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チャット始めたら、危ない女が現れた。

片山樹

21 導き出した解答

岬が教室に戻った後、俺は一人で階段に座り込みTwitter事件という忘れたい記憶を嫌でも思い出して、あの日の出来事を細かく思い浮かべる。しかし、答えは出てこない。どんなに悩んでも、答えを導き出すことはできなかった。

その結果、岬が教室に戻って10分後ぐらいに俺も床から立ち上がり、自分の教室に戻った。

英語教師に嫌われている俺はガミガミと怒られ、自分の座席に座る。

すると、後ろからまたあいつが喋りかけてきた。

「なぁ、夕。岬ちゃんと、何話してたんだ?」

本当にこいつは能天気な奴だと思いながらも俺はこいつの話を無視して、自分の質問を問いかける。

「健一、お前に一つ質問がある」

「なんだよ、言ってみろよ」

俺が勿体ぶった言い方をしたので、健一は犬のように俺の話に噛み付いてきた。

「あのさ、お前は『葵』って男を知っているか?」

そう尋ねた後に俺は葵の説明を付け加える。

「あ、ちなみに1年B組のな」

俺がそう言うと、健一は後ろで「なるほど」と一人で呟いた。

「はぁ? 何がなるほどだ!」

「やれやれ……本当に困ったな。夕は……」

健一が後ろの席で頭をポリポリと掻きながら言っている情景が何となくだが、予想がつく。

「っていうか、お前は何で葵と仲いいんだよ!」

まぁ、確かに健一はクラスの方では色んな意味で目立つ奴なので葵みたいな奴と仲が良くても確かにおかしくないが……普段はずっと俺と居るので葵と交流を持っている様には見えん。
だけど、こいつは俺と一緒にいるのになぜかこいつだけは友達が多くて、俺は少ない。
もう、本気で神を呪いたい気分だ。

「えっ? 言ってなかったっけ? 葵はサッカー部なんだよ」

葵がサッカー部だと言うのは確かに驚くべき事、いやあんな見た目からチャラチャラしている奴はサッカー部という感じがある。もしくは、帰宅部のチャラ男のオーラを感じていた。
ちなみに、俺は帰宅部こじらせてます。

「サッカー部かぁ……そうか。あいつってどんな奴なんだよ?」

健一に葵の情報を聞き出そうと俺は話を持ちかける。そしてあわよくば、奴の尻尾を掴みたい。奴がどんな人物なのかという証拠を。奴が偽善者だという証拠を。

健一は頭を抱え込みながら、悩み始めた。

そして「うぅ〜ん」と言いながら何かを決心したように俺に一言。

「お前が何をやっているかはわかんねぇー。だけど、俺はお前を信じたい。それに岬ちゃんもだ。だから、俺にも手伝わせてくれ! 俺にもお前ら二人が何をやっているか教えてくれないか? そしたら俺も教えるから」

俺は考える。本当にこの件について、こいつを巻き込んでいいのか。これは俺と恵梨香と岬と犯人の話だ。だから、こいつを巻き込む訳には……そんな風に思いながらも俺は答える。

「健一……頼む。力を貸してくれ。お前の知恵を……貸してくれ」

俺は健一に助けを求めた。犯人を見つける為に。

あの時の俺は無駄とか言っていたのに。

健一の言葉を無視して犯人を見つける事を諦めていたのに。

それなのに……俺は健一に今頃になって助けを求めている。恥ずかしさよりも自分の醜い心が気持ち悪い。

だって……俺はただの偽善者じゃないか。

健一は俺の言葉を聞いて口を開く。

「任せろ。俺がお前らは助けてやる」

健一の声はとても優しく、そして頼りがいがあるように聞こえた。


俺と健一の声がうるさかったらしく、英語の先生から注意を受け、静かに過ごす事にした。

そして1時間目が終わり、俺と健一はこれからの事についての作戦会議を始めようとした時、「私も話に入れてよ!」と真弓が、「何をこそこそとしているのかしら?」と岬が話に割り込んできた。俺と健一は顔を見合わせ、ニヤリと笑うと二人がこの話に入ることを承諾した。

「……ってことで、俺は葵が犯人だと思ってるんだ。だから証拠が欲しい。何かあるか?」

俺は三人の顔を伺いながら尋ねる。真弓は話があまり分かっていないご様子だ。

「特に無いわ」と岬。

「なら、健一。授業中話していた事の約束だ。話を聞かしてくれ」

すると、健一は驚いた様子で女子二人の顔を見て困った顔をした。

「おい、どうかしたのかよ? お前……もしかして、嘘とか言うなよ」

「違う。違う! ちょっと……話が女性向きの話では無いんだよ。この話は……」

健一が何か意味深な事を言ったが、俺はそれを無視して話を急かす。

「あぁ〜〜私達には言えない事なんだ……」と猫を被った岬が健一を上目遣いを見つめる。

これを後の『色仕掛けの戦い』と呼ぶ。

そして岬に負けじと真弓も「健一君。どうしても話せないことなのかな?」と健一を脅迫し始めた。

俺はそんな健一を見て、リア充爆発しろと思いながらも二人を止める。

すると二人は「しょうがない……」「わかったよ」と文句を言いながらも承諾した。

「いや、いいよ。二人にも話そう!」

「ありがとう……健一君」「やったぁぁ〜」と二人共それぞれ、健一に感謝の気持ちを伝える。

「聞きたくないと思ったら、無視していいから……」と前置きをして健一が話を始めた。

「前に俺が恵梨香ちゃんの話をした事を覚えてるか? 夕」

健一が俺に尋ねてきた。

こいつが恵梨香ちゃんと呼ぶのは何か釈然としないが今回は許してやろうと思いながら、頷く。

「実は……あの時、俺はお前にあることを伝えたかったんだ。もしあの時に言っておけば……こんなにもこの事件が長引く事は無かったかもしれん。本当にすまない」

健一が俺に頭を下げる。俺は健一がなぜ謝っているのか理解できなかった。

そして健一は岬にも頭を下げる。

「岬ちゃん……本当にごめん。岬ちゃんが今まで学校に来れなかったのは俺のせいだ」

そんな健一を見て、岬も困った顔をして「健一くんは悪くないよ」と慰めた。

「おい! 謝るだけじゃ、意味が分からん。訳を話せよ」

健一が重々しく頭を上げ、口を開いた。

「俺、実はあの時にTwitter事件の犯人について知ってたんだ」

そして間を置いて、健一はゆっくりと喋る。

「犯人は葵だ」

健一が言った言葉を聞いて、岬が表情を変え
「なぜ、健一君はそこまで断定できるのかしら?」と訊くと、健一は顔色を一つ変えず真面目な顔でこう言った。

「俺があいつに直接聞いたんだ」と。

「おい! どういうことだよ!」と俺が健一に怒りをぶつけようと思った矢先、岬が口を開いた。

「直接……なんか怪しいわね。まぁ、いいわ。もっと詳しく聞かしてちょうだい」

「あぁ、わかった。だが、最初に言っておいたが……ここからは話がかなりキツくなるぞ。それでもいいと言うのなら聞いてくれ」

健一が俺達三人をまじまじと見つめた。

「もちろん、頼むわ」「私も気になる」「頼むぜ。健一」と三人とも健一に返事を返すと健一は話を再開した。

今からの話は健一が俺に教えてくれた全ての事だ。多少の誤差はあるかもしれん。それでもいいと思うのなら、俺の友達である健一の懺悔という名の人生ものがたり一部分カケラを聞いてくれ。

6月10日の放課後。俺が文化祭実行委員の集まりがあった日の前日。
健一はサッカーの放課後練習が終わり、部室で制服に着替えていた。
その時だった。
「健一君!!」

突然、健一は後ろから声を掛けられ後ろを振り向くと、そこには葵がいたらしい。葵は元々、サッカー部に所属しているものの俗に言う『幽霊部員』なので練習には参加していない。そんな彼が今更、このロッカーに何の用だろうと健一は疑問に思った。

汗だくになった練習着を脱ぎ、制服に着替えながら葵に疑問に思った事を訊ねる。
すると、葵はそれを待っていましたと言わんばかりにニヤニヤしながらこう言ったらしい。

「実はさ……僕、今が愉しいんだ。それにあいつの苦しむ姿を見たいんだ」

健一は葵の言っている意味が分からなかったが、適当に相槌を打っていると葵は上機嫌になってペラペラと語り始めた。

自分が岬に振られたこと。
岬を憎んでいるが、それ以上に渚夕という男に対して殺意を持っていること。

そんな事を愉しそうに語る葵の姿を見て、健一はこいつには関わりたく無いと思った。しかし、そんな健一の心境を無視するかのように葵は言葉を重ねる。

「なぁ、健一君。僕に協力してくれないかい?」

「きょ、協力?」

「あぁ、そうだよ。協力だ」

「何を協力すればいいんだ?」

健一が葵に訊ね返すと、葵はクスクスと嗤い始め、しまいにはゲラゲラと嗤っていた。

そして、ゲホゲホと咳こんだ後、葵が苦しそうに言った。

「ご、ごめん……君があまりにも愚かな事を言っていてね、ははっ」

「生憎様だが、俺は馬鹿だからよく分かんねぇーんだよ。だから詳しく説明してくれ」

葵は少し困った顔をしながらも瞳を輝かしながらこう言った。

「渚夕をぶっ殺す」と。

葵の表情を見て、これは本気でやばい人の顔だと思った健一は荷物をそそくさにまとめ走って自宅に帰った。

そんなぶっとんだ話を聞いた俺を含める三人は身体を硬直させた。岬と真弓は嫌な顔をしている。

「これが俺の話だ。今まで聞いてくれてありがとう」と健一が言った後、すぐにチャイムが鳴り真弓と岬は自分の席に戻った。

確かに繋がっている。元々、このTwitter事件というモノは『岬』をターゲットとしてやっていたので無く、『渚夕』という俺自身を狙っていたのだ。しかし……そこに恵梨香という俺の彼女が登場して自体が悪化した。

あれ? おかしくないか? 俺と恵梨香が付き合っている事を俺と恵梨香以外には教えていないはずだ。いや、もしかしたら気づかれていたのか。どうだろう……まぁ、今回はそういうことにしとくか。

昼休みの教室にて。
「岬……本当にこれでいいのか?」
「うん、いいのよ。私はただ……犯人が知りたかっただけだから」

俺と岬は椅子に座って、この事件の結末をどうしようと考えていた。俺の意見としては、葵が岬に対して一言でも謝ってほしかった。でも、岬が出したこの物語の結末は、現状維持ということであった。これはもう、葵に関わりたくないという意味でもある。しかし、そうなればTwitter事件の犯人というのは岬という形になるかもしれない。それならば、岬はずっと白い目で皆に見られることがあるかもしれない。周りの皆がそうやって岬を除け者にするかもしれない。だが、俺……いや最低でも3人は岬の味方だ。それに岬ならば、すぐに周りの信頼を取り戻してクラスの人気者に返り咲く事は容易いだろう。そうなれば……俺とは関わる事は無くなるかもしれない。だが、それでいいのだ。元々俺と岬は『クラスにいる人』と『クラスの美少女』という関係だったのだから。文化祭が終われば、俺と岬は関わる事は完全的に無くなるというのは悲しいことなのかもしれないけれど、元の状態に戻るだけだ。

「そうか。なら、俺はもう何も言わない」

「わかった。それと……ありがと」
岬が小さな声でぼそっと言ったが、俺には何も聞こえなかった。

「あぁ、じゃあ文化祭は楽しいものにしようぜ」

俺がそう言うと、彼女は満面の笑顔で「もちろん」と答えた。

「じゃあ、俺は恵梨香がいるから」と岬に言うと悲しそうな顔をして「あぁ、うん……じゃあね」と言った。

こうして、俺と岬は別々の道を。自分の人生を。進むために、変える為に、前に前に、小さな一歩だが歩み始めたのであった。


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