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チャット始めたら、危ない女が現れた。

片山樹

天文学部と謎の美少女 その1

 俺は自分の居場所が欲しかった。生徒会という場所が居心地が悪くなってしまったから。
昔から俺は諦め癖があるらしい。無理と分かったら逃げ出してしまうらしい。
だから部活を作った。それ以外に特に理由は無い。
敢えて言うなら、星が見たかったから。それぐらいの理由。
俺は子供の頃から星を見るのが好きだった。
手が届きそうなのに、届かない距離にある星に。
今、手を伸ばせば掴めそうだと思っていた。思っていたかった。
だから、作ったのだ。作ったと言えど、学校としては認めてはいない。
非公認の部活。俺は別に部員など別に要らなかった。というか、一人でゆっくりしたかった。
それなのに……

「あの、すいません! それで私はこの部活に入ってもよろしいでしょうか?」
正真正銘の美少女が天文学部に入りたいと言い出したのだ。

「あぁーとりあえず中に入ってくれ」
ひとまず、廊下で喋るのも肌寒いので相手に教室に入るように促す。
すると、彼女はこくりと頷き教室の中に入った。
そして我が天文学部を見て一言。
「なんか天文学部らしくないですね」
当たり前だ。だって、この部活動は非公認なのだから。
「まぁーそれもそうだろ。なにせ、この部活は俺が勝手に作ったからな」
そう言いながら、俺は彼女を適当な椅子に座らせる。
この教室は以前は使われていたらしいが年々少子高齢化社会の影響で使われなくなった教室の一つだ。
その為に、この部屋には机が何かのバリケードを作っているみたいに重ねられている。
椅子も部屋の中にぽつぽつと散らばって置かれている。
そして、俺も適当な椅子に腰を下ろす。
「勝手に作っただなんて……やっぱり変わり者ですね」
彼女は俺を見て笑いながら言った。
その笑いは呆れているのか、それとも尊敬しているのか分からない。
「聞いたとおりです……」
彼女が言葉を続けた。
「聞いたとおり? どういうことだ?」
俺が尋ねると彼女は墓穴を掘ったようみたいであやふやしだした。
かなり、反応が面白い。
「いや、別になんでもないですよ。その……なんていうか、お友達が変な人がクラスにいるとか……なんとかかんとか言ってて……それでその人が天文学部を無断で作ってるとか聞いて……それで……」
あぁー大体理解はできた。
要するに彼女の友達が俺のクラスの誰かでそいつが天文学部を作っている人の話(俺)のことを話し、気になって来てみたということなのだろう。
「まぁ、言いたいことは察した。つまりというか、それで入部したいと言ったのはなぜだ?」
俺は気になっていた事を聞いてみた。
彼女がこの部活に入る理由が聞きたかったのだ。
こんな汚く、正式な部活でも無いこの部活に入る理由が無いからだ。
「そ、それは……」
彼女が言葉を詰まらせる。
やはり、彼女は俺を冷やかしにきたのだろう。
もしくは彼女もただの興味本位と言ったところか。
「何も用が無いのなら帰ってもらうぞ。俺は忙しいからな」
「いえ、ちゃんとあります! 私だって……」
彼女が下を向いて俯いた。
顔が少しばかり赤く見えるのだが、俺の気のせいだろうか。
「それで、なんなんだ?」
俺は嫌気たっぷりに尋ねる。
美少女と喋れるというのは嬉しいことだが、それよりも馬鹿にされている気がしてイライラしていたのだ。
「わ、私! 星が好きなんです! だから……この部活に入らせてください!」
彼女は椅子から立ち上がり、頭を下げて言った。
彼女のその姿勢を見て、俺は思った。
彼女は本当に星が好きなんだと。それと、彼女から俺の事では無いが直接『好き』と言われて、俺は顔が赤くなってしまった。我ながら、馬鹿である。いかんいかん、これは罠だ。世界の陰謀だ! と最近自分が読んだ小説を思い出し、気を戻す。

「残念だけど、それは無理だ」
俺はきっぱりと断った。

「な、なんでですか……」
彼女は悲しそうに俺に尋ねる。
表情はさっきと明らかに違い、蒼白としていた。

「この部活には星を見る為の器具が無い。だからこの部活は君の役には立てない。それにこの部活は元々入部希望者を誰も集めていない」

「見てすぐに器具がないのは分かりました。だけど、大丈夫です! 私、天体望遠鏡持ってますんで!」
彼女が俺に微笑む。入る気満々みたいだ。

「だから、この部活は希望者を集めてないの? 聞いてる? はぁー」
久し振りの他人とのコミュニケーションがこんなにも疲れるとは思っていなかった。

「あ、いいですよ。私は貴方に勝手に付いていくだけなんで」

「じゃあ、俺は行くところあるから」
俺はそう言って、椅子から立ち上がる。
それに合わせて彼女も立ち上がる。
そして、俺は部室を出た。
勿論、後ろから彼女が付いてきている。
あぁーめんどくせぇー、俺はそんなことを思いながら後ろを振り返る。

「あのさぁー俺がどこに行くか分かってる?」
俺がそう尋ねると彼女が首を横に振った。
「あのなぁー俺は今からトイレに行くんだよ。そんなに見たいんだったら、見てもいいけど……」
俺が言葉を続ける前に彼女は走って、部室へと戻って行った。
可愛い所もあんだな、それに悪い奴には全然見えねぇー。
おまけに美少女だし……っていかんいかん、これは陰謀だ。
そう思いながら、俺は用を足して部室へと戻った。

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