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チャット始めたら、危ない女が現れた。

片山樹

記憶の欠片

「し、知らないよ。そっちは何か思い出したのか?」
 彼女はキョトンとした表情で俺を見つめた。
 そして、「あ、そう……それならいいの」とだけ言い残し、寝返りを打った。
 何か怒っているのか?
 俺が言ってはいけない事でも言ったのだろうか?
 それは分からない。
 だけど、彼女は何か俺に隠し事をしているに違いないと確信を持った。
 それは別に根拠があるわけではない。ただ、なんとなくそう思っただけだ。長年の経験の勘というものだろう。
 ✽✽✽
 入院してから、1週間が過ぎた。
 俺の小指は包帯でグルグル巻きにされたままだが、脚の包帯は外され身体が動かしやすくなった。
 しかし、未だ田神真弓の容態は悪いらしく心配してしまう。
 話によると、そろそろ病室を替えるとか小耳に挟んだことがある。
 だけど、俺が見た中では彼女はそんなに容態が悪そうには見えないが、俺の前では我慢でもしているのか?
 「なぁ、真弓。お前、容態はどうなんだ?」
 俺がそう喋りかけると彼女は読んでいた本から目だけこちらに向け言った。
 「普通よ。っていうか、渚君。
最近ずっと同じことを聞いてるわよ?
 もしかして若年性アルツハイマーかしら?」
 どうやら、今日も彼女の毒は消えないらしい。
 可哀想な人だ。傷もまだ癒えないみたいだし。

 その日の真夜中。
 俺は突然腹が痛くなった。
 もう革命的な痛み。10年に一度来るか来ないかレベルのビックウェーブ。
 そんなものが来たら、当然トイレに駆け込んだ。もう、腹を抑えながら必死に走る姿はメロスを連想させる程に。勿論、走ったりするとスリッパのかつかつという音が響き、暗いくらい病棟に不規則な恐怖をもたらした。

 どうにか便座に着くことができ、「ふぅー」と空気を吐いた直後だった。
 スリッパの音がかつかつと聞こえ始めた。それに何かを引きずっているのか、ギィィーという黒板のキィーみたいな不快音も一緒だ。
 俺は看護師さんが何かを運んでいる音だろうと確信を持ち、自分の受け持っている役目トイレをこなす事にした。

 

 


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