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チャット始めたら、危ない女が現れた。

片山樹

天文学部と謎の美少女 その2

 私は馬鹿だった。今なら私はそう思う。というか、あの頃も思っていたはずだ。
でも、私は言えなかった。勇気が無かったから。本当に私は弱虫だ。何も変われていない。

 私が天文学部に入部? いや、強制的に入り浸り始めて早二ヵ月が経った。私はどちらかと言えば素直な人間なのだ。だけど、臆病。それが傷だと思うし、自分のチャームポイントとか思ってる。入り浸り始めた当初はどんなことをしているのだろうという不思議があったが、今はそんな気はさらさらない。居候してるみたいな言い方だけど、この部室は本当に静かだ。
もう、本が捲られる音が度々する程度で残りは特に無い。外部からの音はこの部屋自体が特殊な結界を張っているみたいで(そんなこと実際には無いが)、遮断されていた。
それはこの天文学部を設立させた張本人である渚夕という人間が放つオーラの影響だろうか、それともこの部屋自体が他の教室と離れているためなのかは分からない。
でも分かることと言えば、私はこの空間が好きということだ。
この無造作に並べられた椅子や机。そして、本を淡々と読む彼の姿に私は魅了されていた。
ロマンチックな表現をしたが、私は別に彼が好きでは無い。あ、誤解を招くかもしれないので言っておくが、私はツンデレでは無い。
それともう一つ、好きでは無いは訂正して、私は彼を恋愛対象として好きではないにしておく。そこ、大事! かなり大事!
先生がテスト前に黒板をドンドン音を立てて説明するぐらい大事!
本がパタンと閉じた音がした。
そして、彼の声がする。
「お前、何やってんだよ? さっきから頷いたりして……もしかして、お前頭でも打ったのか?」
確かに頭を打った方が良かった。
こんな気持ちになるのなら……さっきの恋愛対象で見ていないは嘘。
私はオオカミ少女だ。
「いや……別に何もない」
私がそう言うと、彼は適当に答え、また本を読みだした。
もう、何でこんなにも可愛い女の子がいるのに無視するんだろう。
まじ、ありえないとか思いながら、彼をじっと見つめる。
彼は私の目線に気付いたみたいで言葉を発した。
「何だよ……」
少し照れているようにも見えるがどうだろう。
照れているのなら、私の美貌に魅了されてきた証拠かなとか思ってしまう。
って、私何て大胆発言を。

「いや、別になにも無いって」

「あ、そう……それはと言えば、今日は流星群が見れるらしいぞ。まぁ、俺には関係ないけど」
彼はいつも脱力だ。おまけに口が悪い。彼と一緒のクラスになったことが無いので、何とも言えないのが事実だ。
でも、流星群というのは悪くない。
「それだ! それです! 今日、流星群を見ましょう!」
私がそう言うと、彼は面倒くさそうに頭をぽりぽりと掻く。

「俺は残念ながら、パ——」
私は彼を輝く目で見ていると、言葉を止めてしまった。
多分だけど、私の目を見て意思が変わったのだろう。

「パスと言いたいところだが、たまには悪くないみたいだな……はぁー」
彼が私の意見に賛同してくれた。それだけで私は嬉しかった。

「……恵梨香絶対に怒るだろうなぁー」
彼がぼやく。恵梨香? 誰のことだろう。

「何言ってるんですか?」

「あ、何でもねぇーよ。とりあえず、流星群が見えるのは夜の9時ぐらいだ。その時間に学校に集合。それでいいな?」

「学校に集合するんですか? 私が天体望遠鏡持ってくるのに重いですよ」

「あぁーわかったよ。じゃあ、俺が持ってやるからお前の家を教えろ」

「そ、それはちょっと……」
私は考える。男の子に家がばれることが嫌だったわけではない。

「あ、そう? それならお前が一人で持てよ」
彼は冷たく言った。この脱力を通りこして、生きる価値が無いこの男を見ているとイライラする。
だけど、こんな男だからこそ、支えたいと思ってしまう自分がいる。
私って馬鹿だ。でもこれが上に立つものの試練なのよね。仕方が無いわ。

「わかった。だけど、私の家の近くに景色がいい公園があるの? そこでいいかしら?」

「まぁーいいが。それって、鍋山公園か?」

「そーそうそう。意外と知ってるのね」

「まぁーな。俺はこう見えて、通なんだよ。ってか、あの公園は有名だからな」

「確かにそうだね。それじゃ、その公園に9時集合ね!」

「お、おう……」
彼は弱弱しく返事をした。

「って、やべぇー。今日はちょっと用事があんだ。じゃあな」
彼はそう言って、帰って行った。

やっぱり、彼は今日は忙しいのだろうか?
それなら、迷惑なことをしてしまった。だけど、さっき言ってた人の名前って女の子名前だったよね?
もしかして、彼女? いや、無い無い。あんな脱力系男子を好きになる変わり者なんていないはずだ。
私はそう思いながらも胸に閉じ込めた何かは消えることは無かった。

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