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チャット始めたら、危ない女が現れた。

片山樹

34 模範解答 

 何か引っかかる事がある。気がかりな事があるはずなんだが……それに気づけない。
怪しいと思っているんだが、それが何か分からない。

だけど……確実に何かが引っかかる。

「ほら、遅い! 遅い! もっと早くしてよ!」

そんな俺は今、真弓から会計を頼まれた。その間、真弓は色んな場所を回ると言っていた。彼女曰く、会計は疲れるらしい。らしいじゃなくて、かなり疲れる。俺に変わってからはかなり効率が悪くなったらしく、客の反応もかなり悪い。

「まぁ、そんな気にすんなって」と健一やクラスメイトも言ってくれた事だけが唯一の救いだ。

「あ、渚君! 会計だったんですね!」

眼鏡を掛けた女の子が俺に喋りかけてきた。

「あぁ……えっと、あの時の……」

名前が覚え出せない。というか、名前知らない気がする。

「そうそう! それより江川さん、今どこにいるかわかる?」

「恵梨香か……あいつなら今、岬と一緒に……」

「えっ? 岬さんならさっき一人でいましたけど……」

あっ、しまった。

俺は岬と恵梨香が一緒に居れば安全だと思っていた。だが、それは間違いだ。恵梨香と岬は犬猿の仲だからだ。俺という中枢役がいたおかげで成り立っていただけなのだから。

今……あいつは危険な状態だ。

今すぐにあいつを助けに行かないと。

七海が先手を打った可能性がある。

早く行かないと……朱里の時みたいになるかもしれない。

早く……行かないと。

冷や汗が身体を流れ、暑かった温度を冷やす。

「健一……会計頼む! 俺は行かなければならない場所があるんだ……」

健一にそう伝えると健一は微笑みながら、「ここは任せろ!」と太鼓判を張ってくれた。

「じゃあ、行ってくる」

「頼んだぜ。だけど……気をつけてな」

健一は下を俯きながら、心配してくれた。

「あぁ、わかってるよ。お前もな」

健一にそう告げ、俺は恵梨香の元に向かう。

「待っとけよ……恵梨香。俺が……絶対に約束は守ってやるから……」
恵梨香……お前に会いたい。

お前にすぐに会いたい。

もう迷わない。君だけを愛す。

俺はもう二度と迷ったりしない。

何回も何回も回り道をしてきたけれど、俺が好きなのは恵梨香、お前なんだ。

お前しか、いないんだよ。

だから……すぐに会いに行く。

絶対に……だから無事で居てくれ……

そして、七海に謝る。

これで全てが解決だ。

そしたら……1から、いや0からやり直そう。

君の声や髪を見るだけで胸が痛いんだ。
君が悲しそうにしてたら、助けたいと思うんだ。だから……もう逃げない。

それにあの時、俺はお前に誓ったんだ。

「俺がずっと守ってやるから」と。

 俺は走る。がむしゃらに。誰かが俺を見て、クスクスと笑っていたとしても走り続ける。

君に会うまでは。絶対に。

「あ、渚さん! 何やってるんですか?」

朱里が俺に喋りかけてきた。

「悪い。今は行かなければいかない場所があるんだ」
そう言って、俺は受け流そうとした。

だが、彼女が言った。
「待って下さい!」
俺はその言葉に立ち止まった。

「な、なんだ? 俺は忙しいんだ」

「恵梨香さんは無事ですよ」
彼女が真剣な眼差し言った。

「なんでそんなことが言い切れるんだ?」

「だって、私さっき見ましたから。恵梨香さんと岬さんが楽しそうに会話している姿を」

「はぁ? あのなー岬と恵梨香は仲が悪いんだぞ。そんなことあるわけないだろ?」

「そう言うと思ってしまった。本当に岬さんは可愛そうですね」

「なんで、岬が関係すんだよ」

「まぁ、それは岬さんからでも聞いて下さい。それじゃ、私からのヒントです。ヒントは偽アカ」

「偽アカ? 意味がわかんねぇーし、いきなりだし何だよ」

「意味が分からないですか……では、これを見てください」
そう言って、朱里が俺にスマホを差し出した。
俺は画面を見る。
「これは……岬の偽アカだな。だけど、これは……」

「そう、実は最近になってこのアカウント変なツイートを始めたんですよ」

「それがこれってことなのか?」

「そうです。これが、ですよ」

『ガーベラ』

『アイビ―』

『ダリア』

『オダマキ』

「これは何なんだ?」

「花言葉ですよ、花言葉」

「花言葉?」

「はい、花に込められた想いですよ」

「へぇーそれでどんな意味が?」

「ガーベラには『情熱』や『希望』。アイビーには『永遠の愛』。
ダリアには『裏切り』。オダマキには……『捨てられた恋人』って意味があります」

「最初の二つは明るいのに残り二つは暗いな。意味が分からない」

「確かにそうですね。ですけど、不可解なことに気付きませんか?」

「不可解? わかんねぇー」

「そうですか? よく考えて下さいよ。花言葉って色んな意味があるんですよ」

「色んな意味?」

「はい、そうです。例えば、アイビーには『死んでも離れない』という重い意味があるんですよ」

「えぇ?」

「じゃあ、ガーベラにもそんな意味が?」

「いいえ、ガーベラにはそんな意味はありません」

「そっか……それなら、俺らの思い違いだろ」

「ちょっと渚君のTwitterで確認したいことがあるので見せてください」
俺はそう言われ、なんで俺のスマホを渡さなきゃいけないんだよと思いながらも朱里に渡す。

「やっぱり……そうでしたか。私の中でやっと繋がりました。この真相が」

「真相? どういうことだ? 朱里……」

「偽アカを作った張本人、すなわち一連の事件の犯人ですよ」

「それはどういうことだ?」

「それは後から説明します。その前に体育館に行ってみて下さい。犯人はそこにいますから」

「えぇぇ? ちょっと待て! 俺にも理解できるように説明を」

「せっかちですね。じゃあ、せっかくなので犯人を教えときます。犯人は—―です」
俺はその言葉を聞いた瞬間、自分の頭の中に入っていたピースが埋め込まれていく。確かに納得がいく。

「朱里、ありがとう」
俺はそう伝え、体育館へと駆けだした。

朱里の顔はもう見えなかったけども、寂しそうにしていたのはなんとなく分かる。

だけど、しょうがないんだ。

これが現実なのだから。

男性は一人の女性を選ばなければならないのだから。

世界は全く優しくないのだから。

だから、仕方が無いのだ。

そう自分に言い聞かせた。

自分が今まで会ってきた女性に対する謝罪というか言い訳。

自分の心の底に閉じ込めた。

もう、これ以上悲しい想いはさせない方がいいと。

片想いが辛いのは俺でも分かるから。

そんな想いを彼女達にずっとさせるのは苦しい事だと思うから。

だから、彼女達に最期に機会チャンスを上げた。
だが、そんなものはただの偽善だ。自己満だ。そんなことがあっても何の意味も無い。
本当に好きな人と共にいるからいいのだ。
相思相愛の仲だからこそ、成り立つのだ。
俺のことを好きだと言ってくれる人が、女の子がいる前で俺は何とも思ってもいないのに『好き』という言葉を上辺だけで言っていいはずがない。
それは自分が分かっていたはずだ。

ただ約束をしてしまった以上は仕方ない。もう、やるしかない。不満は沢山ある。だけど、これで全てが解決するならいい。
それは幸せかもしれないし、不幸かもしれないのだから。

でも、一つだけはっきり分かっている事がある。

それは俺が一歩を踏み出さないと何も始まらないという事だ。

じゃあ、未来への扉を開けるとでもしよう。


「待たせたな。七海……会いに来たぜ。いや、こう言った方がいいかな? 委員長さん」

俺がそう言うと、そいつは不気味に笑いながら答える。

「ふぅ〜ん。やっと気づいてくれたんだ。待ってたよ、薫君。でもさ、その呼び方は止めてって言ったよね?」

彼女は長い髪の毛をクルクルと指で巻きながら言った。

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