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チャット始めたら、危ない女が現れた。

片山樹

天文学部と謎の美少女 その3

 時刻は夜の8時50分。
今、俺はチャリを漕いでいる。それもかなりのスピードで。
自分が夜の9時にあの女と約束をしたからだ。別に行く理由などは無いし、律儀も無い。
だが、俺は全力でチャリを漕いでいる。それに幼馴染の恵梨香が今日は俺の家に外泊しているというのに。
本当に馬鹿なやつだ。だから俺は恵梨香が風呂に入っている隙をついて家を飛び出したわけ。
あぁー今頃恵梨香は怒っているだろうな。だけど、俺が鍋山公園に行かないとあの馬鹿はずっといると思うし……ってわけで約束を守っている。電話やLINEであの馬鹿に連絡を取れば済む話なのだが、俺はあいつの連絡先を知らない。おまけにあいつが何年生なのかも知らないし、名前も知らない。
はっきり言って、かなり謎。そんなに謎なら自分で調べろよって話なんだけど、俺はそんなに教室から出たくないというのが山々。それに一人で違う教室を覗くとかまじで無理。どれくらい無理かと聞かれたら、頼んだラーメンに髪の毛が入ってたぐらい無理。まぁ、そんなわけで俺にとってはあいつはほぼ謎。
だけどさ、なんかかなり俺はあいつに惹かれるんだよね。
謎の美少女ってやつが特にね。二次元に置いて、かなりの頻度で出てくる不思議キャラってやつね。
それを何となーくだが感じてるわけ。それでわざわざチャリを漕いでいる感も少しある。
それにあいつの近くにいると楽しそうとか思ってる。本当に自分って、二次元脳だな。まぁーだがいい。
ってわけで、閑話休題。
 俺の家から鍋山公園までは自転車を走らせて大体3キロ程度。だから、思い切り走らせば10分程度で着くはずだ、それが平坦な道の場合。
だけど、鍋山公園ってのは丘の上にある公園でかなりの坂を上らなければいけない。もう、かなりしんどい。
帰宅部にこれは辛いぜ。あ、俺一応天文学部だった。がっつり忘れてた。
ギコギコと自転車のチェーンの音がきしむ。その音を聞いて、夜道の怖さを忘れる。
というか、夜に外に出るのは久しぶりだ。何ヵ月振りだろう。っていうか、学校終わって家に着いてから外に出るのは買い物だけだからな。
本気で懐かしい。だけどさ、あまりにも寒すぎだろ。この秋を通り越して、もはや冬の寒さ。天気予報士もびっくりだぜ。まぁ、そんな夜道を一人で孤独で走行中。凍死しそう。
あぁー来なければよかったとまだ公園についていないが思ってしまう。
これであの馬鹿がいなかったら、裁判を起こしてやる。くるくる詐欺とか、怖すぎだろ。
いや、くるくる殺人か。寒い夜に待ち合わせに必ず来ると言いながらも、来なくて待たされた人は凍死するという画期的な殺人。あ、これは俺のユウペディアに登録しとこ。
そんな時だった。一台の車が俺の横を通り過ぎる。
それもめっちゃ高そうな車。ハンドルが左の座席にあったし外車だ。
それに驚くべきことがあった。運転手は黒いスーツを着た男でかなりイカツイ。
そして後ろに乗っていたのはどう考えても、あの馬鹿だった。
って、おい! なぜあいつがあんな外車に?
もしかして誘拐? いや……そんなはずはないはずだ。多分……
俺はそう思うと突然、緩めていたチャリを全速力で漕ぎまくった。
ギコギコとチェーンの奇怪な音が夜道に響き渡り、怖さを演出する。
だが、そんなことを無視して俺は全体重を右と左のペダルへ交互に乗せる。
すると、一気に加速。おまけにギアを6に上げ、本気モード。
俺は本気でさっきの外車を追いかけた。
だけど、どんなに頑張っても追いつくことはできない。
それに寧ろ、離されるばかり。あぁークソ。どうすればいいんだ。
俺はそう思い悩む。だけど、どうしたらいいかも分からず、チャリを漕ぎ続ける。
すると、前方に鍋山公園らしき場所を発見。
俺は最後の力を振り絞って、チャリを漕いだ。
前を走っていた外車が鍋山公園の前で止まる。
俺は一気に拍子が抜けた。
車のドアが開き、あの馬鹿が出てきた。
「あ! 渚君」
俺に気付き、喋りかけてくる。
「おい……大丈夫かよ?」
「何が?」
きょとんとして、俺の表情を伺っている。
本当に意味が分からないのだろうか。
「だから、お前……変な目にあってないか? あの運転手怖そうだし」
俺がひそひそと小さな声で言うと、彼女は笑いながら言った。
「はぁ? 何、言ってんの。この人は私の……」
途中で彼女が言葉を止ぎる。
「まぁ、そのあれ。あれよ、お兄さんよ!」
自分の兄をあれ扱いとは妹好きの奴等が聞いたら悲しむだろうな。でも意外と口が悪いのもありかもな。
「そ、そうなのか?」
釈然としないが、本人がそう言ってるのでそうだろう。
俺はとりあえず、彼女のお兄さんに挨拶でもしといた方がいいだろうと思い、確認すると俺を睨んでいた。ちょっと怖い。だが、仕方ない。
トントンと車をノックする。
すると、彼が車の窓を開けて言った。

「なんだ?」
かなりの低い野太い声に圧倒される。
「あの、俺。渚夕と申します。その……」
俺、あいつの名前知らねぇーわ。
どうしよう。
「そうか。俺の名前はアレックスだ。朱里あかり様がいつもお世話になっているようで済まないな」
彼は優しく俺に言った。
え? 意外と良い人なのか?
それにアレックス? おまけに朱里様だと?
何かのお姫様か何かか?
まじ、意味わかんねー。世の中、不思議が一杯。

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