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チャット始めたら、危ない女が現れた。

片山樹

23 健一の物語

俺はあの日、岬ちゃんと夕が付き合っていると知った日。実際の所を言うと、かなり夕の事が嫌いになりそうだった。友達をそう思うのは、ダメな事だと思っていたが、俺が好きだと公言している女の子と付き合っていると知って、怒り以外に何がこみ上げてくるだろう。と思いながらも学校に登校したものの、夕はまだ来ていなかった。岬ちゃんは教室にいたけど、喋るのはおこがましいと思った俺は夕が来るのを待った。そんな時だった。佐藤が俺に喋りかけてきた。

「貴様に聞きたい事がある。夕と名乗る者とマイラブリーエンジェルの岬殿は付き合っているのか?」
いつから、お前の天使になったんだよ! とツッコミを入れたかったけど、精神的にも肉体的にも朝練で疲弊していた俺はしなかった。

「さぁ……分かんね。あいつって結構、俺達に隠してるってか。自分の素性を表さないから」

「そうか。我は忙しい。では、さらば」

そう言って、自分の座席に戻っている佐藤の背中を見ていると当の本人がやってきた。他の男子の威圧感を異様に感じる。佐藤に至っては、完全に睨んでやがる。しかし、それには全く動じていない夕。もしかしたら気づいていないだけかも。寧ろ、眼中にないか。呑気に俺に挨拶する夕に少しの苛立ちを感じる。しかし、それを隠して俺は夕に問いかける。

「お前さぁ〜〜、俺等に内緒にしていることあるよな?」

✽✽✽
その後、俺は夕から岬と付き合っていない事を聞いて素直に嬉しかった。そして俺は初めて、岬ちゃんと喋る事になる。

「ねぇ、Twitterとかしてる?」流石に『昨日のツイートって何?』とか聞けるようなチャラ男ではないのだ。

すると、彼女は言った。

「私はTwitterとかやってないよ」と。

俺の心臓が凍った。止まった。裂けた。本当にショックだった。

彼女はTwitterをやっていない?

自分の顔がすぅーーと鳥肌が立つのを感じる。そんな硬直している俺を見て、岬ちゃんは心配そうに見つめている。

「大丈夫? 顔色悪いよ」彼女がそう言うので、俺はかっこよく「大丈夫」と答えたが鳥肌が治まる事はなかった。

彼女のアカウントを装って、誰かがツイートしていると考えたら苛立ってくる。彼女のそのことを言おうか迷ったが、彼女に伝えるのは不本意だと思った俺は裏でこのアカウントを使っている奴を見つけ出しぶっ潰すと誓った。

しかし、俺の彼女に行った善行を台無しにするような出来事が起こる。それは、夕の彼女である恵梨香ちゃんと葵がやってきた事だ。そして岬ちゃんに罵倒するのだ。彼女は何も知らないのに。彼女は意味が分からないままに。罵倒され続けた。俺はその場にいなかったのでその状況がどんなものだったのか、分からない。だが、夕や佐藤から聞いた話によるとかなり酷かったらしい。

そんな話を聞いて、今すぐにでも奴等を殴りたいと思ったがさすがに恵梨香ちゃんはしょうがない。なぜなら、彼女もある意味関係者、被害者なのだから。彼女はただ彼氏である夕の事を思って行動したのだから。好きという感情に動いただけなのだから。責める事はできない。それに葵がこの教室にやってきたという話を聞いて、昨日の葵が言った事を思い出した。

「渚夕をぶっ殺す」という言葉を。

そして俺は授業中に色々と考えた。

『岬ちゃんの偽アカウントを作った奴が誰なのか』ということを。

そして俺はある一つの答えに辿り着く。しかし、答えに辿り着いた所で俺はただの傍観者に過ぎない。この問題は、岬ちゃんと夕と恵梨香ちゃんと犯人の問題なのだ。だから、俺がこの問題に首を突っ込むのはお節介な気がするけど、俺は岬ちゃんを助けたい。岬ちゃんを守りたい。真実を解き明かしたい。そんな気持ちが俺を襲った。そして俺は、自分もこの問題の当事者になる為に夕に話しかける。

「なぁ、夕。本当にあれでよかったのか?」

✽✽✽
俺は夕が俺の考えと同じ考えだと思っていた。しかし、それは違っていた。夕は冷静だった。
ちゃんと俺よりも考えていた。そんな夕を俺は正直羨ましかった。当事者でも無い自分はこんなにも苛立ち、興奮しているのに、夕は至って冷静で客観的に物事を見ている。そんな夕を素直に凄いと思った。いつも夕は冷静に物事を判断して動いている。俺はいつも自分の思うがままに突っ走ることしかできない。だが、夕は違う。ちゃんと考えている。

だけど、今回だけは俺が正しいと思っている。夕が思っている事はそれはただの逃げだ。諦めだ。犯人なんてものは見つからない。そんなのは、やってみないと分からない。それに大体、俺は予想がついているんだ。

あいつが犯人だということを。

✽✽✽
その後、夕と喋る事は無かった。別に気まずかった訳ではない。ただ……考える時間が欲しかった。あいつが犯人という証拠を。しかし、そんな答えは出てこない。

そして時の流れは早いもんで、あっという間に4時間目が終わり、昼休みになった。もう、1日の半分が終わったか……と悲しい気持ちになりながらも学校があと少しで終わると思うといい気持ちだ。そして、机に伏せていた重い身体を起こし、背伸びをする。

すると、俺の頭にあることが閃いた。

分からないなら、犯人に聞けばいいんじゃんと。

我ながら、いい案が思いついたと思った。元々、俺は考えるという行為が苦手だ。それに考えるというよりも、動けば何とかなる派の俺にとっては考えるという行為は間違いだった。

自分のやりたい様にやる。

それが俺のモットーなのだから。

そして机に伏せて体力を回復していた身体を無理矢理椅子から立ち上がらせ、俺は岬ちゃんの元に駆け寄った。俺はこの問題の、いや物語の主人公にはなれない。だけど、俺も少しはカッコつけさせろという自分のこの世界に対する小さな反抗だ。

そして俺は彼女の手を握る。

あぁ、これが彼女の手かぁ……柔らかい。

「岬ちゃん、俺頑張るから!」

俺は堂々と彼女にそう言った。

そして教室を出て、俺は奴に、犯人の元に会いに行く。


✽✽✽
俺が犯人だと思っていた奴は教室にはおらず、食堂に居るだろうという情報を聞き、食堂に向かう。そこに奴はいた。呑気に、ラーメンを啜っている。俺も醤油ラーメンを食券で買い、おばちゃんからラーメンを受け取ると奴の向かい側に座る。

「よう、葵……お前に色々と話がある」

そう言うと、彼は啜っていた箸を止め俺に言った。

「食事中はおしゃべりは禁止」と。

葵がラーメンを食べ終わり、俺が食べ終わるのを待ってくれている。本当にこいつが犯人なのかと疑問ができる。

しかし、こいつしか考えられない。そう思いながら、最後の麺を啜り終わり、スープを胃袋に納めていく。個人的にラーメン系統は全てスープを飲むのが俺のモットーだ。それは別に美味しい、不味いかなんて事は関係なく、作ってくれた人に対するせめてもの俺の気持ちなのだ。朝練が終わって何も食べていなかったのでいつも以上に美味なラーメンもスープを全て飲んだ。
俺が葵に本題に入ろうかと訊ねる前に葵から俺に訊ねてきた。

「何のご用件かな? 健一君」葵の表情は薄っすらと笑みが零れている。その笑みは蛇が俺を睨んでいるみたいだ。全く、動けない。口が動かない。拳に力を入れ、目を閉じ、岬ちゃんの顔を思い出す。彼女が泣いて授業を受けていた光景を。そんなのは嫌だ。嫌だ。

 俺は彼女の役に立ちたい

「本題から入ろう。お前が岬ちゃんの偽アカウントを作っただろ?」

葵は笑う。俺を小馬鹿にするように。腹を抱えて笑う。葵が笑ってテーブルが揺れ、ラーメンが入っていた容器がガタガタと音をたてる。

「何がそんなにおかしいんだ?」

「ははっ……ご、ごめん。ちょっ……ははぁ」
まだ、笑いが止まらないようだ。失礼な奴だと思いながらも葵の異常さを再確認した。RPGとかだったら、一番敵に回したくない敵だ。何をしでかすか分からないからな。

「あぁ……さっきはごめん。取り乱しちゃった」テヘッと女子の様な素振りをして、俺に謝罪の言葉を述べ彼の尋問を始めるとしよう。

「さぁ、お前が偽アカを作った……というのはなさそうだな。さっきの行動を見る限り」

「あぁ、そうだよ。僕は作っていない。っていうか、実の所を言うと僕はある人に手伝ったというだけなんだ」

「ある人? 手伝う? 訳が分からん。馬鹿な俺でも分かるように説明してくれ」

すると、葵はやれやれと溜め息をつきながら俺に説明を始める。

「僕が渚夕に制裁を下そうと思ったが、その時にはもう遅かったんだ。狙っていた獲物を誰かに横取りされたみたいで本当に悲しかった。だから、僕はそいつと共に渚夕に制裁を下す手伝いをした訳だ」

色々と謎が残るというか、普通の会話では聞かない様な単語が飛び交う中で俺はあることを悟った。

「要するにお前は手伝っただけ……他に黒幕がいるってことか?」どこかの推理ドラマで聞いたことがある様な台詞を吐いた後、少しだけ恥ずかしくなる。

「そうそう。黒幕というのは言い方はあれだけど、ニュアンス的には一緒かな」

「そうか……でも、なんでこんなことを俺に教えてくれるんだよ?」

すると、葵はまた不気味に笑い出す。

「だって、君。仲間になる為に来たんだろ?」

悪魔の囁きのようだ。善意で動いたヒーローになりたかった偽善者を悪魔にするのか。なんて質が悪いのだ。悪魔というよりも、下等妖怪などにさせられそうだが。

「ち、ちがう! 俺は……ただ真実を知りに」

本当だ。真実を知って、犯人を……犯人を……この先、俺が何て言ったかは覚えている。

だが、身体が動かないんだ。葵の異様な空気に俺は動けない。霊力とか気とかそんなものは見えないけど、こいつには近寄ってはいけない気がするのだ。昨日、会った時にはこんな感じはなかったのに。

「おぉ、とごめんね。健一君。少し、急用ができてしまった」

葵が椅子から立ち上がる。

「あ、君の勇気と君の推理力に評してヒントを上げるよ。僕の共犯者の名前は『七海』ちゃんだよ。僕は彼女の顔もどんな人物なのかは分からないけど、渚夕に恨みを持っているらしい。今、僕が言える事はこれだけだ。じゃあ、ね」

容器を載せたトレーを持って、返却口に食器を置き、葵は俺が見覚えにある顔に喋りかける。

あれは……夕だ。横にいるのは、1年B組の江川恵梨香。確か、夕の彼女のはずだ。中々、可愛いんじゃんか。悔しいぃ。見た感じ、言い争っているようだけど……大丈夫か?

そんな風に俺が心配していると、葵が恵梨香を連れてどこかに行ってしまった。夕はやけくそになって、水を飲んでいる。冷静なあいつにもこんな一面があるんだなと親近感が湧いた。

✽✽✽
「これで、俺の話は終わりだ。質問があるなら、言ってくれ」

夕が最後の最後まで真剣にずっと俺を見て、話を聞いていたので結構嬉しかった。俺は夕が途中で飽きて、聞くのを止めると思っていたからな。

「特に俺からは何も無い」

「そうか……なら、俺から一つだけ聞くぞ。七海ちゃんって誰なんだ?」


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