしゃになった紙くずを開いた。

「ふっ、はははははははははははははは……そうかそういうことだったんだ」
あまりの笑い声にびっくりしてしまった。
それに人の家なのにそんな大声で笑うなっての。一緒にいて恥ずかしいだろ。だけど、家が大きくお陰か下から怒られるような声は無ければ、心配している声もない。
朱里ちゃんの笑いが止まり、ゲホゲホと咳き込んだ後、

「私達ってやっぱり馬鹿だね。敵はもっと多かったんだよ」

朱里ちゃんはそう言って、その紙をぐちゃぐちゃにして破り捨てた。

そうして更に続けてこう言った。

「私達はもう関わらない方がいいよ。このことには絶対に。関わったら、本気で生命が危ないから」

あまりの朱里ちゃんの変貌振りに驚かされつつも俺は訊ねた。

「どういうことだよ?」

「忘れて。全部、忘れて」
朱里ちゃんの様子がオカシイと判断した俺はこれは何かヤバイことに巻き込まれていると悟り、
「うん。分かったよ」
俺がそう言うと朱里ちゃんの表情は少し安堵していた。

「それじゃあ、帰ろっか?」

そう言って、朱里ちゃんは部屋を出て行くので俺も後を追いかけた。


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