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チャット始めたら、危ない女が現れた。

片山樹

36 岬の物語

 私には幼馴染が二人いた。
一人は男の子で、もう一人は女の子。
年齢は私と同じ。
男の子は無邪気で、女の子は大人しい。
私が居ないとこの二人は仲が悪いらしく、喧嘩ばかりしている。

そんな矢先、私は両親に告げられた。

「岬、引っ越す事になった……」

後々、聞いた話だがお父さんの仕事の都合上決まった事らしい。
まだ、小さかった私は親に反抗することも無く受け入れてしまった。
本当にこの時の私は馬鹿だ。

この時、きちんと『嫌だ』と答えていればこんな片想いをせずに済んでいたかもしれないのに。

私はとりあえず、この事を幼馴染の二人に教えてあげようと思った。
でも、二人は私が居なかったせいで喧嘩をしていた。

だから、話す事ができなかった。

「岬、お前何やってんだよ! おせぇーぞ! 今日は秘密基地に行く予定だろ?」

男の子は私が来るのが遅かったので怒りながらそう言った。

「みぃーちゃん、ずっと待ってたよぉ」
女の子には目を真っ赤にして抱きつかれた。

私はそんな女の子の頭をポンポンと撫でる。

すると、女の子は嬉しそうに微笑んだ。

こんな生活がずっと続くと思っていた。

思っていたかった。

だけど……秘密基地に行く途中。

突然、女の子が倒れた。

私と男の子で彼女の名前を呼ぶも彼女の意識は無い。男の子はすぐに走って大人を呼んでくれた。私は何も……あの時できなかった。

その後、救急車が来て女の子を病院に連れて行った。

「俺……まだ、恵梨香に謝ってないよ……」
男の子は泣き出した。いつもは無邪気な男の子もさすがに女の子が倒れるというのは辛かったのだろう。

私はそんな男の子を励まそうと男の子に言う。
「ちゃんと、謝れるよ! だから、今は一緒に無事である事を願おう!」
私と男の子は公園のベンチで女の子が無事である事を願い、手を合わせた。

『女の子が無事でありますように』と。

その願いが叶ったのか、女の子の意識が戻った。

その話を聞いたのは、女の子が倒れた日の深夜だった。私は一人で寝る事ができず、お母さんに何度も何度も女の子の事を聞いたらしい。

そして、私が引っ越す日になった。

男の子は女の子をその日以来、ずっと心配して喧嘩をすることは無かった。それにちゃんと謝れたらしい。

そんな男の子が顔を真っ赤にして「あの時はありがとうな」と声をかけてくれた時、私はとても嬉しかった。

だけど……その男の子がいつも見ているのは私ではなく、女の子の方だった。

本当にこの世界は残酷で、そして無慈悲だ。
だけど、この世界はとてもとても甘い。
恋という蜜はとてもとても。

だから、私は私なりの最後の気持ちを振り絞ってあるプレゼントをした。

「こ、これ!!」

私がそう言って、男の子に渡したのは四つ葉のクローバーのストラップ。

「あ、ありがとう……ちょっと照れくさいな」

男の子は頬を掻き、恥ずかしそうだ。
私からのプレゼントを喜んでくれて嬉しかった。

そして、女の子にもあるものを渡す。

「はい、これ!」

私が彼女に渡した物も四つ葉のクローバー。

「あ、ありがとうぉ! みぃーちゃん! これ、大事にするね!」

女の子はストラップを大事そうに掴み、嬉しそうだ。

その日、私達は暗くなるまで遊び続けた。

こんなにも遊ぶ事が楽しかったと思う日はもう来ないと思った。

そして最期にお別れの言葉を告げる。

「じゃあ、また会う日まで」と。

いつもは、「また、明日」と言うけどもう明日には私は居ないから。

男の子と女の子はそんな私を不思議そうに見つめていた。

だって、あの時の私は涙を流していたから。

ずっと遊んでいる最中も涙を流していたから。

そんな私を見て、二人は驚いていたのだろう。

「俺達……知ってるんだぜ。岬、引っ越すんだろ?」

男の子が優しく私に問いかける。

「みぃーちゃん。私、嫌だ! 離れたくない!」

女の子が泣きながら、私に抱きつく。

「私も離れたくない……だけど、無理だよ」

「無理じゃないよ! ほら、これ見て!」

女の子が手に本物の四つ葉のクローバーを持って、私に見せてきた。

「これで……お願いするから大丈夫だよ!」

女の子なりの優しさが私にはとても嬉しかった。だけど、私に使ってほしくない。
女の子には女の子の為に使ってほしい。

「ダメだよ! それはえりちゃんの。私も四つ葉のクローバー持ってるから」

私はそう言ったが、本物の四つ葉のクローバーは持っていない。

だけど、強がった。

女の子に使ってほしかったから。

「えっ? 本当? これで明日からも一緒に遊べるね!」

女の子は嬉しそうにそう言った。

だけど、男の子は私の嘘に気づいたみたいだ。

「持ってないだろ? クローバー」

「い、いや……持ってるよ!」

私は強がった。

だけど、男の子には全てお見通しだ。

「じゃあ、見せてみろよ!」

「見せることはできない! 家にあるから!」

私はそう教えてあげた。

すると、男の子は根気負けした。

そしてこう言った。

「お前が絶対にどこに行っても俺が必ず見つけ出す。だから……その時まで四つ葉のクローバーを肩身離さず持っておく。だから……その日までバイバイな」

「そ、それいいね! 私も!」

女の子もそう続けた。

私の目にはまた涙が溢れ出てきた。

「あ、ありがとう……」

こうして、私達は別々の道を歩み事になる。

しかし、二人は知らない。
私が四つ葉のクローバーにある魔法ねがいを込めたという事を。

男の子のクローバーには『私と結ばれますように』と。

女の子のクローバーには『幼馴染のままでいれますように』と。

そして私のクローバーには『また、二人と会えますように』と。

 

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